ヨハン・セバスチアン・バッハの作曲に成る「マタイ受難曲」を交響曲として編纂し、これの日本語版を作成せんとす。
第三三曲、二重唱アリアと合唱
「捕らへられしイエス」
(二重唱)
あはれ、我がイエス、今や捕らはれぬ。
(合唱)
放せ、とゞまれ、捕らへそ。
(二重唱)
月よ光よ、
ありしに、悲しびて、うち沈めり、
あな憂、我がイエスを失ひたれば。
(合唱)
放せ、とゞまれ、捕らへそ。
(二重唱)
引き行く、彼れを、身は縛められあり。
(合唱)
雷電よ、雷神よ、雲上に隠れしか、
開け、業火の釜を、おゝ、黄泉よ、
うち砕け、滅すべし、うち喰らへ、噛み砕け
激しき怒りに任せ、
誤てる、裏切りの、人喰ひの族(ぞう)を矣。
第四七曲、アリア
「否みしペテロを泣く」
憐れみ給へ、我が神よ。
廻(めぐ)りに落つる、我が涙にて。
見そなはせ、見そなはせ、
心とまなことは、
泣きぬ、御まへに、いとゞしく、
憐れみ給へ、憐れみ給へ矣。