四苦八苦の最後を飾りますのは、「五蘊盛苦(ごうんじょうく)」です。
五蘊盛苦とは、五蘊の働きが盛んになり、そこに生まれる執着により身を焦がされる状態を言います。
これまでの生・老・病・死・愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦は、いずれも字から何となく意味が解りますが、これはさっぱりですよね。
五蘊というのは、我々をつくっている五つの要素のことで、色・受・想・行・識を言います。
色とは、元々は肉体を示していましたが、今は物質とされています。
ただ、受・想・行・識との兼ね合いから考えると、音や匂いや温度など、他者と共有できる全てのものは色と捉えるべきだと思います。
受は色に触れたときに、最初に感じた心の働き、感受を示します。
想は感じたことに想いをめぐらせてイメージすることです。
行は肉体を動かす脳の働きです。
識は受・想・行の結果に得られた知識です。
例えば、走りなれた道を車で走っていたら、見覚えのない道を見つけました。
これが色です。
「あれこんなとこに道あったっけ?」
が、受です。
「方向的にいうとこっちの方が近道かも知れないなぁ」
が、想です。
「ちょっと行ってみるか」が行で、
「なんだよ行き止まりかよ」
が識です。
大好きなカレーの匂いがしてきました。
これが色です。
「あぁ、いい匂い」
が受です。
「今夜はカレーか」
が想です。
「じゃあ、おやつは食べないでおこう」が行で、
「やっぱ、空腹は最高の調味料だね」
が識です。
夏の暑い陽が照りつける日、玄関を出た瞬間の熱気。
これが色です。
「あち」
が受です。
「これはまだまだ(気温が)上がるな。熱中症対策をしなきゃな」
が想です。
冷蔵庫から冷たい飲み物をカバンに入れたのが行で、
「やっぱ、コーヒー牛乳は向かないな」が、識です。
ようするに、我々の日々の生活は五蘊によってもたらされている、ということです。
その中で、イメージを膨らませ過ぎたり、結果を求めすぎたりして、苦しみを生み出すのが五蘊盛苦という訳です。
これも生きている以上避けることはできませんよね。
避けることできないのだから、受け入れるしかないのですが、それがなかなか難しい。
そんなときは、この言葉を思い出して下さい。
「まっ、それも人生だ」
これは僕の親友・蛯名の口癖でした。
生きている時は大して何とも思いませんでしたが、死んだら急に重みが出てきました。
「まっ、それも人生だ」
この世の四苦八苦を和らげる魔法の言葉。
「まっ、それも人生だ」
(合掌)
ご参考までに…。