満天の夜を抱いて一羽のフクロウが啼く。(動画) | プールサイドの人魚姫

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うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。

フクロウ小学校低学年の時だった。家の庭に樹齢600年を越す大木があった。庭は広く様々な種類の草木が生い茂り、夏ともなればまるで何処かの山奥にでもいるような感覚を味わう事が出来た。色んな種類の生き物が生息し、昆虫採集や野鳥の観察などは自分の家で遊びながら体験出来たが、一度だけとても恐い思いをした事があった。旧家なのでトイレは別棟になっており、屋敷から10mほど離れた所にあった。夜中にトイレに行きたくなり、障子戸を開けると外は満天の夜。無数の星が光輝き、空は生命で溢れ返っていた。そしてその中心に満月。月の光を浴びて浮かび上がる樹木たち。その月を突き刺すように聳え立つ大木。その直ぐ横にトイレがあった。この大木には主が住んでいた。一羽のフクロウである。姿は見た事がないが樹木のかなり高い辺りで「ホーホー」と啼くのである。幼かった私はその声に怯え、ついにトイレまで行けなかったのである。その大木は近所の人たちから「雷が落ちると危ない」と苦情が寄せられ切り刻まれてその一生を終えてしまった。それ以来あのフクロウの啼く夜は来なかった。