幸福路のチー(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

幸福路のチー(ネタバレ)

幸福路のチー



原題:幸福路上 On Happiness Road
2017/台湾 上映時間111分
監督・脚本:ソン・シンイン
主題歌:ジョリン・ツァイ
日本語吹き替え版演出:中村誠
声の出演:グイ・ルンメイ、ウェイ・ダーション、リャオ・ホェイチェン、チャン・ボージョン
声の出演(吹替版):安野希世乃、高森奈津美、LiLiCo、沖浦啓之、宇野なおみ
パンフレット:★★★★(700円/コラム3本の人選がいいし、インタビューもあるし、年表も付いていて良いパンフ)
(あらすじ)
台湾の田舎町で必死に勉強し、渡米して成功を収めた女性チー。ある日、祖母の訃報を受け、故郷である幸福路へ久々に帰ってくる。子ども時代の懐かしい思い出を振り返りながら、自分自身の人生や家族の意味について思いをめぐらせるチーだったが……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




93点


現在、「2019年に観たにもかかわらず感想をアップできなかった映画」が75本もあって。「どうしてこんなことになったのだろう…('A`)」と日々悔やみながら更新しているんですけど、今回は<課題作品にならなかったリスナー枠の映画トップ10>の第3位に入れた作品をアップしておきますよ。12月6日放送の「ムービーウォッチメン」のリスナーカプセルに選ばれた→近頃はリスナー枠の映画も観るようにしている…というだけでなく。前売り特典の「未公開画像の〈チー缶バッジ〉」が可愛かったし、なんとなく良さげなアニメに見えたのもあって、すでに本作の前売り券を購入済みだったということで。12月24日(火)、亀有で朝食を食べた後に柏で「真実」を鑑賞してから、新宿シネマカリテに足を運びまして。12月27日(金)、アップリンク吉祥寺で2回目を観てきました。「『幸せ』ってなんでしょうね… (ノω・、) グスン」と思ったり。


諸々のgif。観客は2日とも15人ぐらいだったような。



「ムービーウォッチメン」のリスナー推薦枠にメールを送った「オムライス食べ太郎」さんが「えっ、そんな話だっけ!? Σ(゚д゚;)」と二度見しそうなレべルであらすじを雑に書いておくと、主人公はアメリカで結婚&働いている30代半ばの女性チー。2011年、祖母の葬式をキッカケに台湾・台北郊外の「幸福路」の実家に帰ってくると、幼馴染みのベティと再会&交流しながら、あーだこーだと「己の半生」を振り返りまして。最終的には、旦那のトニーと別れて、台湾でお腹の子を両親と育てることを決めて、「アタシたちの幸せはこれからだッ!ヽ川`Д´)ノ ウォォォォッ!」ってな調子で終わってたんじゃないかしらん。


チーったら、帰郷とともに「幼いころの思い出」に浸りましてね。


最後はこんな感じで終わってましたよ。



パンフで行定勲監督が書かれていた&放課後クラウドで番組構成作家のギルティ古川さんが指摘されていたことと重複しますが(汗)、要は台湾版「おもひでぽろぽろ」「ちびまる子ちゃん」って書くと、本作のイメージが伝わりやすいかなぁと。ソン・シンイン監督によると、イラン版「ちびまる子ちゃん」と言われた「ベルセポリス」を観て「こういう話なら私にもある!Σ(°д°し クワッ!」と思ったことが本作を作るキッカケだそうで。最初は「ちびまる子ちゃん」のようなテレビシリーズ化を考えていたみたいだし、好きなアニメーターは今敏監督で何度も作品を見直したというから「千年女優」の影響もあるかもしれないし、まぁ、そんな感じそんな感じ(突然、投げやりな文章)。そもそも「作者の子ども時代を振り返るアニメ作品」って、全体的に“似たムード”にはなっちゃうような気もしますがー。


なんとなく「ベルセポリス」の予告編を貼っておきますね↓




もうね、本作はパステルカラー調で素朴なムードの絵柄なんですけど、それゆえに「人間の温かな情緒」が上手に描かれていて、作品全体が「温かく美しい」という印象。そんな作風なのに、ちゃんと時代時代の台湾の情勢が織り込まれているあたりは大人な語り口を感じさせて(少数民族差別とか白色テロとか921大地震とか総統選といった要素がサラリと出てくる)、ちょっと「はちみつ色のユン」(DVDを出せ!m9`Д´) ビシッ)を連想したりもしましたよ(って、両作品とも「ベルセポリス」からの影響なのかもしれませんがー)。ハッキリ言って、本作ではドラマチックなことなんて大して起きないし、親友のハーフ少女ベティも含めて、いわゆる「勝ち組の人生」を送っているワケではないものの、人生の出来事一つ一つをアニメという手法でユーモアを交えながら丁寧に美しく描かれると「“平凡”と言われる人生だって輝いていて価値がある」と思わされてね、スゲー胸を打たれた…って、伝わりますかね。自分に当てはめてみるとさ、奥さんと娘と3人で手をつないで歩いたりするだけでも、それだけだって、何物にも代えがたい瞬間だものね。


本作のビジュアルは「思い出の中にある美しい風景」って感じがしてね。


こんな“アントニオ猪狩の愛人”気分になるシーンが多数でしたよ(「グラップラー刃牙」より)。



つーか、実際に「“平凡”と言われる人生だって輝いていて価値がある」んですよ。好きな人には申し訳ありませんが、もうかなりの年齢でお金もたくさん持っている高須克弥さんとか百田尚樹さんとかが今でも承認欲求をこじらせて差別発言を連発しているのを見ると、そりゃあお金はスゲーほしいんですけど(汗)、「人間は金や地位じゃないんだな」とは思うじゃないですか。本作のチーは「台湾で両親と暮らす」という選択をするワケですが、それって「やっぱり家族が一番!(o^-')b」というオチなのではなく。「幸せ」というのは自分の心の持ちようによって変わってくるものってことなんですよね。そして、だからこそ人生はいつでもリスタートが可能だってことなんですよね、たぶん。エンドクレジットで流れる主題歌「幸福路上 On Happiness Road」の歌詞がまた素晴らしくて(たぶん翻訳も見事なんでしょうな)、特に「幸せは雲間から差し込む光の歌」というフレーズは、僕が3度転生しても書けない美しさであり、心を揺さぶられまくって涙が止まらなかったです。幸せは雲間から差し込む光の歌…。幸せってのは雲間から差し込む光の歌なんでしょうな…(どことなく疲れた雰囲気の文章)。


ジョリン・ツァイさんが歌う主題歌「幸福路上 On Happiness Road」を貼っておきますね↓




その他、思ったところを書いておくと「チーとベティの友情描写が好き」とか「チーが就職する出版社の編集長が飼っていた白猫が可愛い」とか「環境的にあまり恵まれていないムードの地域なのに『幸福路』と名付けられているあたり、『HiGH&LOW THE WORST』『希望ヶ丘団地』と重なった」とか「ソン・シンイン監督、本作のために自分でアニメスタジオを設立したのがスゲェな」とかとかとか。本当にね、「『幸せ』ってなんだろうな… (ノω・、) グスン」なんて考えさせられる、とても素晴らしい作品でしたよ。とりあえず僕は妻子を大事にしようと思います(小並感)。本作はマジで観て損はないと思うので、気になる人はぜひチェックしてみてくださいな。




劇場で売られていたソン・シンイン監督のエッセイ。つい買っちゃったけど、まだ読んでないぜ!



監督が影響を受けたというアニメ。原作漫画(超素晴らしい!)しか読んでないんだよな…。



非常に連想した高畑勲監督作。普通に好きさ。



グイ・ルンメイがファム・ファタールを演じた映画。僕の感想はこんな感じ