#563 【堤体観測】~ダム湖の湖底でテニス~ 霧が丘雨水調整池 | 関東土木保安協会

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前回の記事のNTTドコモ長津田無線中継所から東に進むと、コンクリートの堤体を発見しました。

こんな街中にダムとは、萌えますね。


▲緑区に現れた堤体

ダム…なんでしょうか?
上流側に水がありません。
堤頂を見るとダムですが、何やら様子が違います。

▲堤頂部

見たところゲートは無く、自由越流式です。
水はありますが堤体下部にちょこっと残る程度でほぼ無いことから、ゲートレスで放流口があるのでしょう。
ゲージは約6.8mまで記載があります。

▲堤体上流側

奥を見てみると、ダム湖へ続く道がありました。
そしてその奥にはなんとテニスガーデンと書いてある建物がありました!

▲湖底に向けて下る道路の先にはテニス施設が

さっさと看板でも見ろよと突っ込みが飛んで来そうですが、こちらが案内板です。
霧が丘雨水調整池というところでした。
図画示す通り、河川へ一定以上の雨水の流入があった場合、一定量に絞り込みを行うための施設のようです。
いわゆる穴あきダムですね。
余水吐が自由越流部分になります。
横浜市の管理になるんですね。

▲霧が丘雨水調整池の案内板

堤体の反対側の南側に来ました。
丘陵地にあって高低感がありますね。
水は写真左の西側より流れ込むようです。
放流された水は地下区間を流れるためどう流れているのか読めませんが、北に鶴見川水系の恩田川が流れており、東名高速が渡る辺りに放流口らしき設備が確認できますので、そこから放流されるのではないでしょうか。

▲広いテニスコート

堤高はわかりませんが、水深はスペック上も堤体の目盛りも6.8mということで、恐らくはダムにはならず堰堤となると思われます。
鶴見川水系では最大の9.6万m3の貯水量を誇る設備とのことです。
その貯水を迎えたとき、自由越流部の縁までなみなみと貯まるわけですが、果たしてこのテニスの管理所は無事でいられるのでしょうか?
気になる結果は、文末リンクの国土交通省のPDFファイルである程度想像できそうです。
この資料では浸水時のテニスコートの画像が載っていますが、パラソルの傘下付近の貯水量で、ゲージで言うと4m位の水深があるように見えます。
とはいえ、サーチャージの7m弱となると施設まで浸かるくらい迄いきそうですね。

▲サーチャージ水位でどこまで浸かるのか

気になるのでテニスの管理所まで来てみました。
緑テニスガーデンという横浜市の財団法人が管理する施設のようです。
管理所は1階部分が全てピロティになっているようで、駐車場として利用されているようです。

▲管理所とテニスコート

建物1階中央になにやら小部屋がありますが、ドアはなく清掃用具などの収納庫のように見えます。
ちらりと右の方を見ると空調の室外機がありました。
これもコンクリの上に設置されていて、完全に1階部分が水没してもいいような設計になっているようです。

▲管理所。1階はピロティ形式で駐車場のようだ

管理所の近くには赤い柱がありました。
どこまで水没したかわかるようにするためのものでしょうか。
これらから、建物関係の設備は、浸かっても影響が無いように予め設計された造りになっているようですね。
調整池の中に通常は別の用途で使用しているしっかりとした建物がある例はあまり見たことがなく、こういう造りになっているのが面白いです。

▲管理所裏手にあった紅白のポール



テニスもダムも好きな方、ここに魅惑の湖底テニスコートがありますよ、と案内差し上げたいと思います。

ではでは。






〈参考〉

・国土交通省 : TSURUMIGAWA 鶴見川流域水害対策計画の進捗状況(PDF)


・公益財団法人横浜市スポーツ協会 : 緑テニスガーデン