海外企業との取引の留意点(続) | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 以前「海外企業との取引の留意点 」というブログ記事を書きました。
 今回は、福岡中経協ニュース2013年6月号に、ブレークモアLOの家守昭光弁護士の講和が簡潔にまとめられていたので、前回記事と重なりのない範囲でアーカイブをまとめてみました。
 ところで家守弁護士、何時代の人?教科書の偉人?みたいなポートレート写真 をウェブサイトに貼られてます。中経協ニュースの写真も、上目づかいで怖い感じでした笑

 最初に総括をあげますけれども、日本企業が買収した海外企業の時価は買収前より下がっているモノばかりで、その理由として、現地の経営陣を親会社がリーガル面でコントロールできていないと指摘していました。
 対極のアメリカ企業の日本法人は、現地社長は日本人であっても、法務部長にあたるリーガルカウンセルはアメリカ人で、日本人現地社長はリーガルカウンセルの同意が無ければ契約書にサインできないほど、グローバルなアメリカ企業は、リーガル面をしっかりガバナンスしていると評価していました。
 
 
1、合意がまとまったことは細かい事でも、たがいに口頭で合意が成立していても、必ず契約書に落とし込む必要がある
*日本人の感覚・・・口約束も約束、阿吽の呼吸や以心伝心。
*海外企業の論理・・・契約書に書かれていないのは決めていないから。
 例)アメリカ企業の場合、契約書には交渉途中の議論や合意には(契約書に落とし込まれていなければ)効果はないという条項が必ず挿入されている。

2、顔合わせ1回めの交渉以降の、本格的な交渉に入る2回めにはNDA(秘密保持契約)を締結する必要がある
 仮にNDAを結んでおかないと、交渉の途中でやり取りした情報を、相手が勝手に利用できることになる。
 特に、技術を提供する側はNDA締結の先行が必須
 なかには、情報を取得することを主目的に交渉の席に着き、情報を得たら交渉を打ち切るという強かな会社もある。

3、契約交渉の途中で、契約条件などを書面の形で相手に無条件に渡すのは言いがかりの原因になる⇒用心のために、『ただし、確定的な契約書が締結されることをこの条件効力発生の前提とする』などの条件を入れておく。
 また、暫定的合意事項を書面で取り交わすときは【法的拘束力を有しない】という文言を明記したレターオブインテントの形にする。

4、海外企業と契約書を作成する際は、どの言語で結ぶかも大事なポイント。例えば、東南アジアは英語が主流である。
中国企業と日本企業が契約を交わす場合、中国語正文・日本語翻訳または中国語正文・日本語正文のどちらかが多いが、正直お勧めできない
 理由は、中国語に限らず、会話はできても専門的なビジネス用語や法律用語を正確に理解し正確に表現できる人は決して多くない。
 また、トラブルが起きた場合、中国本国で裁判を行うのは日本企業にとって非常に不利なので、中立的であり、レベルの高い法律家がいて、取扱事例も豊富な第三国、例えば、シンガポールで仲裁を行う方が合理的な解決に至る場合が多い
 シンガポールを仲裁地とする場合、仲裁人の使用言語は英語だから、契約書が英語以外の場合には英語への翻訳が必要になるから。

5、海外企業との取引の際は、ある程度法律知識のある人間が関与しないと非常に危険→依頼する事務所の選択肢は、英米系LFと、その傘下に入っていない日本の独立系LFのいずれかになる。
 英米系LFは、情報の流れを日本国内にせき止められず、また、日本・本国・現地それぞれの弁護士が関与するためフィーがその分あがる。
 日本の独立系LFは比較的安価ではある。いずれにせよ、担当する弁護士をハッキリ指名した上で、英語力や経験や力量を見極めることが大事である。
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