受任通知発送と破産法の《支払停止》との関係 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 破産法で支払停止は支払不能を推定させる(破産法15条2項・162条3項)ほか、危機時期後の詐害否認(破産法160条1項2号)や、破産債権者の相殺禁止の領域(破産法71~72条1項3号)を画する、基本的タームです。


 破産法の基本書には「支払停止の典型例は不渡手形だが、債権者に対する支払えない旨の通知が明示の表示にあたる」とごくサラリと書いてありますが、実は受任通知が支払停止に該当するという裁判例はありませんでした。

 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121019112528.pdf

 2012/10/19最高裁は、『個人債務者が』弁護士に依頼して発信する債務整理開始通知は《支払停止》に該当すると宣言しました。

 
 多数意見では言及されていないのですが、私が
『個人債務者が』と射程範囲を制限する保留をつけた意味については、須藤正彦弁護士の補足意見が大切ですので、ぜひ判決文をご覧になって下さい。


 支払停止とは何かは1985/2/14最高裁判時1149号159頁で定義されています。その事例では、債務者が弁護士との間で内部的に破産申立の方針を決めただけでは支払停止に該当しないと判断しました。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130856315238.pdf


 
 押さえておくべきは、債務整理の受任通知を発信した後、個人債務者が独断で一部の債権者への支払を継続したり、一部の債権者がそれを受け取ったりしたときは、破産手続開始決定後に、破産管財人から否認権を行使されるおそれが高いということです。

 
  本件でも、破産管財人は破産債権者との間で17万円の返金をめぐって最高裁までかけて闘争したようです。
 特に個人依頼者から債務整理を受任した弁護士は、受任の際にシッカリ説明しておく必要があるでしょう。
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