審判奇譚 第八章31 | 神鳥古賛のブログ

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古典。読めば分かる。

 「懇ろなる御心づかひ、有り難きかな。」と彼れ云ひ、「我が事のわづらひ、様ざま骨折りを給ひ、汝しにありて成し得る事と、


また、汝しより見て、我れにとり利ありと思はれん事と、これ万づに落ちなく手まはし為されし事、我れも能く知る処なり。


さりながら、我れに於いては、この処、かくては事足らずとこそ見極め果てしか。


さは云へ、汝しの如く、いと年長けて、見知りし事もさはなる御方を向かうにして、我が見立てをことごとく肯へよなどゝ思ふものにあらざるは云ふを俟たず。


覚えず、さる事、為さんとしたりし事、ありしとならば、こはこれ、願はくは赦し給ひねかし。


さはさりながら、汝し身づから申せしが如く、事のほか重々しくあれば、我が見極め果てたる旨に拠らば、


ありしながらにはあらで、更に更に力を極めて、訴へに挑むが要めなるべきはうつなし。」となん。


「申さるゝ事は承りぬ。」と弁護の士云ふ、「汝しは心短きなるは。」と。


「心短きにはあらず。」とK、些か腹立ちて云ひ、はや、さして言葉づかひに心置かずなりにき。


「叔父御と共に、これへ初めて訪なひしをり、汝し、心付きしにやあらん、我れには、訴へ沙汰の如きは、さしたる妨げにては無かりしぞかし。


さこそ云へ、強ちに強ひて思ひ出でらるべう為されずんば、訴へ沙汰なんど、我れ、事と忘れ果てゐたれ。


しかるを、叔父御、汝しに弁護を頼むべう云ひ立てければ、叔父御の思ひを損なふまじと、我れ、さ、したりしなれ。




 

 

 

 

 

 

 

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