#648 国道17号上尾道路(Ⅱ期区間) 箕田付近工事状況 | 関東土木保安協会

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国道17号のバイパス計画である上尾道路。
埼玉県鴻巣市は箕田(みのだ みだ)交差点で、既に供用されている国道17号の熊谷バイパスに接続します。
この箕田交差点付近での工事の様子が個人的に興味深く、現地に行ってきました。


箕田交差点に来ました。
大宮付近から北上してくる国道17号。
17号はここから旧市街と熊谷バイパスへと分かれていきます。
写真は、熊谷バイパス方を見たところです。
熊谷バイパスは、地域高規格道路の「熊谷渋川連絡道路」の計画に伴い、中央に自動車専用道路用の広大な空地があります。
箕田交差点も、これに合わせて非常に大きい造りになっています。

▲箕田交差点

今回訪れた、箕田交差点以南の現在工事中の上尾道路の区間も、道路中央に自動車専用部を持つ構造です。
最初の写真に交差点に掲示されているイメージパースを載せましたが、あれが一般道路部の完成イメージで、2つの陸橋の間の空地が自動車専用道路のスペースです。
道路幅は57mと、広くとられています。

▲交差点の先には道路予定地が続いている

気になっていた1つ目が、箕田交差点近くにあった分譲地です。
いつものようにGoogle Mapを参照させて頂きます。
地図では中央調整池の付近に住宅が並んでいるのが確認できますが、航空写真ではそれがありません。
過去の写真を振り返ると、どうやら1990年前後の記録では近隣大型商業施設の駐車場であったようですが、後に住宅地になり分譲されていたようです。
道路の都市計画に対してあまりにも現地の移り変わりが激しいため、現地を見てみました。

▲箕田付近の様子(Google Mapより)

現地の様子です。
見ると、側溝に舗装された道路に、しっかりと比較的新しいどこにでもあるような分譲地の面影が残りますが、住宅は全て解体されて現存していませんでした。
恐らく建築後長くても20年程度で解体されているとみられます。

▲建設予定地には比較的新しい分譲区画も

地図上で団子屋さんの北辺りに少し大きな建物がありますが、これを北から見たものが下写真の様子です。
この付近の住宅は基礎だけ残っているものの建屋は解体されています。
わずかに残るエントランスや外構の痕跡に、まだ比較的新しい住居であったことが感じられます。
分譲地ですと、通常は新築・購入となるでしょう。
賃貸などのケースは稀で、高い買い物ですから長期的なライフスタイルを描いて住まれることがほとんどかと思います。
とはいえ、立ち退きでの補償額は査定で変動するのは事実です。
ここまでの幹線道路の計画ですから、全く無関係な部外者としては、意図しない立ち退きになってしまったのか、織り込み済みなのか、住まれた方々はどのような思いで住まれ、転居されていったのかというのは気になるところです。
元々道路は計画されていたはずですが、売る側は先々の家主が関わる可能性について深くは触れないことも多々あるかと思います。

▲基礎以外が解体された住宅が並ぶ

上尾道路は県道76号線と交差します。
この先には高崎線が通っており、イメージパースにある陸橋によりオーバークロスします。
平面交差となれば渋滞必至に思えますが、それを気にするユーザーは遥か先の自動車専用道路の開通を待つことになるのでしょうか。

▲県道鴻巣川島線との交差箇所

さて、上の写真にも少し写っていますが、気になる2ヶ所目がこれです。
NTT東日本の箕田電話交換センタです。
(看板はこの名前でしたが、表記が消されていたため別の名前かもしれません)
数々の地震にも耐えてきた旧電電公社がこしらえた屈強な鉄筋コンクリートの建屋が、建設地脇に建っていました。
冒頭の地図でも下の方に写っているのがわかるかと思います。

▲上尾道路予定地脇に立つNTT箕田ビル。奥は跨線橋の橋脚だ

周辺人家の移転状況から、敷地に僅かに道路はかかってしまうかもしれないですが、ぎりぎりのところで建物はクリアしています。
電話局は地下に埋設された数多の通信線と接続されており、また移転には代替の通信機器や交換設備を移転させなければならないと想像され、その立ち退きのハードルは単なるハコモノの非ではありません。
はじめから周辺事情は見越して建てたのかな?と推察できます。

▲しっかりと計画から外れる電話局建屋

わずかな年月で新築から解体まで至ってしまう住宅、その倍はあるであろう年月を経てもなお立ち続ける電話局。
街の風景も生い立ちは様々で、非常に興味深いです。

▲敷地はかかるもスレスレのところで建物はルートを回避

上尾道路はそのまま高崎線との交差へ進みます。
現地にはできたばかりの橋脚が完成していました。

▲高崎線を挟みこむ上尾道路の橋脚

2022年2月にできたばかりでした。
元々は橋脚を複数設ける設計でしたが、盛土を主体とした方法に変更することで費用を圧縮したようです。
この橋ができるだけでも景色は相当変わりますが、高架区間ができたらどのようになるか楽しみです。
(できるかどうかがわからないですが)

▲橋脚銘板

線路を渡り、南側へ来てみました。
こちらも住宅地だったところが移転が進み、ほぼ道路の幅で開けていました。
先ほどの気になる1ヶ所目の線路向かいと同様に、古くからある住宅を壊したようなところではなく、ここ20~30年の間に住宅地化したような区画もあり、この道路建設についてどう認識していられたのだろう?と気になるところです。

▲線路を渡った南側の様子

中には、2012年頃に新築となった大手賃貸の集合住宅もあり、それは既に解体されていました。
10年と経たない建物の解体。
こういう例を見ると、お金にシビアな不動産関係ですから、すぐに立ち退きになっても補償込みでペイできると判断できたから建てたのでしょうか。

▲周辺では住宅の移転が進む

こちらも、基礎だけ残った家が残っていた他、解体後のガラもちらほらと見受けられました。
まだわずかに残った家々も、もうじき立ち退かなければならなくなってしまうでしょう。


できるとわかっている土地に新しい建物が建つ。
法的にも何ら問題ない営みです。
ただ、このマクロでみれば微々たるものではあっても、様々なカネ、ヒト、モノの動きが無駄にしか見えず、こんなプロセスは社会にとってプラスなのかな?と疑問に思ってしまいます。
容易く建て替えられないことが功を奏してか堂々と建つ電話局と、すぐに地図から消え去ってしまう住宅地。
持続可能社会。サスティナブル。
個人的には、見ていて気持ちが良いものは、前者なんでしょうね。


(2022/4/28 箕田の読みを「みのだ」から「みだ」に訂正しました)

〈参考〉


・国土交通省関東地方整備局大宮国道事務所 : 埼玉の道づくり 上尾道路