はちどり(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

はちどり(ネタバレ)

はちどり

 


原題:벌새(英題:House of Hummingbird)
2018/韓国、アメリカ 上映時間138分

監督・製作・脚本:キム・ボラ
撮影:カン・グクヒョン
音楽:マティア・スタニーシャ
美術:キム・グナ
編集:チョ・スア

出演:パク・ジフ、キム・セビョク、チョン・インギ、イ・スンヨン、パク・スヨン、キル・ヘヨン、ソン・サンヨン、パク・ソユン、チョン・ユンソ、ソル・ヘイン、ヒョン・ヨンソン、パク・ユニ、チョン・ギョンソプ

パンフレット:★★★(600円/コラム2本に監督インタビュー収録。裏表紙のはちどりの絵が好き)

(あらすじ)
94年、空前の経済成長を迎えた韓国。14歳の少女ウニは、両親や姉兄とソウルの集合団地で暮らしている。学校になじめない彼女は、別の学校に通う親友と悪さをしたり、男子生徒や後輩の女子とデートをしたりして過ごしていた。小さな餅屋を切り盛りする両親は、子どもたちの心の動きと向き合う余裕がなく、兄はそんな両親の目を盗んでウニに暴力を振るう。ウニは自分に無関心な大人たちに囲まれ、孤独な思いを抱えていた。ある日、ウニが通う漢文塾に、不思議な雰囲気の女性教師ヨンジがやって来る。自分の話に耳を傾けてくれる彼女に、ウニは心を開いていくが……。(以上、映画.comより)


予告編はこんな感じ↓

 

 


100点


僕は「鳥」という生き物がそこそこ好きというか(見るのも飼うのも食べるのも!)、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」で鳥を扱った回は永久保存版にしてましてね(微笑)。当然ながら昨年の「ハチドリ怪事件 消えた卵とタカの正体」も楽しんで観ているものの、正直、本作については、タイトルこそ「はちどり」ながらも、どうせ「韓国の少女が生きにくかったりする話」なんでしょ? 基本的にここは「元グリーンベレー所属の老人がメキシカンマフィアを自宅で皆殺しにする映画」を好むマチズモ全開なブログなのでね(苦笑)、そんな作品を観る暇があったら、「ハチドリの蜜を巡る戦い」とかジェイソン・ステイサム主演の「はちどり」でも観ますよって話。

 

そんなワケで、何の問題もなくスルー予定だったんですけど、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」「ムービーウォッチメン」の課題映画になった…ということで! 7月6日(月)、職場で仕事をしてから、オープンしたばかりのTOHOシネマズ池袋にて、シネマイレージ会員割引を利用して鑑賞いたしました(その後、「三大怪獣グルメ」「ハリエット」をハシゴ)。「僕の映画」でしたよ。

 

 

当日のgif。3番スクリーン、20人ぐらいはいたような。

 

 

もうね、素晴らしかったです。今年は僕的に「彼らは生きていた」「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」がすでに「100点の映画」になっていて、これ以上は増えないと思っていたんですが、ここにきてまた生涯ベスト級の1本がきてしまったから、今年はコロナ禍だけでなくアップリンクのパワハラ問題などもあって映画界がいろいろと大変な状況ながらも(汗)、良い作品が豊作状態になっている印象。ただ、「誰かと語り合いたい」というよりは、「自分の気持ちを書き残しておきたい」というタイプの作品だったので(だって泣いてしまうから)、ここにね、拙い文章力ですが、自分なりにダラッと感想を書き残しておきますね。

 

 

なんとなく劇中で主人公がカラオケで歌う「愛はガラスのようなもの」を貼っておきますね↓

 

 

 

本作を観た人が「チガウ!(・д・) チガウ!」とカタカナで抗議してきそうなほど雑にあらすじを書いておくと、1994年の韓国を舞台に、団地で暮らす14歳の少女ウニが、家父長制全開で自分を放置する家庭にイライラしたり、兄に暴力を振るわれたり、ボーイフレンドのジウンや後輩女子のユリとデートをしたり&別れたり、親友のジスクとケンカ&仲直りしたり、耳の後ろにしこりができて手術をすることになったり、金正成が死んだり、自分のことを好きになれなかったりする中、漢文塾のヨンジ先生と交流することで心が救われましてね 川´_ゝ`)(´∀`=し ホッコリ あーだこーだあって、漢文塾をサラリと辞めてしまったヨンジ先生から小包(貸していた本と贈り物のスケッチブック)&手紙が届いて喜んでみたものの、先生ったらその直後に聖水大橋の崩落事故に巻き込まれて死んでいたんですが、しかし。手紙に書いてあった「世界は理不尽なことばかりだけど、不思議で美しいのヨ 川´_ゝ`)」(※注 うろ覚えです)という言葉を胸にしたウニは“強く生きられそうなオーラ”をまとっていた…って感じで、映画は終わってたんじゃないかしらん。

 

 

なんとなく劇中でウニが「カップル120日記念日ソング」として録音する「カクテルの愛」を貼っておきますね↓

 

 

 

「ユリイカ 2020年5月号」やらパンフやらに載っていた監督インタビューによると、主人公ウニは、キム・ボラ監督の分身的存在みたいでしてね。着想から映画化まで7年かかったという本作は、長編デビュー作とは思えないほど物語も映像も豊かでビックリしました。鑑賞中は、自然で見事な登場人物たちの演技や万引き&仲違い展開などは「わたしたち」を連想したし(特にケンカ後の「ごめんね、あの時、すごく怖かった」「私を捨てたと思った!」のやり取りは「友だちになれる、何度でも!(iДi)」と涙が噴出したッ!)、「1人の少女が覚悟して生きる」という部分や「背中」を映す演出は「冬の小鳥」を思い出したし、ところどころ情景を客観的に切り取る撮影や「時代が子どもに与える影響」とかは「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」っぽいと思ったし、「女性監督が自分の少女時代を描きつつ、その時の社会情勢も映していく」という部分は「幸福路のチー」…ってな感じで、前に観たさまざまな作品を思い浮かべたんですけれども。とはいえ、「“14歳”を美化も否定もせずに真っ直ぐに“女性目線”で捉えた青春映画」として唯一無二の作品なんじゃないかと思ったり。

 

 

役者さんたちの演技は本当に素晴らしくて、特にウニ役のパク・ジフは見事のひと言。

 

もちろん監督の指導もあるんでしょうけど、僕的にはすっかりストライダム気分でしたよ(「範馬刃牙」より)。

 

 

つーか、すでに宇多丸師匠が「ムービーウォッチメン」で絶賛されているし(「手を見る演出」とか全然気付かなんだ (´Д`;) サスガ!)、ネットでは「名作認定!m9`Д´) ビシッ」的なレビューが溢れているんでしょうから、細かいところは置いといて(そもそもよくわからないし…)、とりあえずなぜ僕が「僕の映画」だと感じたのかを書きますと、その理由は2つあって。1つは、ウニのような窮屈さを僕も感じていたから。いや、ハッキリ言って14歳の時は「異性と付き合ったこと」なぞありませんでしたが(汗)、あの家父長制全開の家庭の窮屈感はモロだなぁと。最近の僕は自分の娘(現在8歳)を育てることで「過去の自分の育てられ方」を振り返る機会が増えていて。正直、あらためて怒りが込み上げてくることも少なくなくて。


本作は、父や兄のマッチョな部分だけでなく脆さも描いていたあたりには監督の“フェアさ”を感じたものの(要は「社会がいけない」的な? 自殺した伯父も父権主義社会の落伍者なんだろうし)、とは言え、本作のウニを観ていると「生きづらかったなぁ (ノω・、)」と当時を思い出させられることしきり。まぁ、僕の場合はあくまで「男」目線ですが、結局、「男」という生き物は「男らしさ」によって「過去の加害された記憶」とかを「ああいうことがあったから強くなれた」なんて美化しがちだけど、とはいえ、「それはそれ」として、僕はしっかり傷ついていたんだよなぁ…なんてね。あと、いまだに何かと自分を好きになれないのでね、そういう部分もちょっと“14歳の少女”に感情移入しちゃったりしましたよ、もうすっかり47歳なのに… ( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` ) 47ナノニネー

 

 

ジスクがゴルフクラブで殴られた話とか、普通に地獄ですよね。

 

 

そしてもう1つの理由は、ヨンジ先生にグッときたから。本作でウニのメンター的な役割を果たす彼女ですが、彼女自身も過去に何かあって挫折した感がムンムンでしてね。でも、悩みを持つ少女に寄り添える優しさと強さ…。本作のラスト、ヨンジ先生を失いつつもウニが前向きになれるのは、やはり「愛された」という確信をやっと手に入れたからだと思うのでね、僕も妻子にはしっかり「愛してる」アピールをしようと気を引き締めただけでなく。そりゃあ僕も未だに悩み多きエブリデイですけれど、とはいえ、これもまた「それはそれ」として、何らかの機会で自分よりも若い人たちと接する時は対等に接するのは当たり前として、ああん、何かと「僕ガー、僕ガー!ヘ(゚∀゚*)ノ ガーガー」と自分語りしがちでしたけど(汗)、もっと温かく見守ってあげたり、むしろもっと向こうの話を引き出してあげるべきなのではないか、もうすっかり47歳なのだから… ( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` ) 47ダモノネー 

 

 

ヨンジ先生役のキム・セビョク、素晴らしかったです。

 

 

つーか、基本的に僕はこういう素敵な先生を見ると、つい「こんな先生がいたのなら… (ノω・、)」と思っちゃうタイプなんですけど、今回は逆に「ヨンジ先生みたいになろう!(`・ω・´) キリッ」とスムースに思えたのは、彼女と“心の支え”にしている言葉が同じだったから。「よく知らないのに同情するのは良くない 川・A・) イクナイ!」という主張も非常に共感しましたが(以前、三宅隆太監督が「怪談新耳袋 怪奇 ツキモノ」の時に語っていた「背負う気、あるの?」と同じだと思った)、彼女が落ち込むウニに伝える「つらい時は指を見て。そして、指を1本1本動かすの。すると神秘を感じる。何もできないようでも指は動かせる」というアドバイスは、すでに僕も20年以上前から実践していたから、我が意を得たり!Σ(°д° ) クワッ! もうね、心底同意したし、危うく「ヨンジ先生はオレなんだ!」とナランチャクロールを実行しそうになったほどだった…って、まぁ、僕の場合は「グラップラー刃牙」からの引用なんですがー。

 

 

喧嘩師・花山薫の握撃によって腕を破壊された刃牙!(「グラップラー刃牙」より)

 

だが、小指と親指を動かして、神経が繋がっていることを確認すると…。

 

即座に戦闘を続行! この場面を読んで以来、辛い時はとりあえず「小指が動くか」をチェックしております。

 

 

ふふふ、多くの人が「どうでもいいな ( ゚д゚)、ペッ」と思いそうな文章を垂れ流しちゃいましたが(苦笑)、その他、思ったことを書いておくと、「チヂミが美味そう(日本で食べるよりもっと庶民的な感じ)」とか「お母さん役のイ・スンヨンの疲れた感が最高!」とか「仲直りした後、ポリポリと部屋で菓子を食うジスクが可愛い」とか「手術後に傷が残るかどうかばかり心配されるウニが可哀相」とか「後輩ユリとのキスは『車輪の下』を思いだした」とか「後輩ユリの『前の学期の話です』が胸に痛い!(´Д`;) イタイ!」とか「母親の介入で逢瀬を台無しにされるジウンが超ダサいけど哀れ…(あそこは何があっても踏み留まる場面!)」とか「チヂミが美味そう」とか「『心が晴れない日は街を歩いてみるの』という歌詞が素敵」とかとかとか。よくよく考えれば、派手な事件が起きない地味な映画ではあるんですけど(後半に事故が起きるぐらいだし)、でも、「僕の映画」だと感じるぐらいに「過去の自分や家族」を重ね合わせたし、何よりも「これからの自分はこうありたい」と考えさせられる作品でしたよ、僕ももうすっかり47歳ではありますが… ( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` ) 47ナノヨネー 何はともあれ、もし未見の人がこの駄文を読んでいるのなら、ぜひ劇場で観てみてくださいな。

 

※追記(7/12)

Twitterで相互フォローしているناكاجيماさんから、キム・ボラ監督の短編「リコーダーのテスト」がアップされているのを教えていただきました。モロに「はちどり」の前日譚的なムードが全開なだけでなく、ベースになった感も非常に強いので(でもウニが小学生なだけに不憫度がバイバイン)、こちらもぜひ観てみてくださいな。オレは泣いたッ!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン!

 

 

 

 

 

 

連想した映画、その1。僕の感想はこんな感じ。
 
連想した映画、その2。僕の感想はこんな感じ。
 
連想した映画、その4。僕の感想はこんな感じ。
 
確かギルティ古川さんがオススメしていたので買った本。とてもタメになりました (o^-')b オススメ!
 
ジェイソン・ステイサム主演の「はちどり」映画。僕の感想はこんな感じ。