悪魔との契約が成立する・・・
魂を抜き取るのに、悪魔はどのような手をつかうか聞いてみたい。
中華屋のアルバイトの女性もよくよく考えたに違いない。
悪魔の弟子になれば、少なくても悪魔にとっては身内になる。
あんな風に、にっこり笑顔を向けられれば、
如何な悪魔といえども嫌な気持ちはしないだろう。
だが、「いい玉だ」と言っていた。
・・・ということは、
弟子になるということが決していい策だとは言えないのかもしれない。
・・・しまった。こうして心に思うこと全ては悪魔にお見通しなんだろうか・・・?
「・・・だから、全てというわけには行きませんって、さっき言ったじゃありませんか」
「何だ・・・でも読んでいたんだ、ぼくの考えを」
「ふふふ・・・と言っても、どんな優れた悪魔にも全部は読みきれないんですよ。
あなたはゲーテの『ファースト』を読みましたね。
あれに出てくるメフィストフェレスはわたしだと言ったが、
ゲーテはわたしから聞けるだけの話を聞いて、
我輩の魂は我輩と読者のものだから、悪魔に渡す魂はないってね・・・」
そっけなく断わられてしまったというのだ。
悪魔は苦々しそうに唇を歪めた。
「ゲーテの奴は、我輩を出し抜きやがった。
聞けるだけの話を聞いて、本にして儲けるなんてたいした玉だった」
この話には感動した。
さすがゲーテだと思えたのである。
だが、ここでもまた玉が出てきた・・・
「で、そうして断わった人は他にもいますか?」
「恐ろしくなって断わってきた連中は五万といるさ」
「ゲーテのような断わり方をした人って?」
「アイデンティティーなかァ、その人の」
「アイデンティティー?!」
「いや、テクニックかなァ」
「はァ・・・?!」
悪魔はたくみに話をすり返えた。(・・・ように感じた)
「テクニックといえば、今度の自民党の総裁選挙にも策士がいる」
「えッ?」
「麻生に決まっているのに、小池や伸ちゃん、石ちゃん、ヨサコイまで顔を出している」
「伸ちゃん?」
「慎ちゃんの息子さ」
「石ちゃんは石破で、ヨサコイじゃないでしょう、与謝野でしょう」
「あっちの世界では、そう言われている」
「で、策士というのは・・・?」
「言わずともがな、森と青木さ」
「はァ・・・?」
「君は政治に関心がなさそうだな」
「いや、ありますよ。・・・・でも我々国民は無力に過ぎる」
「ほう!・・・だったら悪魔のパワーを使って、君が総理大臣になったらどうだね」
「へえ、そんなことも・・・」
「出来るさ、魂と引き換えだったら、なんでも実現させるさ」
「じゃ、いままで・・・」
「安倍や福田も総理になったじゃないか」
「えッ、あれも悪魔の仕業ですか。途中で放り出したのも・・・」
「ははは、それは想像に任せるがね。今度の選挙も悪魔がらみか・・と思うだろう?」
「・・・やはりそうですか」
「ははは・・・想像にまかるって言ったでしょう」
「じゃ、彼等とも契約を結んでいるんですか?」
「ははは・・・どう思うかね?」
こんな話を聞きながら、悪魔の裏をかくことの難しさを噛み締め始めていた。
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【続く】