審判奇譚 第八章32 | 神鳥古賛のブログ

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古典。読めば分かる。

 さても、さ、したりなば、かくて訴への事、それまでより思ひ長閑まりて物せらるべきとなん、しか思ふがあるべき事なれ。

 

何んとなれば、弁護の士に口入れさせんと頼むは、訴への事の重荷を、己が身より、わづかにまれ除かしめんが為なる。

 

しかるを、あるべきにや、およそ逆しまなる事の出で来たりしか。

 

汝しに口入れさせんと頼みてより此の方、それまで思ひも寄らざるほどに、訴への事に心を懸けざるを得ずなりしはや。

 

己れのみなりしきはには、己が事のわづらひに何らの手もせざれ、さりとて、訴への事に思ひ及ぶ事、およそ無かりしか。

 

しかるを、弁護の士添ひたらば、かくて身の備へも調ひ、さてこそ、何ぞや手を入れられん事もあるべうこそあれ。


今や遅しと、いや頻きてふくらむる心ときめきを抱きつゝ、我れ、汝しが手配り為さんを待ちゐたりしが、あはれ、かたも無し。


如何にも、汝し、裁きの司の話を、様ざま語らはせ給へれ、こは、余のひとよりは得難き内うちの報せなりしやも知らず。


しかれども、事こゝに至りては、さばかりにては、はや、事足らざれ。


思ふべし、あたかも、訴への事、忍び入り忍び寄るかに、ひたひたと我が身に迫りつゝあればよ。」となん。


K、椅子を突き退け、もろ手を袂に入れて腕組みしつゝ、つと佇ちゐたり。

 


 

 

 

 

 

 

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