福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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日弁連委員会ニュース2025/12/1号に掲載されていた南太平洋のフィジー共和国への国際交流委員会訪問団記録。
どこにもウェブサイト掲載されていないのですが、貴重な論稿と思い、その内容を要約掲載することにしました。このブログ記事の表現はわたくしなりに表現を変更したり加筆もありますが、基本は訪問団記録に依拠しています。ただし青地は私見です

 フィジー共和国は四国くらいの大きさで人口93万人の多民族国家。海洋上の位置はニュージーランドの上になります。国のおもな産業はビーチリゾートの観光業で、成田空港からもいまは週2便の直行便が運航しています。もともとはイギリスの植民地で1970年に独立しました。
 フィジーの弁護士制度はイギリス植民地時代の1890年代にさかのぼり、1956年にフィジー法曹協会FLSが強制加入団体として設立されました。ところが2006年に軍司令官によるクーデターが発生し憲法停止されました。
 FLSは法の支配への影響を懸念しクーデターに強く反対する声明を出すなどしましたが、FLSの活動を危惧した軍政府は2009年5月に法改正してFLSを強制加入団体から任意加入団体に変更したのです。FLSは任意加入団体となったことで会員数は激減の一途をたどり必然的に財政面も大打撃をこうむりました。さらに、FLSは任意加入団体となったことで弁護士登録に関する資格認定権ふかして懲戒権も取り上げられました。

 現在、弁護士に対する懲戒権は2009年に設立された独立司法サービス委員会ILSCに権限があります。苦情申立を受理するのは弁護士の登録管理をおこなう高等裁判所のchief registrarで、その監督下のlegal practitioners unitが調査をするという流れで、FLSには一切の権限がありません。高等裁判所の裁判官と兼務となるILSC委員長は大統領によって任命され、建前は政府とは独立した組織で弁護士会内での懲戒組織に比べて透明で公平だから信頼できるはずという説明がなされています。
 しかし現実には、懲戒権はとくに2006年から10年ほどは政府に抵抗する弁護士への妨害手段として相当数利用されたそうです。弁護士は家から連れ去られ山に置き去りにされたり直接の暴力を受けたりもしたそうです。かたや任意加入団体となったFLSは財政も組織数も弱体化し迫害された個々の弁護士を守る力がなくなりました。そうなると、当然のように個々の弁護士への萎縮効果もおきるし、弁護士の社会的地位もまた急激に低下することになりました(ただし、記事には社会的地位がFLSの任意団体化によりどういうプロセスで低下したかには言及されていない。政府にまるでたてつけない、御用法律家は悪しき隣人でしかないという意味を指すのかは記事からは不明である)


 そんなFLSの建物は平屋の小屋でエアコンも旧式だったのですが、他方、FLSのあとに訪問したLAC法律扶助委員会の建物は3階建で中のしつらえも高級感があり雲泥の差を感じたそうです。LACは1996年に設立された独立機関で、経済的な困難を支える市民にリーガルサービスを提供するために設置されました。LACも当初は、クライアントから受け取る金銭を預金するために全弁護士が開設を義務付けられた預かり口座の利息が活動資金となっていたのですが、2013年憲法でLACが政府からの独立を保証されつつも国費運営となったために大幅に予算が増え、当初はLACは3事務所だったのに26事務所に展開するほどの発展。スタッフ弁護士の給料は国から支払われる。
 小島で構成されるフィジーにとってLACの充実は人権救済を絵に描いた餅にしないために非常に重要である(ただしこの記事には標準的な弁護士料金体系とLAC料金体系との異同には触れられてなかったので、LACを支える弁護士の自己犠牲による拡充なのかは不明のままである)。なおフィジー共和国における貧困率つまり貧困ラインを下回る生活をしている国民の割合は約3割である。

結語:フィジー共和国のFLSは資格審査や懲戒権などの弁護士自治に不可欠な権能を奪われ弱体化した。もちろんフィジー共和国の弁護士たちが法の支配実現のために日々努力していることはわかる。しかし、弁護士の発言力に危機感をいだいた政府によって弁護士自治をはく奪されたという過去の経緯からは、いったん失った弁護士自治を取り戻すのは相当に困難な道であろうと思わざるを得ない。いま日本の弁護士たちが所与のものとして享受している社会的評価や萎縮しないで過ごせる権利は、弁護士自治があるからこそ享受できる特権であることを、日本にいる我々も改めて認識する必要があるのではないか。現にフィジー共和国では、弁護士自治を失ったのちに個々の弁護士の社会的地位が急落する現実を目の当たりにしたのだから。
(この点については、強制加入を任意加入に変えることで組織の財政も規模も弱体化する、それはわかる。ただ組織が弱体化すると、必然的に個々の弁護士も萎縮することにつながるのかは、日本とフィジー共和国を同一にみるには間に1つの要素を置く必要があると思う。その要素は国が組織が弱体化したときに国にさからう弁護士を狙い撃ちする攻撃を繰り返すことである。弱体化した組織では個々の弁護士を護れないので個々の弁護士が萎縮してしまい、社会的地位もまた急落する、こういうプロセスを必要とするのではないか)
(ちなみに、フィジー共和国と異なり、日本では司法改革での弁護士急増により食えない弁護士の金銭不祥事が続出することで強制加入制度があろうと、とうに弁護士とくに街弁の社会的地位は低下の一途をたどっている。経済的困窮に入っている者にとって高額な会費を毎月徴収し意に反する死刑廃止運動を大枚はたいて持続される団体への強制加入など迷惑千万と思う者もかなりいるのがいまの日本の弁護士たちのもう一面でもある)

 
 

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