たとえてみよう | かんちくログ

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1発屋どころか、まだ1発も打ち上がってませんが。勝負は、これから。

ここに一匹の肉食獣がいるとする。とりあえず、チーターにしましょうか。チーターには毎日そこそこ満足できる食事が与えられている。望めば好きなものも食べられる。玩具もあって、遊び相手もいて、それなりに充実した日々を送っている。

そんな状態のときに、チーターの横をバッファローがてくてく歩いていたとして、どうしてわざわざ命がけでバッファローを狩ろうと思うだろうか。下手したらこっちが死ぬし。いやあもう狩りとかいいっすよ。今のままで。

…と寝ていたら、もはや狩人としてのアイデンティティはなくなり、チーターはただの家猫になるのであった。


何の話を延々としてるかというと、

・チーター=わたし

・バッファロー=小説

・締切=バッファローを狩らないと自分が殺される的な何か

小説書くのしんどいよね、という話でした。締切ないと書けないのも当然なのよ、と。この話を他の人にしたら「バッファローかよ!」と突っ込まれた。「でかいな!」うん。でかいのよ。とてつもなく。億劫どころの騒ぎじゃない。

N-1グランプリで審査員作家にインタビューしたときに、小林泰三さんも遠藤徹さんも机に座ったら書ける、と言っていたのが印象的だった。おふたりとも他にお仕事もお持ちで忙しいはずなのに、いつ書いているんですか?ってきいたら、1時間とか2時間とか空き時間見つけて…って。構想とかは、いつ考えるんですか?ってきいたら、考えないって。1行書いたら次の1行が出てくるって。都築由浩さんは、小説は書かずにはいられないから書くんだって。

さすがです…(;_;)

あまあまやね。わたくしは。新人作家という看板に甘えるのも、もうそろそろ終わりにせねばならぬ。1冊しか出せてないのでベテランではないし、新人というにはデビューして3年経つし、「若手」という冠も似合わない年になり、その間にもぞくぞくと新人作家は誕生し…。限られた紙面と本屋の棚を争う弱肉強食な世界ですよ。

わたしはライバルがいない狩場を開拓して生き残っていく戦略を取っている気がする。普段まったく小説を読まない人たちに、いろんな活動絡みで興味を持ってもらって、小説を読んでもらって面白かったって言ってもらって生き延びている。わたしの気が多い性格と、キャラと、本流のとこからお声がかからないという条件があいまって、たまたまそうなっている気がするんだけど。でもこれって、結構戦略として「あり」な気がする。

だって小説好きの人たちはたくさんの作家の中から一冊を選ぶわけだけど、小説好きじゃない人は下手したらわたしの本しか読んだことない人もいて、好きな作家は寒竹泉美って言ってくれちゃうわけで(ほかにもいっぱい面白い作家いるのに!嬉し恥ずかし!)、そして、この世の中、小説が好きで年に何冊も買う人より、そうじゃない人のほうが多い。小説好きじゃない人の方がたくさんいる。本なんて何年も買ったことがない人がわたしの本を読んでくれたとしたら、すごいことだ。自分の本の読者にできるポテンシャルは大きい、気がする。

小説に興味がない人がわたしをきっかけに小説に興味を持ってくれて、他の小説も読むようになって、小説を楽しむ人が増えたらみんながハッピーじゃないですか。ね。というわけで、わたしはサバンナを出て、変な場所で狩りを続けるのです。狩りというか農耕? せっせと小説の面白さを広める種をまくよ。

写真は土曜日のN1グランプリの審査員紹介+インタビューの様子。いろいろためになる話を聞くことが出来ました…が、おそらく一番聞きたかったであろう小説書きのみなさまはN-1グランプリの執筆にいそしんでおりました。プログラム的にこのへんが難しいですね。


photo:hitotoseさん

N1の様子を優勝者の人がレポートしてくれました。こちら

ノベルなびのフェイスブックページにも写真がいろいろ掲載されています。

本当に楽しいイベントでした。参加してくださった方、ありがとうございました。