俳優として必要なものって何だろう。
うちの劇団で、
演劇のエの字も知らない新人を何人か育成した。
準主役を当てられるまでに成長したが、
何処へ行ってもつとまる俳優かと問われれば
「まだだね」と答えるほかはない。
劇団にいれば、
その役者向けに役を作りかえらることもできるし、
役者に合う役づくりも可能になる。
また、その役者に合うであろう作品をもってくることもできる。
役者からすると贅沢な話だが、
それだけ面白さもある。
S君を当てるつもりで三浦綾子さんの「壁の声」を脚色して主役にし、成功を収めた。
またこの8月にはE君のために、同じ三浦さんの「貝殻」を脚色して上演した。
「役にぴったりでしたね」という評を頂いたが、彼の地だったという面白さがあった。
「えっ、地なんですか?」
これも、劇団内であればこそ可能な創造の域である。
役者は自分でつくらなければならない部分と、
つくられる部分がある。