リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。
その第三夜「神々の黄昏」より第三幕二場。
ジークフリート、グンターとハーゲン、ギービヒ家の家臣らと合流し、その場を休息の席として酒盛りの用意を為す、話は小鳥の言葉を理解する能力に及ぶ。
「神々の黄昏」 第三幕 二場
(ハーゲン、家臣ら)
ほい、ほお矣。ほい、ほお矣。
(ジークフリート)
ほい、ほお矣。ほい、此処に矣。
(ハーゲン)
つひに見出でたり、
いづく追ひまはせる。
(ジークフリート)
降り来たれ矣。此処ぞ爽やかに涼しき矣。
(ハーゲン)
此処に休らはん
かつ食(じき)を調へん。
獲物は置かつせ
かつ酒嚢出だせ矣。
我れらの獣を散らしゝが、
今は汝(いま)しが奇し勲し聞くべき、
何んぞ、ジークフリートの狩れるもの。
(ジークフリート)
食(じき)については立場悪し。
爾らの獲物を
給はずば。
(ハーゲン)
獲物無しとや。
(ジークフリート)
我れ森へと狩り行けど、
見出でたるは水の獣のみ。
是非にと勧めあらば、
水鳥のかゝ鳴くを
三羽生け捕らんを、
それらラインの河波に浮きて歌へ、
我が殺さるとよ、けふにも。
(ハーゲン)
そは哀れなる狩りともなれ、
獲物無き者みづからが
潜める獣に狩られては矣。
(ジークフリート)
喉や渇きぬる矣。
(ハーゲン)
我が聞ける、ジークフリート、
小鳥の歌ふを
言葉として聞くと。
そはまことなるや。
(ジークフリート)
そのさへづりには
久しく耳傾ぶけず。
飲め、グンター、飲めや矣。
汝(な)がおとゝの差す酒を矣。

















