本紹介《日本を滅ぼす消費税増税》 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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明日2013/7/21は第23回参議院議員選挙です。
 争点は、アベノミクス(経済成長戦略)・憲法改正(9条と96条)・金融政策・財政政策(公共投資)・原発・消費税増税・雇用の流動化(規制緩和)・セーフティネット(貧困対策)・TPPと、多様は多様なんです。

 ですが、政党の有り様が《自民党と7人のこびと》みたく自民党のスタンスばかりとりあげられてしまい、自民党以外を選択したらどうなるのか??国民に一見して分かりにくかったり分かりやすい政策はかつての民主党みたく長期化が困難だったりするので、自民党シンパではない無党派層はホント過去数年の選挙に比べ、はるかに関心が湧きにくい。

 そうはいっても、参議院選挙の結果、衆参両院とも与党が3分の2を超過する勢力(=改憲決議が可能な勢力)を保持する可能性があるわけで、この観点での切り口も可能なんですけれども。。。

 でも今回はあと2年強で2回もUPされるだろう消費税率に絞り、【仮に消費税率があがると、今の日本経済はどうなるのか】というテーマについて、元銀行員・大蔵省出向経験者の菊池英博エコノミストが記した本を紹介します(2012年12月発刊)。長文ですが、自分の読書録として残しておきます。

一番よくまとまっているウェブサイトも紹介しておきます↓
http://kitaalps-turedurekeizai.blogspot.jp/2013/04/blog-post.html

 なお終章で打開策が披露されているのですが、著者は政治家ではなく実現可能性をどこまで煮詰めたか不明なので、それには触れないでおきます。
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第1章~均衡財政目標で日本経済は恐慌型デフレに陥っている

 ・日本は財政危機ではなく政策危機である。
  財務省もメディアも、日本の粗債務(借入総額)ばかりを公表するが、着目しなければならないのは純債務の方である。
  2010年12月時点で、粗債務の合計は919兆円だが、金融資産が500兆円あるので、純債務は527兆円である。しかも粗債務のうち特別会計291兆円は国民の負担する債務ではないのに、そのことは明記されていない。そのほか、金融資産以外の物的資産が500兆円ほどあることが全く触れられていない。数字のまやかしも甚だしい。
 
  日本には対外純債権が250兆円もある世界一の債権国なのに、自国のために資金を回さずにデフレ政策をとっている、愚かである。
 海外から見れば、自国内にしか借金が無く、他国には250兆円の貸金債権を抱えている、少なくとも今のところは世界一の金融資産保有国家である。
  ちなみに、2011年9月時点で、アメリカの債務は17兆4927億ドルであるのに対し、資産は2兆7073億ドルであり、むしろアメリカ政府の方が大赤字である。

 ・デフレ経済下で消費税を増税するとデフレを促進し、所得税や法人税の税収は全般的に減少し、消費税増税分が減殺されてしまう。そうなると、さらなる消費税の増税によってカバーするという悪循環に陥る。

 ・まして均衡財政目標を設定し、それを実現するために消費税増税と緊縮引き締め(公共投資削減)をとったために、経済成長がとん挫したことは、橋本龍太郎・小泉純一郎・野田佳彦が実証している。
 プライマリーバランスポリシーは、内需中心の企業の内部留保や国民の可処分所得にダメージを与えるので、国内経済を疲弊させてしまう。

 ・消費税増税では財政再建は不可能であり、財政再建には政府主導のデフレ解消のための財政発動しかない。日本が政府投資が民間投資を補完する経済体質であることが過去の統計から実証できる。

 ・消費税増税は所得税や法人税の減収を補填する格好になり、要するに、庶民はもっぱら増税を実感するが、法人や高額納税者の税負担だけが軽くなるという逆進性をはらむ。
  また、輸出企業にとっては消費税還付金が増額することになる。ますます企業間格差や国民の所得格差が広がる。

 ・他方、デフレになると民間投資は増資意欲より回収超過になってしまう。そのため、経済成長もマイナスになっていまう。ちなみに日本は1998年から15年間デフレが継続している(≒GDPデフレーター が一貫して前年比マイナスを示している)。

第2章~デフレ発生から15年、日本の政治家と財務省の失策を検証

 ・デフレの原点は、公共工事削減と消費税を3%→5%に引き上げ所得税特別減税を廃止した橋本龍太郎の閣議決定に始まる。

 ・株価下落により銀行が貸しはがしを一斉にはじめた為、クレジットクランチが引き起こされた(例えば、1999年には日本の名目GDP の10%にあたる50兆円の回収が実行された)。

 ・ちなみに、財務省は、ちゃっかり純債務と粗債務の違いを意識しており、海外向けには「日本は多額の対外債権を含めた資産を持っており、国債の95%は日本国民が保有しているから、財政危機ではない」と二枚舌で宣伝し、もっぱら日本内でのみ財政危機を煽っている。マスメディアも意識して粗債務のことしから公表しない。

 ・【デフレのときは、緊縮財政と増税はしてはならない】のが歴史的教訓である(昭和恐慌に陥ったときとその脱出方法、アメリカ大恐慌に陥ったときとその脱出方法で歴史的に実証済み)。が、橋本龍太郎は緊縮財政と増税をしてしまい、恐慌型不況を招き入れた。

 ・小渕恵三が金融機関に公的資金を投入し、大型補正予算を組んだことで、かろうじて税収が回復しデフレ解消の目が現れてきた。
 ・しかしまもなく小泉純一郎が規制緩和(構造改革)の中で、公共投資は経済成長に寄与しないから削減し、また、基礎的財政収支均衡策を採用したので、再びデフレが続くことになった。

 ・基礎的財政収支とは国債の発行額を除いた税収・税外収入と、公債償還費を除いた財政支出との差額を意味するが、プライバリーバランスを均衡させるとは簡単に言えば、税収・税外収入の範囲でしか支出しないという考えである。

 ・しかし基礎的財政収支を均衡させる政策(特に数値や期限のついた目標設定)は、アメリカで2度、アルゼンチンでも歴史的に失敗している。
 にもかかわらず、この政策は財務省の宿願であり、たびたびゾンビのように現れてくる。ちなみに、昭和恐慌もアメリカ大恐慌も均衡財政至上主義を採用していた時期と発生が重なっている

 ・ちなみに、新自由主義では庶民に向けてツィンクルダウンセオリー(富裕層にお金が回れば、金持ちはお金を使うから新たな投資をするから、結果として庶民が雇用されたり仕事が生まれて全員の所得が増える)という詭弁を弄するが、まったく実証されていず、政治的スローガンに過ぎないと批判されている。

 統計的にも大企業と富裕層に富が集中してはいるけれども、その富は保留され、新たな投資や雇用を期待されるほど生んでいない。

 そのほか、新自由主義を推し進めたイギリスサッチャーの政策もアメリカレーガンの政策も、本来は政府に入るべき富が富裕層にのみ留保されたため、国力が甚だしく減少してしまった。
 いま、アメリカがデフレに陥らないのは、軍事という公共投資を削減しないこと、そして、金融緩和によりインフレを引き起こしているからである。しかし、庶民の生活は厳しいままである。

 ・小泉ミニバブルの頃に増えていたのは実質GDPであって、名目GDPの増加を超えるGDPデフレーターのマイナスによりもたらされたものであるから、いわば数字の操作によりもたらされた実感のない経済成長(≒デフレにより同じものが以前より割安で買えるようになっただけ。税収などは全く増えていない)だったことが統計でも裏づけられている。

 本当のいざなぎ景気のときは、名目GDP・GDPデフレーター・実質GDPの全てがプラスだったのであり、これこそ税収も増える本物の経済成長である。

第3章~昭和恐慌とアメリカ大恐慌の歴史に学ぶ

 ・昭和大恐慌の嚆矢は第1次世界大戦後のバブル処理と関東大震災による不良債権の増加・デフレの進行、その結果の預金取り付け騒ぎによる金融恐慌にある。
 
 ・浜口雄幸と井上準之助は、緊縮財政(財政支出カット)と金解禁による金融引き締めを開始した。金本位制へ復活すれば金融節度が保てると考えたのである。
 
 ・金本位制への復活は為替相場の切り上げにつながり(例:今でいえば1ドル100円だった時に一気に1ドル77円に切り上げ固定した)、名目GDPは2年連続で前年比10%近くも下落した。輸出は減るは、国内産業は細るはで、税収も減る一方だった。

 ・あげくに浜口雄幸も井上準之助も立て続けに暗殺された(別に経済政策の失策のみによるものではないが)、あとを引き受けた若槻礼次郎もデフレ政策を継続した。ところが、新聞は金解禁の目くらましに遭ったのか、デフレ政策を積極的に支援しつづけた。
 
 ・犬養毅と高橋是清がようやくデフレ政策を転換して、金本位制から管理通貨制度への移行、金融緩和政策、建設国債の発行による公共投資による有効需要の創出により、民間需要を引き寄せる政策をとったことで、ようやくGDPデフレーターがプラスになった。

 また、統計からも政府が緊縮財政をとればデフレが進み名目GDPが減少し政府債務が増えていたのに対し、政府が財政支出を増加させれば景気が振興され名目GDPが増えるので税収が増え結果的には政府債務の増加が鈍っていくことがわかる。
 なお、高橋是清が2・26事件で軍部の凶弾に倒れたのは、景気復興後に軍事費を含めた財政支出を抑え始めたことにあるのではないか。

 ・昭和恐慌と平成デフレには幾つもの共通点がある。
①財務省出身の政治家と官僚が意図的に財政デフレを主導してきた
②円の為替相場が切りあがった③グローバリズムを信奉している④実体経済は極度に疲労した⑤マスコミはこの方針を支持している。

 ・アメリカではフーバー大統領が均衡財政収支主義だったので、消費税を導入した挙句、自由主義で銀行がつぶれるのに任せたので大恐慌に発展した。
 ルーズベルト大統領は管理通貨制度に移行し金融を緩和し、銀行に公的資金を投入し「銀行はつぶれないから安心して
under the mattressのお金を銀行に預けてくれ」と金融システムを安定させ、さらに国債発行により公共投資を創りだし、民間需要を誘発する(ニューディール政策)ことで大恐慌を脱出させた。

 ・恐慌型デフレの解消に歴史的に成功した国の経済政策
①財政主導・金融フォローの政策をとり、政府が有効需要を創出するために国債を発行し、かつ、中央銀行が資金を供給した。
②5年以上、政府投資を継続実施して民間投資の誘発を支えた。
③財政再建の数値目標を設定しない。設定した国は全て失敗した。
④景気回復によって名目GDPを増加させる政策を優先し、政府債務を圧縮する政策は凍結させた

第4~世界一財源の豊富な日本が財政危機との宣伝は偽り

 ・国税収入に占める消費税の割合は、スウェーデン18・5%(消費税率25%)に対し日本24・4%(消費税率5%)である。仮に日本の消費税率を10%にあげると日本38・8%になる。

 つまり庶民生活により国税収入が支えられている度合は、すでに日本はスウェーデンを超えており、日本では法人税と所得税による直接税収入がいかに少ないかを表している。
 また、日本では軽減税率がほとんど適用されていないことも庶民に厳しい格好につながる(例:イギリスは消費税の最高税率20%だが、通勤交通費・食料品・新聞雑誌本・子供服・医薬品・映画・コンサートは非課税である)。
 
 ・財務省は「高齢化社会が進む中で社会保障費を捻出するには消費税を増税するしかない」と盛んに主張する。
 しかし、日本国債の格付けが下げられた時、「日本は世界最大の貯蓄超過国である。国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化できている。
 世界最大の経常収支黒字国である。外貨準備も世界最高水準である」と書面に記して格下げに抗議したことは全く宣伝されていない。

 ・日本がユーロ国家(例:ギリシャ)のように破たんするとは甚だしい誤導。財務省・メディア・御用学者の欺瞞もしくは不勉強が明らか。「ギリシャは経常収支が赤字、外貨収入が無い、国債の70%は海外の投資家が保有、対外的には債務国」⇔「日本は経常収支が黒字、外貨収入が多い、国債の95%は日本国内で消化、対外的には世界一の債権国」

 ・財務省の大罪は3つある。
均衡財政の宿願に固執・・・真水の税収を増やすためにいかなる財政政策をとるべきかというプラスの発想が無い。今ある税収でやりくりするには支出を削るしかないというスパイラルを招くことを全く非とも思っていないし、歴史的に失敗していることも全く反省していない。

嘘をついてでも財政危機を煽り続ける・・・その方が税率を上げやすく、財政収支均衡を達成しやすい。
 しかし、{税率を上げる→景気悪化→税収が減る→また税率を上げる}国民経済の縮小を持続させることにつながるのに。

デフレ解消による金利上昇、国債の金利負担増加を極度におそれている・・・しかし、金利上昇が怖いからとデフレを継続すれば、じり貧なので益々税収が不足し弱体化した国家に転落していく。

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