激しく降り続く雨の中、三井記念病院の循環器外来へと行って来た。
息切れは容赦なく肺を圧迫し、不整脈の心臓が胸を突き刺すように踊り狂っていた。
岩本町駅から病院までの道程がこれほど遠くに感じたのは初めてだった。
雨はアスファルトを叩きながら、更に細かく四方八方に飛沫を撒いている。
病院のビルが視界に飛び込んで来ると、頭の中を「入院」の二文字が飛び交った。
身体に異変を感じたのは11月2日の入社日。
会社にいる間は特に異常を認める事はなかったのだが、会社が退け、家に着き靴下を脱いだ時だった。
靴下の痕が食い込む程にくっきりと輪郭を描き、ひと目で「浮腫」が確認出来た。
「えぇ…、ま、まさか、やばいよなぁ」
言い知れぬ不安が身体全体を包んだ。
同窓会の直後が初出勤でもあったし、疲れがWパンチで身体を襲ったからだろうとその時は思った。
事態が更に深刻になろうとは全く予想もしていなかったからだ。
3日は祝日だし、一日ゆっくり休めば直ぐに回復するだろうと高をくくっていたのである。
浮腫みは消えたものの、最も気をつけなければならない「体重」が徐々に増え始めていたのである。
「3キロ体重が増えたら病院へ逆戻りですからね…」
半年ほど前の退院時に言われた言葉が重くのしかかってくる。
退院後、食生活を大幅に変更し、自分なりに努力をして来た事は皆さんもご存知の筈。
何ゆえ、この大事な時期に来て身体に異変が起こり始めたのだろうか。
確かに同窓会の疲れもまだ残ってはいたが、それは心地良い疲労感となってわたし自身もその余韻を楽しんでいたではないか。
心電図、レントゲンの所見を見ても特に際立って悪化している様子もなかったが、明らかに身体が感じる異常は「心不全」だった。
唯一異常値と思えるものは「血液検査」の結果だった。
明らかに薬が利いておらず、尿量は極端に少なくなっていた。
僅か数日の内に体重は3キロ増え、歩くだけでも息切れは酷く横になって眠れない日々が続いていた。
仕事が出来ないことへの焦りも病態に影響し、気分も深く暗い水の底に沈んだようだった。
取り合えず、薬の量を2倍に増やし様子を見ることにしたが、もしそれでも良くならないようであれば、入院して一気に元の良かった状態に戻すという事になった。
この心臓では働くことすら出来ないのであろうか?
わたしは健康で丈夫な心臓がどんなものかを知らない。
もし夢が叶うとするならば、一時間でもよいから健康な心臓の感触をこの肌で味わってみたい。
漲る健康な鼓動をこの耳で聴いてみたい。
