1、消費者Xは貸金業者Y社(CFJ)との間で、平成7~8年にかけて取引し、この取引の結果18万円の過払金が発生しました。・・・10年の消滅時効が平成18年に成立する。
2、消費者Xは平成14年、貸金業者A(アイク)社から457万円を利息制限法以内の利率で不動産担保で借り入れた・・・この平成14年時点では過払金はまだ時効消滅していません。
3、平成15年1月、A社はY社に吸収合併されました。
4、平成22年7月、消費者XはA社に対し189万円の不動産担保借入金の支払を遅滞し期限の利益を喪失しました・・・この平成22年時点では過払金はもう時効消滅しています。
消費者Xは「189万円を融資した後の平成15年1月時点では、過払金と不動産担保借入金は相殺できる状態になっていた。よって、過払金18万円を相殺するので、Xは残り160万円余りを一括払いすればよいはずだ」と主張しました。
これに対し、Y社は「相殺の主張をした平成22年7月以降はおろか、過払金18万円が消えた平成18年時点でも、まだ不動産担保借入金と相殺できる状態(法律用語で相殺適状といいます)になっていない。むろん平成15年1月時点でも相殺適状になっていない。よって、過払金18万円を相殺することはまかりならん」と反論しました。
前記最高裁は、消費者Xの主張を認めた札幌高裁判決をくつがえし、Y社の主張を認めました。
理由は「既に弁済期が到来している自働債権(過払金)と、弁済期の定めのある受働債権(不動産担保融資)とが、民法505条にいう相殺適状にあるというためには、単に受働債権につき借主が期限の利益を放棄できるという可能性では足りず、現実に期限の利益を放棄したり喪失したりして弁済期が到来していることを要する。
相殺と時効消滅の関係を律した民法508条が適用されるためにも、時効消滅した債権で相殺を主張するためには時効消滅以前に相殺適状に達している必要があるという文理からもそういえる」というものです。
文理からすると最高裁の解釈はおかしくはないんだけど、私も以前Xと同じ主張をしたことがあって、理由は、過払金返還債務があることをしれっと告知しないまま取引しつづけてきたY社がまんまと10年の時効で逃げおおせるは、不動産担保融資で高利を確保できるはっちゅーことは、やっぱ狡い、不公平だと思ったからなんですよね。
そのときの結論は今回の最高裁と同じく敗訴して、抵当権実行を防ぐためにソッコーで判決の命じた金額を元利耳をそろえて返還し(そうしないと係争中の遅延損害金のふくらみが半端なくきつかったので)終わったんだけど、私が仮に最高裁まで争っていたら負けちゃってたわけだ。
そうそう、誤解しちゃいけないのは次のケースでは相殺ができるということです。最高裁のケースとの違いがわかるかな。
平成7~8年過去の取引・・・過払金20万円発生
平成15年に200万円の利息制限法以内の不動産担保融資開始
平成17年に期限の利益喪失・・・残金180万円
平成19年に利息を含めて200万円完済した後、弁護士に幾らか返金してもらうことはできないか相談
☆期限の利益喪失した時点ではまだ過払金は消滅時効にかかっていないので(消滅時効にかかるのは平成18年)、相殺適状あり。
↓ランキング参加中。更新の励みになります。1日1回応援クリックを
![にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fsamurai.blogmura.com%2Fbengoshi%2Fimg%2Fbengoshi468_60.gif)
にほんブログ村