原発で重大事故が起きた際、周辺住民をいかに早く避難させられるかが重要な課題となっている。交通や環境問題に取り組む民間団体「環境経済研究所」(東京)の上岡直見(かみおかなおみ)代表=法政大学非常勤講師(環境政策)=が、バスやマイカーで原発の三十キロ圏外に脱出する時間を試算したところ、全ての道路が使えるとの想定でも、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)や中部電力浜岡原発(静岡県)などでは、二日かかっても周辺住民の避難が終わらないとの結果が出た。
原子力規制委員会が定めた避難基準では、原子炉の冷却機能が失われるなどした場合、五キロ圏内では即時避難を開始。その外側の地域では数時間は屋内に退避し、毎時〇・五ミリシーベルトの放射線量が測定された時点で避難を始め、二十四時間以内をめどに脱出を終えるとしている。
上岡氏は、全国全ての原発三十キロ圏で、道路が車をさばく能力(延長距離や車線数)がどれくらいあるかや、バスやマイカーの登録数を調査。バスの三割、マイカーの半分が避難に使われると仮定し、全ての車が圏外に出る時間を、渋滞予測などで一般的に使われる数式を用いて計算した。
試算は、高速道路を含む全ての道路が地震や津波の被害を受けても通れることを前提にした。それでも、最短は関西電力大飯原発(福井県)の八時間だった。
周辺の人口が多い原発ではあらためて避難の難しさが判明。最短の場合でも、最多の約九十三万人が周辺に住む東海第二原発で五十二時間、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)で二十九時間半、浜岡原発は六十三時間、中国電力島根原発(島根県)では四十五時間半かかるとの結果が出た。
福島第一原発の事故の際は、地震で道路が壊れ、情報が入り乱れ、大渋滞が避難を阻んだ。重大事故が起これば、国の基準が求めるように数時間も屋内にとどまり、一年分の被ばく線量限度(一ミリシーベルト)を二時間で浴びるほどの線量が測定されるまで避難を思いとどまらせるのは非常に難しい。
上岡氏は「国が想定するような整然と段階的に避難することなどあり得ない。道路が寸断されないという理想的な状況でも、これだけ避難に時間がかかる。現実には、もっとかかるはずだ」と指摘している。
「東京新聞」より転載
浜岡原発一旦事あれば、周辺住民は2日間以上、高濃度の放射能を浴び続けなければならないとは。
避難計画なんて絵に描いた餅だ。