SALAAR
当ブログでもRRRを皮切りに少ないとはいえインド映画をレビューしてきたが
今回レビューするのは先週から上映しているSALAARという映画。
予告映像の時点ではかなり面白そうだったが、実際は…
ちなみにSALAAR(サラール)とはテルグ語で将軍という意味らしい。
●入場特典
この手のポストカードでは珍しく両面印刷の物となっていて
主役のデーヴァの写真が印刷されている。
●あらすじ
カンサールという架空の国に住む主人公デーヴァと王族で親友ヴァラダは幼い頃に
腹違いの兄弟にいじめられ王族の証?である鼻輪のアクセサリーを奪われてしまう。
デーヴァはそれを取り戻すために子供でありながら闘技場で最強の大人に
戦いを挑むことになるが戦略勝ちをし無事に取り戻す。
それからしばらく後、部族間の対立によりデーヴァは家族もろとも殺されそうになるが
ヴァラダが自らの領地を犠牲にデーヴァ一家を助け、国を脱出する。
その際デーヴァはヴァラダに必要になったら呼んでくれ、助けに行くと誓う。
そして25年後、王族争いに巻き込まれたヴァラダは他の者が他国の傭兵部隊を雇う中、
たった一人デーヴァだけを呼びに向かう…
まぁ、冒頭に貼った公式の予告映像を見れば大体わかります。
●みどころ
・デーヴァ
主人公のデーヴァは一騎当千というにふさわしい強者で
握った鉄パイプに手の跡が残る、麻薬組織のマフィアたちを一人で無双などなど
命の恩人であるヴァラダを助けるためにこれでもかと暴れる。
ただ、それがすべてではなく己の正義のために戦うこともあり
それが原因でヴァラダの立場が危うくなったりするなど
必ずしもヴァラダのためなら誰でも殺すという人物ではない描かれ方をしている。
・2部構成のストーリー
あらすじに書いた子供時代+現代部分のヴァラダを探す1部と、
上記にも書いたヴァラダの王族争いの2部で今作は構成されて、
部ごとにサブタイトルが入る演出があってわかりやすい。
●物申したいところ
自分のレビューだとあまりネガティブな事は書かないが今作は
あまりよくない点が多かったのでちょっと書かせてもらう。
まず第一にこのSALAAR、後編があります。
要するに今作はいうなれば「SALAAR Part1」といったところで
上映時間3時間近くあったものの完結しませんでした。
そのためめちゃくちゃ中途半端なところで終わります。
以前レビューしたバーフバリという映画も前後編構成で
どちらも3時間ほどだったのでそれと同じといえば同じですが
あちらと違ってSALAARはタイトルからして単体で終わりそうな感じで
心の準備がまるでできてなく唐突にエンドクレジットが流れ始めるので
「え?…え?」と困惑。鳩が豆鉄砲を食らうとはまさにこの事。
そしてストーリー面でいうと中途半端に終わるので現状「このキャラいる?」
と思ってしまうキャラクターがいてストーリーが難解になってしまっている。
長くなるのであらすじやみどころに書いてないがある女性がインドに入って
組織に狙われて誘拐されかけ、助けられた先でデーヴァに出会って…
という結構長めのお話があるのですが中途半端に終わってしまっているので
「結局この人なんで狙われたの?」と何もわからないまま映画が終わっている。
多分後編も見れば全部わかるのだろうけどマジで何もわからない。
上記でも述べたバーフバリは同じく前後編でどちらも3時間だったが
前後編のキリが非常によく前編では主人公の出生の謎や過去の因縁が明かされ
後編ではこうなってしまった両親世代の過去の話と軍勢を引き連れ
暴虐の限りを尽くす王を打ち倒す話にきれいに分かれているので
前編だけ見た時の理解度が高くすっきり感が段違いだった。
この映画を見た人のレビューの中には「3時間かけた予告編」と
表現している人もいてこの表現はなかなか良いものだと思っている。
3時間かけてるのにわかることのほうが少ない。
そして戦闘面で言えばスローをあまりにも多用しすぎて冗長過ぎる点
人間一人を殺す毎にノルマの如くスロー演出が入るため
見ていてあまりにもテンポが悪く爽快感がほとんどなかった。
いや、かっこいいんだけどね?かっこいいんだよ?
でもそれをほぼ毎回されるとうっとおしくてしょうがない。
ハリウッド映画などではここぞという場面をスローで決めたりしているので
そういった点ではセオリーにとらわれない映像作りをしているということで
ある意味プラスになるかもしれないがマイケル・ベイの20倍くらい
スローを使うもんだからマジでテンポが悪い。
そして設定が現代なのに使ってる武器が基本的に拳や鈍器や剣。
予告映像ではミサイルでトラックがぶっ飛ぶシーンがあったので
以前レビューした「パターン」って映画のようなものかな?と思ったが
銃を使ったのはほんの一瞬だけであとはずっと接近戦一辺倒。
バーフバリという映画はいわゆる神話的なものだったからそういうのは理解できるし
なんなら大群を引き連れて戦うので主人公以外にも視点が移り
投石機などの古代兵器が使われたりと一辺倒にならない工夫が施されてたし、
インドがイギリスに植民地にされていた時代のRRRですら
銃を多様して最終決戦で弓や槍などを使う演出になっていた。
なんで武器の選択肢がたくさんある現代で戦い方が一辺倒になってしまうのか。
しかもずっとデーヴァにカメラが向けられているので
上記のスロー多様と合わせて「かっこいいんだけど、同じ光景が続くな…」感が
非常に強く退屈とまでは言わないが…といったところ。
そしてインド映画的に最大の問題点がダンスシーンが無いという点
ダンスシーンが多すぎるのも問題だが今作はダンスシーンが一切ない。
歌こそはあるがダンスシーンが一切無いのは個人的には前代未聞で
そのため、王族争い編に入ってからはずっと同じような絵面が続き
メリハリが全然なく暗いシーンがひたすら続く。
RRRは言語が通じないイギリス人に肉体言語(ダンス)でわからせるシーン、
バーフバリでは神話的なストーリーだったのでミュージカル的に、
パターンではワイルド・スピード的に場面切替時につかわれてたりと
ON/OFFのメリハリがしっかりしていた。
特にRRRはダンスシーンがダントツで少なく劇中1回とエンディングで1回の
合計2回だけだったがあまりにもパワフルでもっと見せてくれ!と思ったほど。
これこそがインド映画の最大の特徴ともいえるが先ほども述べた通り
SALAARではそれがまったくなかった。
そのため複雑なストーリー、かっこいいが絵面の変わらない戦闘シーン、
3時間もあるのにメリハリの無い映像が組み合わさって
眠気との戦いに発展しました。
以上、SALAARでした。
物申したいところで書いた通り今まで「クソ映画」とこき下ろした映画ほど
ひどい映画ってわけではないが3時間かけてこれ?感が強く
何度もあげたRRR、バーフバリ、パターンは本当にバランスの良い映画だったんだな
と改めて再認識した。
「マジでインドではこの映画が大ヒットしているのか?ダンスもねぇぞ?」
と疑いたくなる1本だった。
感想らしい感想はすでに書いてしまっているのでもう書くことがないが
現状ではいずれ公開されるであろう後編を見ないと全然わからないので
モヤモヤ感がすごく、おそらく公開される時期になると
「SALAARの内容忘れたわ…」となりかねない恐怖もあったりする。
また3時間もこの映画見たくないぞ…
マジでこの映画最高に面白かったんだなと。
レビューはこちら。
レビュー記事では控えめだが、同じ年にトップガンがなければ
個人的に2022年最高の映画だった。
物申したいところに書いた通り神話の作品ではあるものの
カメラが戦場の様々な場面を写したり、古代兵器が登場したりと
剣などの武器一辺倒の絵面にならない見ていてハラハラする工夫が施されていた。
レビューはこちら
ミッション・インポッシブルなどのスパイ映画のお約束もありつつ
インド映画らしい画作りもされていて面白かった。
レビューはこちら