英雄たちの選択『源氏物語』を観て | パドックに魅せられて

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競馬歴45年。
馬ほど美しい動物はいません。

あの人たちが全員『源氏物語』を読んでいるとは思えない。ましてや『高校の時授業で読んだ』というのは、さわりだけ読んだということなんだろう。


『源氏物語』は全10巻ある。私は頭が悪いので最初は10年以上かけて読んだ。もちろん途中で読むのをやめてしまったから。今回二度目で今第10巻目を読んでいる。この物語は、現代のように広く出版されるわけではなく、ただ一条天皇が読むために書かれたらしい。それを書かせたのが藤原道長だったと言うことだ。
そしてこの小説は世界的に読まれている、世界最古の小説らしい。
私が読んでいて思うのは、紫式部がすごい執筆力のある人だと言うこと。そして内容的には、今の人とは死生観が違うと言うこと。貴族の人たちにとって、出家するという選択肢が、貴族として生きることと表裏一体であったこと。貴族社会が絶大なる権力を持っていて、この小説には農民という存在が全く描かれていないと言うこと。せいぜい下々という下りがわずかだけあって、それも農民ではなく、その当時は貴族の用心棒でしかなかった武士止まりであること。貴族も飯を食べたはず。それを誰が作っていたのか。そんなことは『源氏物語』にはかけらも出てもこない。と言うことは、当時の社会にとって農民など人間のうちに入っていなかったのではないだろうか。階級があるということが、当たり前すぎて、考えたり、疑問に思ったりすることではなかったということなんだろう。
日本でもついこの間まで階級社会だったのだけれど、それが貴族、武士、農民の人たちにとってどんな一生だったのか。そんなことも考えながら、続けて紫式部の『源氏物語』を読んでいきたい。