弁護士は真実を尊重する義務を負っている存在 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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きれいごとではなく、弁護士職務基本規程5条で義務化されてます。
 出会い系サクラ詐欺サイトの被害者がサクラだったというスッキリしない弁護士主導の事件も起きました。
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130719-OYT1T00568.htm
 
 ばれないと思って真実を糊塗し、賠償金騙取に加担(自ら工作?)した弁護士の行動がばれて、弁護士を当事者とする判決に接したので、他山の石として紹介します。東京地裁2012/7/9判タ1389号235頁です。
 この弁護士Y、業務停止6か月の懲戒処分を受けました。懲戒請求したのはZ医大の医師です。

 2004/1/5 被害者に生死にかかわる交通事故発生
 2004/1/7 Z医大で医療ミスがあり被害者死亡
         (交通事故と医療ミスの競合)
 2004/12/10 ☆【弁護士Yが被害者の遺族から依頼を受け、
        Z医大との間で6600万円の医療ミスによる解決金を
        支払う和解を締結】
 2006/12/4 弁護士Yは交通事故の加害者に損害賠償請求。
         ただし☆【】の事実は秘していた
 2007/12/25 弁護士Yと加害者付保との間で交通事故の解決金と
         して9000万円を支払う和解を締結。加害者付保の
         損保X社がこれを支払った。
         その際も☆【】の事実を秘したままだった

 のちに損保X社に☆【】の事実が露見し、損保X社は弁護士Yに対して、☆【】の事実を知っていたならば支払わなかったであろう、いわば余分に支払った分として6600万円及びその1割の弁護士費用の支払を求め提訴したというのが、この事件です。『』が裁判所の判断です。

 『弁護士Yは、加害者と交通事故の訴訟上の和解を締結するに際し、信義則上、医療ミスによるZ医大による連帯債務の弁済の事実を知らない加害者側及び交通事故の訴訟を扱っている裁判所に対し、Z医大からの解決金支払の情報を提供する義務を負う
 この説明義務を怠って、事実を秘したまま訴訟上の和解を成立させた、事実が無いことを前提とする賠償金を受け取ったときは、弁護士Yの行為は不法行為としての違法性を有する。』
 
 ところで、弁護士Yは、加害者側はZ医大に自ら解決金の支払の有無を直接照会すれば容易に事実が露見したのだから、それを怠った損保X社には過失相殺がなされるべきとも主張していました。
 これに対しては、社会的には稀な医療ミスと交通事故の競合のケースで加害者側が積極的にZ医大に金銭支払の有無を照会することを期待すべきではないとして、幾ら加害者側に交通事故に詳しい顧問弁護士がついていたとしても、過失相殺すべきではないと判断しました。

 ビックリたまげたのは、これ訴訟詐欺と非難されてもしかるべきケースだと思うんですが、こういう形で真実を隠す弁護士が現にいること。
 弁護士YとZ医大との間で解決金の支払に関する守秘条項を設けていた可能性はあるにせよ、さすがにそれは開示に正当な理由のない場合に利害関係を有しない第三者への開示を制限するにとどまると思うんですよね。
 
 そうそう、契約の一方当事者は、契約締結に先立ち、信義則上の説明義務を課されており、その義務に違反して、契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を契約の相手方に提供しなかった場合には、その情報を知らずに相手方が契約を締結したことにより被った損害を不法行為として賠償する責務を課されます(最高裁2004/11/18 判タ1348号87頁)。

 だから、情報提供義務に違反して契約を締結し、それが後で露見して契約締結した相手に損害を被らせたときは、その損害回収に相手方がかける弁護士費用(約1割)を加えて賠償しなければならないので、ばれてしまえばかえって損することになります。
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