「モヒカンとは古めかしいな」
すると、悪魔は低く笑いながら、
「ジープのネーミングにチェロキーというのあるだろう?」
「あれと何の関係があるんですか?」
「ほう、ご存知で?」
「ネイティブアメリカン」
「で?」
「アメリカ大陸にヨーロッパから白人が入る前からいた先住民」
「ほう、詳しいじゃないか。
彼等を早くから白人と手を結ぶように仕向けたのが
誰か知っているかい?」
「へぇ、それ・・・悪魔の仕業?」
「そのおかげで、エルビス・プレスリーやバート・レイノルズ、
ジョニー・ディップなど、
チェロキーの血の入っている有名な連中が出てきたんだ」
関係のない話に聞こえたが、
悪魔にとってはそれなりの理由があるのだろう。
何だかんだ聞くのも芸がなさ過ぎる・・・なとと思った。
「そんなことは考える必要はない。
聞きたいことは何でも聞いていいんだよ」
ひゃあ、「こいつは心の中まで読んでいる」そう思った途端、
「それほど詳しくは読めないさ」・・・と来た。
「こいつの前では、もう考えるのはよそう」と思った途端、
「そりゃ無理だよ。君みたいなおしゃべりには」と来た。
ぼくは話を変えた・・・というより戻した。
「でもまさかハリウッドスターの彼等の、
死後の魂を手に入れちゃいないでしょう?」
「どう思うかね。・・・だが、これだけは答えられない」
「へえ・・・悪魔でも言えないことがあるんだ。言うとどうなるの?」
「これまで溜め込んできた人間の魂を
過剰債務と併せて返却しなければならない」
「サラ金みたいだな」
「それも私の仕業だよ」
「え、どうして?・・・悪魔って悪いことをするんだろう?
過剰債務に苦しむ人を作るのならわかるが・・・」
「単純だなァ。パチンコや花札、パチンコや競輪、競馬、
ピンサロで浪費した連中を救って、また遊ばせるためさ。
失敗を重ねるたびに根性が悪くなるし、耐える力が弱まるんだ。
わたしの求めに直ぐ乗っかる人間がどんどん増えている。
日本国内だけで1千万人の魂がわたしの手の内に落ちているんだよ。
・・・えっ、その魂を何処にしまってあるかって?
日中韓合わせて、日本銀行の大金庫に2千万、
一番溜め込んであるのは・・・」
「スイスの銀行でしょう!」
「安易だなァ。アジスアベバシェラトンホテルの金庫と
イギリスのロスチャイルドの金庫だ」
「へえ、妙なところへ・・・腹が減った。他で話しませんか?」
「いいねいいね、中華そば3百何十円とか書いてあった店に行きましょう、
ご馳走するよ」
「しけた所ですね。悪魔でしょう?
赤坂の料亭でもいいんでしょう?金に困るわけないでしょう?」
「わたしはいいが君のその格好じゃ、一緒に行くのは恥ずかしい」
「だったら悪魔の力を見せて、英国屋のスーツくらい着せて下さいよ」
「嬉しいね嬉しいね、君の魂をもらう一つの望みが英国屋のスーツか。
お安い御用だ・・・」
「とんでもない、まだ契約を結んでいないよ」
「は、は、は、、ははは・・・ただで一流のスーツを掠めようというわけか?
世の中そんなに甘いものじゃない。
悪魔は計算高い。これを忘れてもらっちゃ困るねェ」
六本木ヒルズを出て、中華料理(ラーメン屋)に入った。
「餃子に温タマ定食」
悪魔は言いなれていた。
しょっちゅう来ているようだ。
「ぼくも同じ。それで餃子はニンニク入り」
すると途端に、
「それは駄目だ。わたしはニンニクは嫌いだ。両方野菜餃子にしてくれ」
店員は「はいッ!」と片目をつむって返事をし、
テーブル上のニンニク辛子を持ち去った。
その手馴れた対応に、
「知り合い?」と聞くと、
「昨日契約が済んだお客様なんだよ。ほらあっちから手を振ったあの子もそうだ」
「へえ・・・?!」
「世界一の悪女の西太后とかエリザベス1世もいいが、
ラーメン屋の美女もその仲間入りさ。
彼女はわたしの弟子になりたいと言って来たんだ。たいした玉じゃないか」
感心したように目を細めた。
【続く】