銃社会とアメリカの悲劇。 | プールサイドの人魚姫

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うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。

 


銃 アメリカ全土を震撼させた銃乱射事件。死者は過去最悪の32人が無意味な銃弾の下に散った。このような悲劇が度々起こる背景にはアメリカの銃社会が大きく影を落としている。アメリカの歴史を振り返って見ると、遙か遠くの記憶をたぐり寄せねばならないだろう。大海原を渡り一人の男が謎に満ちた大陸を発見した。未知の世界には当然危険も多く潜んでいる。広大な土地で先住民族のインディアンと出会い、大いなる発見と友情の印しを結ぶに至ったようにも見えた。しかしこれからが悲劇の始まりだった。新大陸を発見し、数多くの土産を持って国に帰った男を待ち受けていたものは、狂気乱舞する王様と野望渦巻く未開の土地に対する羨望の眼差しであった。それ以後多くの白人たちがわれ先とばかりに帆船を率いて新大陸に渡ることとなる。その先にどんな悲劇が待ち受けているとも知らずに。土地を手に入れ開拓をし、様々な動物たちや、インディアンの部族と出会う事になるが、言葉が通じない為場合によっては避けて通れぬ血が流れて行った。夜ともなれば、巨大な熊や狼の群れに恐怖を抱く。誰も助けてくれない未知の世界で、自分を守るのは自分自身だった。そして最も役に立った物が銃である。銃の歴史がこの大陸を変貌させて行った。長きに亘るインディアンとの戦いに終止符を打ったのも銃である。銃は進化し、やがて強大な兵器へと姿を変え、人間の想像を遙かに超える物となった。一度手に入れた武器と野望はそう簡単に捨てられるものではない。そして自由の国アメリカが手に入れたもの、それは余りにも代償が大き過ぎた。一人の青年がもたらした恐怖の瞬間だった。鳴り響く銃声と逃げ惑う学生たち、大学構内が戦場と化した。狂気に走った青年の内部で一体何が起こったのか。血の通った人間のやる事ではなかった。彼は狂った妄想の中で生きていたのかも知れない。母国「韓国」から遠く離れ、アメリカの地に夢を抱いて渡ったチョ容疑者。本人も自らの手で命を絶ってしまった為、この事件の詳細については彼がこれまでに至った道程を紐解いて、彼の内部に迫るしか事件の真相を知る鍵はないだろう。チョ容疑者については様々な憶測が乱れ飛んでいるが、彼を理解出来る人物はいない。アメリカには大きな夢もあるが、それ以上に暗雲が立ち込める部分も多い。人種差別もその一つだろう。韓国人だった彼が差別を受けていたかは知らないが、白人至上主義がその土地によってはいまだに根強く残っているのも事実。人種の坩堝で耐え切れぬ威圧感と疎外感を抱きながら、それは時間とともに一人の青年を狂気へと導いて行ったのかも知れない。銃を手に入れるにはさほど難しくないアメリカ。このような社会で生きて行く為には、それなりの覚悟が必要だろう。銃の規制だけを厳しくしても、この国には更に深い傷が歴史と一緒に見え隠れしている。日本国内でも同時期に悲惨な事件が起きている。2発の凶弾に撃たれ政治生命を絶たれた長崎市長。金さえ払えば一般人でもそれほど苦労せずに銃を手に出来る世の中。市長を撃ったのは山口組系の暴力団員だったが、アメリカ社会の歪みが日本にまで及ぶのも時間の問題かも知れない。