自然人(≠法人)による連帯保証を廃止したらという意見がある | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 債権法改正検討作業が全面的に進んでいるが、その内容の1つに保証契約にどの程度の規制を増設するかという論点がある。

 タイトルは、日弁連の押し出す基本路線であるが、LS制度堅持とは違って、この意見書の内容には私はほぼ賛成である。
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2012/opinion_120120.pdf



 問題意識を正確に知りたい人は、福岡県弁の黒木和彰弁護士も含め、ジュリスト1417号で債権法改正の争点「保証」が執筆されているので、そちらを参照することを勧める。以下はサマリーである。




 商工ローンが巻き起こした数多の悲劇のほか、保証人のデメリットが挙げられて久しい。保証は依然、自らが融資金を受け取っていないのに、責任だけを偏って被せられる前近代的な制度といえる。


 現在の民法ではハッキリ区分されていないが、保証には3類型がある。①情誼的保証②経営者保証③事業性保証である。区分したのは一緒くたにできない特徴があるからだ。



 ①は友人が銀行からお金を借りる際に断りきれずに保証人になる、②は経営している会社が銀行からお金を借りる際に代表者個人が保証人になる、③は信用保証協会が銀行が企業にお金を貸す際に委託を受け保証人になる、そのようなケースが典型的であろう。


 ①情義的保証の特徴は、利他性(=保証人にとってのメリットはゼロでリスクだけ。無償性とも近似)と情誼性(=経済的打算に基づかず個人的情義を動機に引き受ける)、さらに軽率性(=保証被りするリスクがどの程度か検討することもしないままサインする)といわれている。


 対照的に③事業性保証は、経済的合理性(=保証人は保証料を受け取ることで事業として保証を引き受けている)と慎重性(=保証人は主債務者に関する資料を取り寄せ、幾らの範囲まで保証できるか、保証のリスクはどのくらいかなど、検討しておりその能力もある)が特徴である。



 間の②経営者保証は、利自性(=保証人にとって経営会社に融資してもらえるメリットを享受)と非軽率性(=経営会社が返済できるリスクがどの程度あるかを検討できる状況の下でサインしている)が、同じ自然人によるものであっても①とは異なる特徴といえよう。



 日弁連は「③②についてはなお存続しても、①については悲劇を生むだけなので廃止したほうがいい(例外として、賃借保証とか貸主も借主も自然人である場合に限定)」と意見している。



 ただ残念なことに、民法改正の作業部会では3類型化を区分する条文の創設すらはっきり議論されていないので、単に説明義務を加重するにとどまりそうだ
 

 商工ローン業者が公正証書委任状やら登記申請委任状やらたんまり資料を用意して何もわからぬ保証人にバンバン実印を押させていたことを見聞きした身としては、説明義務を加重しても悲劇を除去できないと断言できるのだが、根本に突っ込まない点は物足りない。

 

 なお②経営者保証も事業廃止に伴う自殺・一家離散・再チャレンジ阻止など、①と変わらぬ悲劇を生んでいるのは事実である。
 

 ただ、「非上場会社である中小企業の財務データは自己申告にすぎず、その数値のみを完全に依拠して支払能力の有無を判断することはできない」とか、「将来の支払が困難になりそうな感じになったら、容易に会社資産を経営者個人の資産に移転して執行逃れを画策できる。保証をとっておけばいちいち詐害行為取消などを講じる必要がなくなる」という、中小企業に融資する貸主からの指摘にも頷けるところがあり、②経営者保証の方は、①情義的保証にくらべて無くす必然性ははるかに低いであろう


 最後に、いろんな企業をクライアントに持ち、借金をめぐって数多の悲劇を見てきた私としては、改正民法により、保証人にとって1つでも2つでも責任を軽減できる武器が増えることを願うだけなく、また、自らも1つでも2つでも武器になる判決を獲得していきたいとも願った。
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