無委託保証の主債務者の破産と、事後求償権の預金との相殺の可否 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120528134506.pdf

やっと最高裁2012/5/28判時2156号46頁の事実関係がわかりました。この記事を読んだ後に、最高裁判決を読めば理解しやすいでしょう。

1、2006/4/28 Y銀行(三井住友)はA社の取引先であるB社との間で、A社の委託を受けぬまま、A社がB社に対する買掛債務を保証しました  ※

2、2006/8/31 A社が破産し、Xが破産管財人に就任しました。A社はY銀行に当座預金を預けていました。

3、2007/3/27 B社はA社から買掛金を払ってもらえません。そこで、Y銀行から保証債務の履行として、買掛金を払ってもらいました(=Y銀行のA社に対する事後求償の取得)

4、2007/6/12 XはY銀行との当座預金を解約し預金払戻を求めます。が、Y銀行は相殺したので払えないと拒絶しました。


 Y銀行の主張事後求償権は、破産手続開始前の保証関係に基づいて発生したもので破産債権であるが、将来の請求権(破産法67条2項後段)として相殺が許容される(破産法67条1項)。
  ⇒預金払戻を拒否できる


 Xの主張:事後求償権は破産手続開始後の保証履行に基づいて発生したもので破産債権(破産法2条5号)に該当しない。また、仮に該当するにしても、破産手続開始後に保証を履行して求償権を取得する行為は、あたかも他人の債権を取得するのと類似しており、相殺は禁止される(破産法72条1項1号類推)
  ⇒預金払戻を拒否できない

 最高裁は、無委託保証でY銀行が取得した事後求償権は破産債権であるけれども、無委託保証の場合には委託アリ保証と異なり、(破産法67条1項は適用されず)、破産法72条1項1号と同様に、相殺は禁止されると説示しました。一審・原審から一転、Y銀行逆転敗訴です


 そもそも不思議だったのは、なんで民間取引であるA社とB社の取引の保証人にY銀行がなっていたか(しかもA社の委託無しで)でした。

 実は※の実体には、Y銀行が、A社の委託を受けずA社の保証人にな、対価としてB社から保証手数料を受け取る無保証委託ビジネスなるビジネスモデルが存在していたのです

 このビジネスモデルでは、Y銀行にとっては、万が一、A社が倒産してB社に対して売掛金を保証委託に基づき支払っても、Y銀行はA社から当座預金を預かっているので、A社に対する事後求償権と、A社のY銀行に対する当座預金を相殺すれば回収には問題がない(=単なる貸金よりローリスク)というものだったと考えられていたようです


 が、Xが最高裁まで粘ったことにより、Y銀行はXに当座預金を払い戻すほかなくなり、いわば無委託保証ビジネスは主債務者が倒産したときは機能しないと、ビジネスモデルを変容されてしまったのです。


 その理由として、最高裁は、委託アリ保証と無委託保証では、同じ事後求償権であっても、相殺による求償権回収の期待が異なる(A社の立場にいわせれば、委託もしてないのに、勝手にY銀行への預金をY銀行からの求償権回収の引き当てに期待されてもはた迷惑)という発想を示しています。
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