秋深き隣は何をする人ぞ --- 芭蕉

 

日本の学校に通うにしろ、インターナショナル・スクールや外国の学校に通うにしろ秋は出願の季節です。最終的な進路が決まるまで子供の進学予定をべらべら話す親はいませんので、今の季節はまさに「隣は何をする人ぞ」です。春になって「え~、そういう進路もあったのか?」と驚かされることも多々。どこでどんな勉強をしているかは現役受験生ママからは企業秘密で教えてもらえませんが、先輩ママは膨大な時間をかけてリサーチしたものが数年で陳腐化してしまうし、日々記憶から薄らいで行くので聞かれたら惜しげなく教えてくれる人が多いのではないかと思います。

私も忘れてしまう前に、米国の高校進学の話をまとめておきます。去年はさすがに生々しくてリアルタイムでは書けませんでした。ホームス・クーリングをしていたので学校の進学カウンセラーもおらず、民間のスクール・カウンセラーや留学エージェントも使わず全て自前でケチケチで挑んだので、自力で米国の高校進学を目指そうと考えている方には参考になるかもしれません。親切な金額つき!

我が家は、"高校生になったら絶対米国留学!"と決めて着々と準備をしてきたわけではありません。漠然とは考えていましたが、"そもそも学校って必要?"なんて考え始めてしまったものだから手ぶらで8年生になってしまいました。8年生になって慌てての出願は、よゐこは決して真似をしないでください。「そうだ京都、行こう。」なノリで"今から準備をしても間に合うかなぁ?"という方の参考にはなると思います。

 

It's never too late.  今からでも間に合うアメリカ留学

ちょうど1年前、我が家では張り切ってホームスクールを始めたばかりでした。米国の中学の8年生は日本の中学3年生のように高校受験に相当する学年です。自由で無限の可能性を秘めたホームスクールにワクワクする半面、翌年もホームスクールを続けるのか、高校へ進学するのかは可及的速やかに決断すべき問題でした。米国の多くの高校の願書受付締切は1月初旬なので、ホームスクールの成果が出る6月になってから高校へ行くかどうか決めるのでは遅すぎます。 そこで、まずは出願に必要な書類を揃えていつでも出願できるようにはしておこうということになりました。ほとんどの学校で出願に必要なのはSSATかISEEのスコア、学校の成績表、課題エッセイです。まずはSSATを受験することにしました。

ACTION 1: SSAT 
SSATの受験申込をして、問題集を購入しました。SSATは東京のASIJと名古屋インターナショナルスクールで5月を除く10月~6月まで毎月受験可能です。成績表がないモンテッソーリ・スクールへ通っていたので、相対的な娘の学力レベルが全く分からず、どのレベルの学校に行けるのかまるで見当がつかなかったので娘の学力レベルを早く知りたく10月の試験に申込みました。12月の試験であれば1月の願書提出に間に合いますので、準備をしっかりして挑みたい場合は12月が良いです。付け焼刃の勉強で結果が大きく変わるテストではないので1回受ければ十分だと思います。我が家では初めての試験に緊張する娘をリラックスさせるために試験直前に家人が「今日は練習で、ダメだったら12月にまた受ければいいよ」と言ってしまったので10月と12月受ける羽目になってしまいましたが得点はほぼ同じでしたので2回目は余計でした。12月の試験は受験者数が多く、ホリデーシーズンの忙しさもあってか、なかなか結果が来ません。いきなりぶっつけ本番はお薦めしませんが、過去問をやってすぐに受けたらよいと思います。

試験をほとんど受けた経験がなかったので、出題形式に慣れさせたり、時間配分を実感できるよう練習問題をやらせました。娘の受験勉強は9月にSSATの問題集をやっただけで終わってしまいました。事前に問題集をやっておくと凡そSSATの難易度がわかるので、本番で分からない問題があっても「難しい! 出来ない!」と焦らずにすみます。問題を説かせるより、問題集の本に試験の受け方とか、迷ったときの回答のコツが書いてあり、それらをしっかり読むほうが直前のテスト対策としては効果があります。それを読まないで問題だけ解くのは勿体ないです。

SSAT 受験料 $265(10月) + $265(12月)
SSAT Official Guide と Online Practice セット $99.95+日本までの送料
SSAT & ISEE 問題集              \2,765円 

ACTION 2: 学校選び・留学フェア・スクールツアー
娘がSSATの勉強をしている間、私は9月から12月末まで毎日毎晩目を皿のようにしていろいろな学校の評判を調べ、一気に視力が落ちました。沢山ある学校の中から、興味がある学校を20校程度まで絞り込んで、さらにその中から娘が行きたいという難関校、合格圏、滑り止め各2校ずつ6校まで絞り込みました。米国の高校は"入試日"がないので何校でも出願できます。最終的には5校に出願しました。

10月から12月には、多くの学校が受験生のためのオープンキャンパスを実施しています。現地に足を運び、学校を直接自分の目で見学して、その場で面接をしてもらうのが一番ですが、我が家は結局ずっと日本にいました。アメリカは広いのでアメリカ全土から志望校を選んで見学に行くとなると移動時間もお金もかかります。そのあげく落ちたら堪りません。米国のボーディング・スクールの学費は600万円はします。志望校をギリギリまで絞り込めなかったという事情もあり、我が家は結局どこのスクール・ツアーにも行かず、入学前に広い米国を家族で1週間もあちこち旅行することは断念しました。そして各校のホームページや、ランキングサイトを参考に志望校を決めました。学校訪問が出来なくても、admissionが来日して日本で説明会をやる学校もあります。志望校の説明会がある場合は、事前に予定を調整し面接をお願いするとよいです。英語を読むのが苦手で学校選びが捗らない場合は、進学コンサルタントに依頼するとコンサルティング・フィーは50万円ぐらいからです。受験した5校のうち1校だけ落ちた学校は、合格率11%という狭き門。しきりと学校見学を薦められましたが合格率11%の学校を見学行く気にはなれませんでした。見学に行けば心象もよく結果も違ったのかなぁと思いますが、ご縁がなかったとは当にこういうことだと思います。合格した他の4校は1校は来日フェアのブースで知り出願した。1校はネットでみつけて出願後担当者が来日したときに会った。残り2校はネットでみつけて、出願、面接、全てオンラインです。うち一校は面接なしで書類審査のみでした。

 

学校選び(ウェブサーチ):0円

学校見学:                   0円

※ タダほど高い物はないともいいます。インターネットの情報は信用ならないという人は留学代理店などからアドバイスをもらったり、直接学校見学へ行ったほうが良いと思います。人から聞いたことも必ずインターネットで調べて裏を取るという人にはウェブで学校選びをしてもいいと思います。

 

下記に主な学校ランキング/レビューサイトを載せました。ランキングには出てこない小さなprogressive schoolも沢山あるので「こんな学校あったらいいなぁ」と想像力を働かせていろいろ検索してみてください。ある程度学校を絞り込んだら、良いうわさだけではなく、悪い噂についても調べます。人種差別、レイプ、殺人、虐めなども出て来ます。理念は高いけれど、残念ながら現実はあまりうまく行っていない学校もあります。生徒や保護者のブログやYou Tubeも探すと結構出て来ます。

秋から冬にかけてTABSの留学フェアで来日したり、都内で個別に学校説明会を開く学校もあります。今年のはTABSの留学フェアは2018年10月29日(月)に恵比寿のウェスティン・ホテルで開催だそうです。フェアは無料ですが、事前申込が必要です。志望校が来日している場合は、この機会に面接を申し込んでおくとよいです。志望校によっては海外で学校説明会を開いている学校もあります。HPで説明会の予定を確認します。Japan passingが著しい今日この頃ですが中国で説明会を開く学校なら、前後に東京に立ち寄らないか聞いてみると良いです。HPには載っていなくてもadmissionのスタッフが日本に立ち寄る際に日本人OB/OGを通じて非公式の説明会を開催する学校もあります。日頃から留学に興味があると言っておくとご縁があるかもしれません。
  • TestInnovators 志望校に合格するにはSSATのスコアがどれぐらいあれば良いのか目安がわかるサイトです。米国の出願は成績に関すること: SSAT/学校の成績/内申と、本人の人となりに関すること: 本人と親が回答する調書/面接/エッセイの二本立てです。​​​​​​どんなにSSATのスコアや学校の成績がよくてもそれは半分にしかなりません。共通テストの試験結果では差別化にはならないので、残り半分の「勉強以外は何やってるの?」が勝負のしどころだということを忘れてはいけません。

ACTION 3: TOEFL

うちの子インターナショナルスクールだし、帰国子女だし、母語が英語だし...と英語に不自由していないお子さんは沢山いるとは思いますが、日本のインターから米国の名門Boarding Schoolに進学した子供たちがみな口を揃えて「とりあえずTOEFLは受けておいたほうがいい」と言います。曰く、「SSATのスコアや学校の成績を提出するにしろ、外国人の生徒がどれぐらい英語が出来るのかは願書からは解りづらい。沢山の願書を前にAdmissionの人たちは忙しいのでTOEFLの点数があれば"あ、この子は英語できるのね"と分かってもらえて、admissionの人を煩わせずにすむから心象が良くなる(ハズ)」という割と日本風な理由でした。外国人には必須という学校もあるそうだし、みんな受けているようなので、とりあえず受験。 
 
TOEFLは都内であればほぼ毎週どこかで受けられます。SSATもTOEFLもなんども受験できるとは言え受験料が高いので、ぶっつけ本番ではなく、過去問を一通りやってから受けたほうがよいです。スピーキングはかなりクセものです。TOEFLのスピーキング・テストの環境がいかに悪いかウェブで調べて周囲の騒音を気にせず話せるよう練習しておくと絶対に良いです。我が家は知ってはいたのだけれど、そこまで酷いとは知らず油断していたらスピーキングがスコアの足を引っ張る残念な結果になってしまいました。無念。

TOEFL iBT 受験料                $235
TOEFL practice Online              $ 45.95
 
 
ACTION 4: 現在の在籍校に成績書類の発行や推薦状を依頼する。
SSATとTOEFLのスコアが出ていて、志望校が決まればあとは出願するだけです。出願書類には、現在通っている学校に作成してもらわねばならない書類があります。書類の作成には2-3週間を要する学校もありますので出願プロセスを開始する前に学校や推薦者に一声かけて予定を確認しましょう。成績表の他、スクール・カウンセラー、数学教師、英語教師へ文書での回答を要する質問がある場合がほとんどです。1月15日前後が米国の高校の出願期限のピークです。1師走と言われるほど期末試験・成績表・受験指導・冬休み...と先生方は大忙しなのでいつまでに依頼すればよいか早めに相談をしておくとよいです。 お稽古の先生に推薦状を依頼する場合も早めに相談します。私もときどき頼まれて推薦状を書きます。私の推薦状のせいで落ちてしまったら大変なのでたった2-300語でもその子がやってきたことを調べたり、どう伝えたらより印象的かなどを考えて文を構成するで、完成までに何日もかかります。
 
推薦状の依頼: priceless
いざというときに、子供のことをよく知り労を惜しまずに心から応援して推薦状を書いてくださる先生がいることは本当に大切です。強力な推薦状は足りない成績を補って余りあるほどです。立派な文章でなくても、熱い想いで書いてくださった文章は伝わります。子供の良さを知ってくだっている方ならただのご近所さんでもよいぐらいです。学校指定の推薦状で、子供を何歳のときから知っているか、どういう関係かなど細かな質問項目がいくつもある学校もあるので、子供のことをよく知らない方ではあたり障りなく推しが弱い推薦状となってしまいます。忙しい子供たちのために短期のワークショップばかりが盛況です。推薦状を依頼できる方が咄嗟にどなたも思い浮かばなかったら、子供と周囲の大人の関係も断片的なものであったと考えたほうがよいです。まだお子さんが小さな方は、そういうこともどこか念頭に置かれて育てられるとよいです。
 
ACTION 5: いよいよ出願
ACTION 1~4が揃えばあとは年末年始に自分たちで願書や親のエッセイ、子のエッセイ、奨学金の申請書類等を書けば間に合います。なんてギリギリなんでしょう ! 前出のボーディング・スクール生たちは、自分でエッセイを書いたと言っていたのでそれを真に受けてエッセイ指導は受けませんでした。SSATのエッセイのレベルとあまりに違うと怪しいし、自分の言葉で書いたほうが面接のときも乖離がない、エッセイはその人を知るためで作文のテストではない...というのが理由だそうです。名門ボーディング・スクールの生徒は、そもそもエッセイ指導なんて必要ないのかもしれませんが....。娘が何を書くか困っているときは、"こんなことを書いたら?"というアドバイスをしましたが親子で険悪な雰囲気になり、最終的には娘が自分で書く...ということが多かったです。娘は何事も突き詰めて考えるタイプなので、本人に書かせても大丈夫でしたが、ささっと当たり障りのないことを書いて"出来た!"というタイプだとエッセイ指導を受けたほうがいいのかもしれません。
 
ほとんどの学校はGatewayまたはSSATのSAO (Standard Application Onlin)の出願サイトからオンラインで受験料を支払って出願できます。独自のサイトを持っている学校もあります。学校によって異なりますが留学生の出願料は$150/1校ぐらいです。出願サイトを使うと、進捗状況を管理し、各校で共通の項目を何度も入力し直さなくて済むので楽です。全てが英文のオンラインでのやりとりになるので日本人の方に推薦状をお願いする場合は、翻訳や入力などをお手伝いして差し上げる必要があるかもしれません。
 
願書やエッセイの添削(利用せず)          0円 
Grammarly (英文校正アプリ)                   0円 
Grammarlyはmust haveです。綴りのみならず、文法の間違いも指摘してくれます。
 
SSATとTOEFLの過去問を自分で解くだけで留学専門の塾に通わず、志望校は自分で探して留学代理店も通さず、学校見学もせず、願書やエッセイの添削もせず、全て自分でやったので短時間で準備出来、受験勉強用の教材を含めても10万円前後で収まりました。本当に留学させられる資金力があるのかは合格してから悩めばよいことです。まずはお疲れさまでした。

塾も留学代理店も最初の打合せを数回するだけで何週間も経ってしまいますから直前だと時間的に厳しいと思います。お金持ちは時間を買うという利用の仕方もできますが、高額なのでじっくりカウンセリングしてサポートしてもらってナンボ...と考える我が家はケチ臭く行きました。読み返してみると行き当たりばったりで全然ちゃんと準備してこなくて恥ずかしい。(この記事を読んで)アメリカの高校に行こうと急に思い立った人向けです。口笛 人気がある学校は願書締切がありますが、空きがあれば通年で募集している学校(rolling admission)も沢山ありますので締切に間に合わなくても問い合わせてみると良いです。奨学金は先着順なので締切後の出願だと残っていない可能性もあります。健闘を祈ります。