有効な定期借家契約に必要な書面の数 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

福岡若手弁護士のブログ「ろぼっと軽ジK」は私です。交通事故・企業法務・借金問題などに取り組んでいます。実名のフェイスブックもあるのでコメントはそちらにお寄せ下さい。

 定期借家というのは、更新システムがなく、契約期間が満了すると、賃借人は新たに賃貸人と再契約出来ない限り、退去しなければならない種類の契約です。平成に入り借地借家法の改正で新たに作り出された契約類型です家

 賃貸人にとっては契約終了期間が明確であり、期間満了の際には立ち退き料を要せず必ず退去してもらえることで安心して貸しやすいメリットがあります。 
 他方、賃借人にとっては、契約期間が10年と長期に設定されていても途中で更新料をとられる心配がないとか、立ち退き料の心配がない分普通の借家契約よりも家賃が安く設定されやすいメリットがあります。
 その結果社会全体にとっては遊休不動産の有効活用の促進に資するという意義があるという位置づけがされています。事業用定期借地契約は巨大紳士服店などロードサイド店舗でよく利用されていますがスーツあの借家版が定期借家契約です。
 定期借家契約は、上記のように普通の借家契約なら当然の権利を制限していることから、借家人保護の目的で、借地借家法38条1項と2項に定める手続を踏んでいなければ、定期借家契約としては無効で(借地借家法38条3項)、契約期間が満了しても更新可能とする借家契約になるとされています。
 その借地借家法38条2項は、定期借家契約の際は《賃貸人は予め契約更新がなく、期間満了で契約が終了することを明記した書面を交付して説明しなければならない》と定めていますが、賃借人が口頭のやり取りで更新制度がないことを納得している場合にも、わざわざ定期借家契約であることを明記した契約書とは別個独立した書面を用意して賃借人に交付しなければならないのか、それとも、賃借人がわかっているのだからそういう場面では更新制度がないことを明記した契約書のみ交付すれば済むのかが問題になりました。
 最高裁2012/9/13http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120913143127.pdf
は、契約の締結に至る経緯や、賃借人が定期借家であることを認識しているか否かに関わらず、賃貸借契約書とは別個独立の書面をあらかじめ交付して説明しなければならないと、形式的画一的に取り扱うことを明言しました。定期借地では借地借家法38条2項と同じ手続を踏む必要はありませんが、今後、不動産業者が定期借家を締結するときはこの最高裁判例のとおりに取引に関与しないと、ミスで家主から訴えられるおそれがあります。
 なお、公正証書を使って定期借家契約を締結した際の、公正証書内の記載の証明力を排斥した最高裁2010/7/16判タ1333号111頁http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100716141939.pdf には、《借地借家法38条2項において賃貸借契約の締結に先立ち契約書とは別に交付するものとされている説明書面》という説示があったことから、直接の説示ではないにせよ、今回の最高裁判決の結論は予測されていた面はありますが、専ら形式的画一的に書面の数を勘定することが明言した点を、弁護士のみならず宅建業者もしっかりと押さえておくべきでしょう。
 

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

↑↑↑ランキング参加しています、クリックお願いします