■「梁塵秘抄」の現存する今様の中では仏を詠んだものが最も多く、有名なものが

 

 

仏は常にいませども 現ならぬぞあはれなる 人の音せぬ暁に ほのかに夢に見えたまふ

 

(仏はいつもおいでになるが、はっきりとお姿が見えないことこそ、しみじみ尊く思われることよ。人の物音のしない暁にほんのり夢に現れなさる)(著者訳)

 

 

 

この歌は、静けさに包まれた暁、夢に出現するがはっきりとは見えない仏の姿、幽遠さを讃えた今様として、後世の文人たちにも好まれ著書のなかにも引用されている。

 

 

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川端康成も、小説「反橋」や舞踊劇「船遊女」にこの今様を引用している。

「反橋」は母を探し求める息子、「船遊女」は父を探し求める娘の物語であり、今様の「仏」は、川端作品の中で父母の面影と重ねられ、親子のめぐり会いの難しさが、哀愁漂う今様の歌詞と巧みに響き合っている。(著書より抜粋)

 

 

 

 

著書:「今様」

著者:植木朝子

発行:笠間書院 2011年初版