日本から戻って初めて見た映画がこれ。やっぱりアメリカは新しい映画、しかも、そんなメジャーじゃない、無名の映画やドラマが見れるからいい。結構掘り出し物がある。

 

 

これが掘り出し物だったかどうかは別として、私としては結構面白く見た。

2014年リリースの映画らしいけど、この映画のことは今まで全く知らなかった。聞いたことないから多分そんなに売れたってわけじゃないんだろう。近頃皆映画を見に行かないので、どの映画が人気で、どれが成功しなかったのかわかりづらいから、実はひそかにヒットしていて、知らなかったのは私だけかもしれないけど。

うちのケーブルは、無料でShowtimeが見れるのだが、そのShowtimeでやっていた。

題のAfflictedというのは、「病に触れた者」と言う意味だ。いつもシンプルな題名に惹かれる。まず題に惹かれて、ポスターに惹かれた。

それを選択して、映画の説明を読んで、旅行中に病気になって、楽しいはずの旅が一気に大変なことになる、と書かれていた。それも面白そう。いったいどんな病気なんだろう?

 

横にRotten Tomatoの評価と、視聴者の人の評価が書いてある。評価はよくないけど、見たら面白かった映画や、お気に入りの映画だったりすることがあるので、評価には惑わされないようにしているけど、近頃あまりにも選択肢があるので、迷ったときは参考に見ることがある。この映画の場合は、題名と映画のポスターを見て迷いはなかったけれど、評価も見ると、Rotten Tomato の評価が83%なので、間違いないだろうと思った。一般の人の評価は57%と多少低いけれど。批評家及び一般視聴者の評価はなかなか厳しくて、70%以上あったら高い方だ。逆に90%台だと、そんなにいい映画なのかと思ってみたら、そうでもなかったりすることもある。90%台の映画は有名な映画なので、ほとんど見ているけれど。同意見の映画もあるし、同意できない評価もある。

50%台はざらにあって、見てみたら結構面白かったということもある。ずっと前、若いときに見て強く印象が残っている映画に40%台の評価がついていたりして、夢が壊れちゃったり。そういう時は評価を見なければよかった、と思う。と言っても目に入ってしまうけれど。

30%台以下だと、題とポスターの雰囲気に惹かれても見ない。ひどいので、10%台もあって、そういうのは見ない。そういう場合、せっかく作ったのに、撮影した人たちに気の毒だと思う。そういう意味では、こういう評価ってない方がいい場合もあるな、と思う。10%台なんて書いてあったら、誰も見ないだろう。この評価がなければ、映画の題名とポスターや、出演者を見て、惹かれてみる人もいると思う。映画の製作者にとっては、大迷惑なシステムだ。

 

さすがBack to the Futureは97%、94%と評価が高いけれど、若い人なんかは、この評価を見て映画を選ぶことが多いと思う。けれど97%という完ぺきに近い評価を得るほどいい映画か、映画が上映されているときは生まれていなかった若い人たちがこの映画を見て、果たして97%と言う評価を付けるだろうか。私は面白かったけど、97%かと言われたら、どうかな?と首をかしげてしまう。

 

この映画は、気の毒なので題名は伏せておくが、こんな評価を見たら、誰だって見る気がしないだろう。

 

この映画の話に戻ると、最初はドキュメンタリーだと思った。主人公はアジア人の男性で、小さい時から旅行好きの両親によく旅行に連れられて行って、成長すると本人も大の旅行好きになり、学生時代もよく旅行していた。卒業して社会人になると、IT企業に就職したが、激務で全く旅行することができなくなってしまった。このまま人生が終わってしまうのは嫌だ、と1年休職して、世界旅行を計画する。この時、旅のお供に、小さいときからの親友で、ドキュメンタリーカメラマンに一緒に来てもらうことになった。なので、この映画は最初から全部インタビュー形式。中学生の時から、友だちが撮影した素人映画全部にこの主人公は出演している。この映画は最初からドキュメンタリー形式で、友だちが中学時代から撮影した映画の説明から始まって、どうして今回の旅行を計画することになったのか、主人公にインタビューして、それを編集したものだ。

 

二人は旅に出た。

 

この時点では、私はドキュメンタリーを選んでしまったのだと思って、見るのをやめようかと思っていたが、その時主人公が旅行に出かける1週間ぐらい前に体調がおかしくて、病院で診てもらったら脳腫瘍のようなものが見つかって、医者に旅行に行くのを止められる、と言うシーンが出てきて、題名の通りこの人病気になるんだ、と思って、ちょっと面白くなってきたから、もうちょっと見てみようかな、と言う気になった。この病院に行って、医者に診てもらうのも、全部この友人が撮影していて、診断は本人がカメラに向かって告白する、と言う風に撮影されている。だから、ここまで見ても、まだドキュメンタリーだと思ってて、旅行した末の結果がどうあれ、ドキュメンタリーだったら途中でやめるかも、と思いながら見続けた。

医者に、旅の途中で症状が悪化するかもしれないから、旅にはいかない方がいい、と言われた、と主人公がカメラに向かってがっかりした顔で言っていた。「でも、かえって死ぬかもしれないなら、ぜひ行きたいと思う。旅行に行きたかったのに病院に入って、最後そこで死ぬのは嫌だ。外で、好きなことをしているときに死にたい。」と言って二人は旅に出る。友達思いの友人は、ほとんど毎日ビデオを撮り、YouTubeか、フェイスブックかなんかに乗せて、家族や知り合いが見えるようにしている。見た人の、「頑張ってね」とか、「よかったね。」「勇気あるね。」などのコメントも映している。私も思わず、YouTubeに行ったら、このビデオが見れるのかと思ったほどだ。

この二人は最初はスペインに到着。旅の醍醐味を満喫。主人公の男性は特に体調に不調はなさそう。夜になるとバーに行った。主人公の男性に近寄って、やさしくしてくれる女性がいて、二人はお酒を飲んで、ダンスしたり、キスしたりし始めた。こんなところまで見たくないよ。どうでもいいわ。脳腫瘍の人が、人生最後の旅を楽しむドキュメンタリーなんて、見たくないわ、悲しくて。もうそろそろやめよう。ビデオを撮影している友人が、やった、と言わんばかりの顔がドアップ。

次の朝のシーン。二日酔いらしくて、主人公の男性がなかなかベッドから起きてこない。女性はとっくにいなくなっている。だらしないなあ、起きろよ、いいレストラン見つけたんだ。ブランチ食べよう。主人公の男性はだるそうにベッドから起き上がって、「昨日何があったのか全然覚えていないんだ。」などとつぶやいている。「へえ、もったいない。何も覚えてないのか?」などと話し合いながらレストランに行った。

レストランは海が見えて、パティオで食べられるすてきなところ。友人は感動してビデオ撮影しまくり。でも、友人が撮影する主人公の顔は青ざめて、体調悪そう。病気の症状が出てきたのか?ちょっと心配。私も少し惹きこまれていく。そこでおいしそうな食べ物が運ばれてきて、二人とも食べ始める。しばらくすると、主人公の手が止まり、お腹を押さえる。そこで、オエッ、と言い始めて、ド派手に胃の中のものを全部勢いよく吐いたのだ。胃袋の中だけではなく、体の中に入っていたすべての物を吐いたぐらい、大量にレストランの床にぶちまけた。友人は動揺しているものの、ビデオを撮影し続ける。レストランの中にいた他の客たちが悲鳴を上げた。そのぐらいひどい吐き方だった。主人公は周りを気遣っている場合じゃなく、お腹を押さえながら、床にうずくまっていて、まだ吐き足りないみたいに嘔吐の動作を繰り返している。何も出ないのに、オエー、オエ―と苦しそうに言っている。パニックした友人が、ここから出よう、と言って、主人公を抱きかかえてレストランを足早に出た。画面はしばらく真っ黒。

このあたりから、この映画はドキュメンタリーじゃない、と思った。いくら脳腫瘍だと言っても、あんな吐き方は尋常じゃない。人間的じゃない。

この後からは、どんどん引き込まれて、一気に見た。ブログも書こうと思った。

 

この映画、主人公が特にハンサムでもない、平均的なアジア人。友達もハンサムでも何でもない、普通の、ちょっとオタク系白人。それでドキュメンタリーみたいに思うから、それだけで最初にちょっとだけ見てもう見るのやめた、という人が多いのではないか。ドキュメンタリーなら、この有名でも何でもない、普通の人たちが主人公と言うのは納得できる。そのうち一人が死にそうな病を抱えて、死ぬ前に親友と世界旅行に出る。結構ありそうな話。だから一般視聴者の評価が低いのかもしれない。最後まで見なかったとか。

でもドキュメンタリーじゃなかった。

 

今でも印象に残っているのが、最後に主人公が、「なぜ僕を選んだんだ?」と聞くと、相手が「だって、あなた死にかけてたでしょう?だから、私としては命を救ってあげたつもりだったの。」と言った部分だ。こんなことになった最初から、主人公も見ている人も、一番知りたかったのは、この答えだった。

 

見ていくうちに、なぜポスターの頭の後ろがあんな模様になってるのか、よくわかった。

あれは主人公の男性の後頭部だ。ちょうど腫瘍ができていた部分だ。

かなり残酷なシーンが出てくる映画で、最初のゆっくりとした、平凡で、つまらない雰囲気とは打って変るのがこの映画の面白い部分だと思う。

作風は、今流行りの、本当なのか、作り物なのかわからない映し方で、私なんか何も知らないで見たので、まんまと騙された。