#553 ~階段吉野家~ 吉野家藤が丘店 | 関東土木保安協会

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関東土木保安協会です。


今回は、だいぶ前にナニコレ珍百景で放映された吉野家を取りあげます。
横浜市青葉区は藤が丘に、住宅街に看板だけがポツンと現れる吉野家があるということで話題にされたところです。
既にSNSやブログなどで様々な方々の来訪レポが載っています。
私も少し前に行ってきましたので、記録を載せましょう。


横浜市青葉区藤が丘。
吉野家最寄りの駅です。
駅に着いたのでホームから駅前を見てみました。
街並みは丘陵地に発展したため、起伏が激しいのがここからでもわかります。
東急田園都市線の開業前は、田畑が広がる長閑な景色が広がっていたことでしょう。
横浜のこの辺りなどの山側では、未だに野菜や果物の無人販売所が置かれていることもあるくらいです。

▲藤が丘駅前広場

吉野家に向かって歩きます。
街路を曲がる度に、自転車では辛そうな勾配が襲ってきます。
「これだから階段登ったら吉野家なんて十分あり得る環境だよな」なんてブツブツ呟きたくなります。
横浜、川崎はとんでもない傾斜地に住宅地が広がっています。
写真中央奥にある防音壁が、国道246号です。
吉野家藤が丘店はこのロードサイドに立地しています。
早くも高低差を思い知らされます。

▲穏やかではない丘陵に住宅地が広がる

駅からの距離600m弱。
そんな距離だとは思えないような息づかいを自身に感じつつ、名物の階段が見えてきました。
本当に家ばかりのところに階段と看板だけあります。
それにしても急です。
産経新聞の取材によると44段あるそうです。

▲吉野家への階段が見えてきた

隣のマンションはつい最近できたようです。
右側が樹木に覆われているような昔の画像も出てきますが、私が伺った時はフェンスで仕切られ階段が大変に美しく拝めました。

▲看板だけ吉野家、見参!

看板は綺麗で、きちんと更新が行われているようです。
ネットを探すと昔のオレンジ✕白系の看板も出てきます。
今はオレンジ✕黒系基調の現行のブランドロゴに置き換わっています。
放置感がなくファンとしては嬉しいですね。
残念ながら、伺った時は既に冬で影が入り込みやすく、撮影時も綺麗に写りませんでした。
(また来なくていいの?と店が言っているのでしょう笑)

▲案外しっかりとした作りの看板である

普通のレポートではよくある珍スポ録で終わってしまうので、変なところも見ていきましょう。
これの画像で、夜に光っている様子が出てきますが、どうなってるのかと下を見たら、左側の足元から配線が引き込まれていました。
しっかり照明用電源を引き込んでいるのがわかります。
昼間の写真ではそんな作りに見えないのですが、電光機能が付加されたヤル気満々の設備なのでした。

▲意外にも照明が設置されているのがわかる

そのくせ、4本の脚は若干頼りなく、手すりに無理矢理固定された側には何とも後付け感があります。
コの字に挟んで穴を開けています。
当初から設置されているわけでは無いのでしょうか。

▲看板の柱は片方が手摺に固定されている

階段を見上げます。
開店と同時に設置されたのでしょう。
この店舗の経緯を航空写真で追ってみたのですが、90年代前半にはまだ完成していないようでした。
個人的に、80年代後半頃にはあるように思っていたので意外です。

地図では、当時設置されていた自動車のヤードのようなものがあり、その時からこの斜面には階段のような通路が、崖下の道路と246号との間に完成していたような様子が伺えました。
(ヤードに見えつつ単なる駐車場かもわかりません)
実は、吉野家がこの地に開店させた際に新規に階段を設置した話ではなく、元々の地権者(使用者)が前から設けていた通路に階段を設置した話なのではないかと推察します。

▲結構な運動である

看板の電飾については、配線を追うと階段を照らす街灯のボックスから引き出されており、これも恐らく街灯設置と同時に設置されたのではと思われます。
登るとわかるのですが、街灯は駐車場のものと同じなので、店舗竣工当初よりあった、すなわち店舗竣工時から街灯も階段もあったのではないか、というのが見立てです。

▲看板が見えてきた。街灯が夜の段差を照らしてくれる

階段を登りきると少し通路が続き、駐車場です。
手摺も塗装が剥げてましたが、フェンスなどにもなかなか年期が入っています。
30年くらい経つのではないでしょうか。

▲階段を上がるとようやく普通の吉野家になる

こちらが吉野家の駐車場からの全景です。
一見普通に見える店舗も、この時代ではなかなかクラシックな部類に入ると思われ、いま主流のプレハブ感ある平らな屋根+看板ではなく、しっかりお山が尖ってますし、そこに立てられた立て看板が一昔前の形態です。
現在ではロードサイド店であれば、ましてやこんな幹線道路沿いの店舗であればドライブスルーは付けるでしょうし、そのために敷地の端に店舗を建てることもしないでしょう。

▲吉野家藤が丘店全景

店内に入りカウンターで牛丼を頼みます。
店内の様子は載せませんが、リニューアルされナチュラル系のウッドカラーで綺麗に更新されていました。
U字のカウンター一列と、テーブル席がいつくかありました。
昔を思えば、牛丼屋といえばカウンター一択で、あってもカウンター脇に回転寿司屋のようなボックス席があるだけでした。
時代は変わり、回転をあげていい客層ではなく、ゆっくり座りたいお客も多くなったということでしょうか。
次第に牛丼チェーンらはテーブル席と凝った定食やカレーの追加に舵を切り始めたんだよな、とふと思いました。

▲反対側から店舗を見下ろす。斜面だらけのなかに建っているのがわかる。

さて、牛丼もほおばって、満たされたことですし、今度は階段を降りましょう。
お店を出て階段を見てみると、なんともまあ凄い立地だよなと改めて感じます。
神社だ、看板は鳥居だ、などとブログで言われていますが、私も実物を見てみてまさにそれを感じました。
建て替えの際には縁担ぎの社でも建てれば面白いのではないでしょうか。

▲断崖絶壁に近い急斜面である

階段を利用している方がいるかはかくにんできませんでしたが、私がどんぶりをかきこんでいる間に見えられた5組(個人含む)ほどの利用者は、3組が徒歩利用者のようでした。近くから歩いて見えられる方が結構いるようですね。
使ってわかりますが、確かにこの階段があるのと無いのでは店舗利用の利便性が段違いで、ルートによっては、下の道路に路駐してテイクアウトを利用した方が遥かに近いです。
(なんと、Google Mapのルート検索機能で階段下と吉野家藤が丘店を結び検索したところ、車を走らせずに歩きなさいという結果が出るほどでした笑)

▲こちらもよく知られた看板裏のお礼のメッセージ

ナニコレ珍百景では10年程前に取り上げられたとのことですが、その後も度々テレビに出ては話題にされているようです。

この藤が丘店、居抜き店舗が比較的少ない牛丼チェーン界隈では、なかなか面白い話題だと思います。
是非、店舗を伺うときは徒歩で行かれてみては如何でしょうか。



〈参考〉
・産経フォト : 【路上感撮】天空の吉野家