大事なこと。
さて、自叙伝ではないのだから
そろそろこのシリーズは終わりにしたい。
いま売れに売れている俳優は、
その自分の在り方に疑問を持つ暇もないと思う。
それはそれでいいと思う。
突っ走るだけ突っ走ればいい。
その中に、少しだけ将来の事々を加味しておくと更にいいかもしれない。
いま自分を振り返ると、
電機の付属高校に入って、
大学で演劇を専攻し劇団に進むという、
ごく平凡な進路を歩いてきたわけだから、
人生で大海原に乗り出したという感覚に乏しい。
何となく来てしまったな・・・これが実感である。
ただ、ここにきて、
折角学んだ俳優業を何らかの方法で、
演劇の道に足を踏み出そうとする人たちと、
演劇の魅力(あるいは魔力かもしれない)をともに考えたいと願っている。
俳優の仕事は、
「演じる人物の人生に責任をもつ」という責務がある。
テレビでも、ちらりと後ろを通り過ぎる役だとしても、
その人の数十年という人生の数秒を生きているのである。
「ちょい役だから・・・」
と思うのはとんでもない話である。
主役として人生の数時間を表現する以上に、
裏に隠れている人生の多い存在であることを考えれば、
「ちょい役」などというものはない。
その存在は重要であり、その数秒なりの生き方を託されるのだ。
そのような俳優を仕出しなどという呼び方がある。
制作スタッフに、そのような考えを持っているものがいるとしたらとんでもない話だ。
「仕出しさん、スタジオに入ってください」
などと言うスタッフがいたら怒鳴りつけても余りある。
続く。


