#649 【マニアな一基】東電PG高崎線22・23号 ~歳の差モノポール兄弟~ | 関東土木保安協会

関東土木保安協会

Kanto Civil Engineering Safety Inspection Association

~ 土木の迫力 機械の技術 礎となった名も無き戦士達の魂 ~
関東土木保安協会は、鉄とコンクリートの美学と保全活動を追求します。

 
関東土木保安協会です。
 
群馬を代表とする都市の一つ、高崎市。
街の顔でもある高崎駅も、城跡を中心とする綺麗な区割りの駅西、競馬場跡を再開発してなお発展が続く駅東に挟まれ、賑やかな様相です。
今回訪れたのは駅東の目の前にある栄町です。
駅前に遠慮がちに建つ2本の鉄塔が見えたので行ってきました。
 
 
 
この鉄塔は高崎市栄町を通過する東京電力PG高崎線のものです。
高崎線といえば、少し前に載せた高崎線1号鉄塔がありました。
大量の電線を束ねた厳めしい姿が印象的でした。
 
高崎線は群馬変電所から南下した後に下段の4回線と別れ、矩形鉄塔の群れを成した後に高崎変電所へ向かいます。
高崎線は変電所にて一度地中に潜った後に南下し、この22号鉄塔で再び地上に姿を現します。
 
▲緑地帯を進む東電PG高崎線22,23号ら
 
高崎線22号はモノポールの美化鉄塔です。
プレートには1987年とあり、淡い緑色と相まって一昔前の「環境調和型鉄塔」の雰囲気を纏います。
円錐状の鋼管を用いたよくある鉄塔(鉄柱)です。
 
▲高崎線22号(1987/10,46m)
 
ケーブルヘッドから入った電線は塔内を通って地中にアクセスします。
下には点検口もありますが、少し小さそうですね。
梯子は公衆の昇塔防止のために高いところまでカバーがされています。
ノンクライムはありません。
 
▲大柄な人は入るのに苦労しそうだ
 
一本先の23号に来ました。
こちらも先ほどの兄弟かと思えば、実は10年弱ほど建設期間がずれています。
1996年とのことでした。
同時期に建てたと思うじゃないですか。面白いですよねぇ。
なんでずれたんですかね。
 
▲高崎線23号(1996/6,49.6m)
 
下段には高崎変電所に接続する根小屋線を併架しています。
1基で4回線引き下ろしができる引き留め鉄塔もあるなか、ここではどのような経緯か、2回線を1基ずつずらして落としているんですね。
 
この鉄塔は末尾リンクのとおり、鉄塔カードのサイトの群馬編に掲載されています。
重量は93tあるそうです。100t近いなんてすごいですね。
そのサイトに他の鉄塔も載っていますが、同規模の66kV2回線引き留め鉄塔では28tとの例があります。
資材の使用量は価格へそのまま上乗せされます。
鋼管柱鉄塔が建設費が高いと言われ、近年なかなか建設されない理由のひとつでしょう。
それもアングル材の鉄塔ですから、凝った鋼管を用いたこのタイプはそこでも高くなります。
 
▲下段に出てくるのは根小屋線2回線だ
 
高崎線の他の鉄塔のプレートには1963年書いてありました。
確かに昔の航空写真でみてもしっかりと写っています。
駅前に堂々と陣取る辺り、その頃からある送電線のようです。
区割りを見ると、道路側が鉄塔側に合わせて造られたようです。
こんな混み入った駅前ですから、今では地中化となりそうですが、60年前の当時は立てられたのでしょう。
この2基は高崎変電所からのケーブルを受けていますが、変電所自体はここから少し北にあります。
都市化の進展に伴い、この鉄塔達の北側から変電所までの高崎線/根小屋線は後から地中化したようです。
地図を見ると送電線に合わせたように道路ができているのに、今では送電線が無いなんて、わざわざ斜めに傾いた区割りも誰のためのものなのか?と思ってしまいますね。
彼らが昔いた名残はこれからも残ることでしょう。
 
▲直線的なルートに道路側も合わせている
 
駅前の官公庁街。
電波塔が並ぶ姿は良い雰囲気です。
手前には高崎線と同じ頃の1963年に完成した高崎市中央体育館。解体目前です。
鉄塔と道路から、1960年代からこの風景が広がっていた事でしょう。
鉄塔と周辺施設が魅せる昭和ノスタルジー。
最高です。
 
▲地方ターミナル駅前らしい電波塔の並び
 
高崎線のすぐ隣にはビックカメラがありました。
群馬を発祥とするビックカメラ。
実は、県内営業店舗は現在のところこの1店のみです。
 
 
駅前でスマートに立つ高崎線の2基。
高崎駅前の顔としてこれからも仲良く建っている事でしょう。
 
 
〈参考〉
・鉄塔カード : 群馬編