ジョーカー(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

ジョーカー(ネタバレ)

ジョーカー



原題:Joker
2019/アメリカ 上映時間122分
監督・製作・脚本:トッド・フィリップス
製作:ブラッドリー・クーパー、エマ・ティリンガー・コスコフ
製作総指揮:マイケル・E・ウスラン、ウォルター・ハマダ、アーロン・L・ギルバート、ジョセフ・ガーナー、リチャード・バラッタ、ブルース・バーマン
脚本:スコット・シルバー
撮影:ローレンス・シャー
美術:マーク・フリードバーグ
編集:ジェフ・グロス
衣装:マーク・ブリッジス
音楽:ヒドゥル・グドナドッティル
音楽監修:ランドール・ポスター、ジョージ・ドレイコリアス
出演:ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ、フランセス・コンロイ、ビル・キャンプ、シェー・ウィガム、ブレット・カレン、グレン・フレシュラー、リー・ギル、ダグラス・ホッジ、ダンテ・ペレイラ=オルソン、マーク・マロン、ジョシュ・パイス、シャロン・ワシントン、ブライアン・タイリー・ヘンリー
パンフレット:★★★★★(835円/識者のコラムが大量に収録されていて、超素晴らしい!)
(あらすじ)
「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




97点


※今回の記事は、「キング・オブ・コメディ」のネタバレに触れているので、出来れば観てから読んで!

「アメコミのキャラの中でジョーカーが一番好きさ!ヘ(゚∀゚*)ノ ダイテ!」ということはまったくないんですが(むしろ仮面ライダージョーカーの方が好き…という不要な書き出し)、劇場で流れていた特報が超カッコ良かったので、そりゃあ期待してまして(微笑)。確実に影響しているだろうマーティン・スコセッシ監督の名作「タクシードライバー 」「キング・オブ・コメディ」を自宅で観てから、10月5日(土)にTOHOシネマズ川崎「ジョン・ウィック パラベラム」とハシゴ鑑賞しましてね。さらに愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の今週の課題作品になったということで、10月16日(水)に新宿ピカデリーで2回目を観てきました(その後、下高井戸に移動して「COLD WAR あの歌、2つの心」を鑑賞)。「底が丸見えの底なし沼!(`Δ´;)」と思ったり。


TOHOシネマズ川崎の5番スクリーンはほぼ満席であり…。


新宿ピカデリーの1番スクリーンで観た時もまた、ほぼ満席なのだった。スゴイね!



重要な部分をサクッと省略したあらすじを適当に書いておくと、舞台はニューヨークっぽい「1981年のゴッサムシティ」でして。コメディアンを目指すアーサーは認知症気味の母親ペニーの面倒をみながらクラウンの仕事で細々と生計を立てていたんですけれども。ある日、路上で音楽店の閉店セールの宣伝をしていたら、悪ガキどもにぶちのめされた上に雇い主から怒られるという散々な出来事がありまして。同僚ランドルが護身用に拳銃をくれたものの、小児科病棟の慰問中にその銃が懐から落ちて、仕事をクビになるという悪循環ですよ (´・ω・`) ションボリ その帰り道、3人の証券マンに絡まれてボコボコにされた時、つい持っていた銃で射殺してみれば、“低所得者層の英雄”になってなんていい気持ちまるでアルデンテであり、さらには「母親は『アーサーはトーマス・ウェインの息子』と言っていたけど、実は彼女の妄想だった… ('A`) マジカ」とか「憧れのコメディアンのマレーに番組で初舞台をバカにされた… ('A`) ヒデェ」とか「同じアパートのシングルマザーとすっかり恋人気分だったけど、すべて自分の妄想だった… ('A`) ソンナァ」といったことが矢継ぎ早に起こったので、絶望の中、「オレの人生は喜劇だッ!Σ(°д° ) クワッ!」と開眼。母親を窒息させて殺害&ランドルを刺殺後、「ジョーカー」としてマレーの番組に出演すると、不満をぶちまけた後に射殺しましてね。富裕層に不満を抱えた人々の暴動が広がる中、アーサーは自分の血で唇のメイクを完成させると、ダンスを踊るのでしたーー。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      o
というお話 ゜
だったのサ /⌒\
      /ノ\ヾヽ
____ _((`∀´ヽ |
L|_|_|_/ノへ>ノ~ )ヘ
L_|_|_|\'-') / 丿/
L|   \_ ̄ ⊂Lノ/
L| 从从 /\__/ ∥
L|//ヘヾ/    _ノ∥
―――(^(⌒ヽノL/
     ̄  ̄
      = The End =


本作のスゴいところはいろいろあって、まず映画のクオリティが高い。主演のホアキン・フェニックスは、最近の出演作で変な人ばかり演じてきただけあって「マジモンじゃねぇか… (`Δ´;)」とドン引きする迫力であり、間違いなくこれから様々な主演男優賞を受賞しまくるレベルじゃないでしょうか。しかも、撮影がまた素晴らしくて、例えばホアキン・フェニックスは20キロ減量してあの異様に痩せた体を作り上げたそうですが、たぶんあそこまで肉体を不気味に見せるには、撮り方も相当考えたんだろうなぁと。さらに、脚本やら演出やら構成やらもよーく考えられていて。宇野維正さんが指摘されていた「時計の時刻」とかには気付かなかったけど(汗)、アーサーが踊るたびに開放される展開や階段を上り下りするシーンの対比的な使い方(特にジョーカー化してから階段を下りる場面は修羅の道に堕ちていく感がある)などは、僕にすらわかるレベルの上手さでしてね。音楽の使い方もいちいち良くて、特にラストの逮捕直後に流れる「ホワイトルーム」には鳥肌が立ちました。


本作のホアキン・フェニックスは凄まじかったですな。



一応、クリーム「ホワイトルーム」を貼っておきますね↓




それと、尊敬する映画評論家の町山智浩さんによると「トッド・フィリップス監督は70年代のアメリカ映画が好きで、そういう映画を作りたかったんですが、それだとなかなかお金が出ない。だから、お金が出る『ジョーカー』を利用した」そうで(ホラー映画の体で社会問題を扱った「アス」を思い出した)。実際に様々な映画の引用が散りばめられているそうですが、その使い方も見事だった印象。過去にアーサーみたいな役をやっていたロバート・デ・ニーロをベテランの売れっ子コメディアン役に起用したのもさすがだし、ラスト、精神病院を右往左往するシーンをモロに「キング・オブ・コメディ」っぽく描くことで、「結局、すべてジョーカーの作り話」というオチを補強していたのは、スゲー感心しましたね〜(「キング・オブ・コメディ」もその終わり方が現実なのか虚構なのか議論になっている)。


「キング・オブ・コメディ」の1シーンを貼っておきますね。



なんて言うんですかね、僕的に本作の「作り話(もしくは妄想)オチ」というのは本当によく練られていると思ってて。終盤の「恋人なんていなかった!Σ(゚д゚;)」発覚シーンだけでなく、例えば、序盤でアーサーがトゥレット障害を発症してバスの中で爆笑してしまうシーン、黒人の母親の「子どもを自分のヒザに寝せる動作」をわかりにくく映しているので「最初から子どもはいなかったのでは?」とも見えるんですよね。それに、証券マンたちを撃ち殺す際にリボルバーから8発もの弾丸が発射されたシーンとか、確かに8発のリボルバーも存在はするものの、なんか釈然としないし…。そして、そんなシーンを散々散りばめた挙げ句、最後の最後にカウンセラーの前で「暴徒に両親を射殺されたブルース・ウェイン少年の姿」を思い浮かべた後、「いいジョークを思いついた」というのは、要は「バットマン」自体が「アーサーが思いついた虚構」ってことじゃないですか。そりゃあ、アーサーが生きている“現実的な世界”にバットマンなんて存在しようもないワケで、ジョーカーという悪役にリアル寄りにアプローチした本作的には見事な着地としか言いようがないと思ったり。


モヤッとする人もいるでしょうが、僕的にはこのマホメド・アライJr.気分でしたよ(「バキ」より)。



なんとなく思い出した宮崎吐夢さんの「私事」を貼っておきますね(「宮崎吐夢記念館」収録ダヨ!)。




それと、何よりも本作は「現代社会の世相や問題」を上手に取り入れているのがスゲー好き。富裕層云々やら社会福祉やらの要素はもちろんのこと(先日飲んだ方が社会保障費のために消費税増税したのに社会保障費1300億削減するなんて酷いジョークだ」みたいなことを言ってた)。例えば、地下鉄でアーサーが射殺した“社会のエリートたち”は「酔って女性に絡んでポテトを投げる」という時点で殺されて当然のクズなワケですけど、「さすがにその事情を知らない市井の人々が『エリートが射殺されてざまぁ!ヘ(゚∀゚*)ノ』とはならないだろ」と最初は思ったんですが…。でも、よくよく考えれば、僕個人の思惑や思想は別として、上級国民云々で炎上しがちな現在、日本で「電通」や「東電」の社員が同じような被害に遭ったら、ネットには劇中と同じような世論が形成されるのではないかと。そう考えると、ちょっと恐ろしくなったし、この作品はスゲェなと思いましたよ、マジで。まぁ、トッド・フィリップス監督は最終的に「本当かな? 虚構かな?( ̄ー ̄) フフフ」みたいに濁したことで、良く書けば「底が丸見えの底なし沼」(by 井上義啓編集長)的な作品にしたと思うけど、逆にいやらしく予防線を張りまくった感もあって、そう考えると少しズルい気がしなくもないんですがー(ちょっと「哭声 コクソン」を連想した)。


こいつらが射殺されるシーン、そりゃあ過剰防衛ではあるけど、超スッキりすでした (o^-')b スッキリ



あと、適当に思ったことを書くと、なんだかんだ言って、アーサーは「理想の弱者」でしかないんだよなぁと切なくなる部分もあって。そりゃあトゥレット障害を患っているだけで大変だし(しかも虐待によるケガが原因っぽいし)、福祉によるカウンセリング&投薬が打ち切られなければああいう犯罪行為に走ることもなかった…といった同情できる点は少なくないし。「笑う部分が他の人とズレる」から、合わせるために空笑いするあたりは「空気が読めない自分」を重ねちゃったりするし、「シングルマザーに勝手な妄想を抱くくだり」だってさぁ、ちくしょう、コンビニで優しくしてくれただけの店員さんに勝手な恋心を抱いたことがあるのは僕だけじゃないだろう!? 僕だけじゃないだろう!?(唐突にキレながら) 小人症の同僚がバカにされても笑って同調するという「思いやりのなさ」だって「弱者」らしいリアルさを感じたし(だってそんな精神的余裕がないのだもの)、クライマックス、マレーを射殺するシーンでは「そりゃあ、アンタが言うことには正論が含まれているけど、とは言え、人の足を踏んでも悪びれないような奴は死ぬべし!m9`Д´) ビシッ」とすっかり感情移入しちゃったんですが、しかし。

ううむ、本当にアーサーのような人がいたなら、たぶんマレーに媚びへつらうんじゃないかなって。マレーみたいな人が本当にいたら、たぶんもっとフォローして上手く取り込んじゃうだろうし、アーサーも誤魔化されちゃうの、「弱者」は「強者」からの利益に弱いから。まぁ、本作のアーサーは「銃」を手にして後戻りできないこともあって反逆できたけど、でも「弱者が強者に牙を剥く」なんてのは本当に稀であり、理想でしかないんだよなぁって。クライマックスに暴動が起きていたけど、あれだって損害を被るのはほとんどが「弱者」であって。いくら「弱者」がキレたって、誰でも良かったと言いながらも「弱者」を狙うだけでしかなくて、もしアーサーみたいな人がいても「自分より強い者」に立ち向かうことなんてなくて(ちょっと「松江哲明監督に反逆した加賀賢三さん」は連想したけど、本作の「弱者」とは違う気がする)。本当に現実にいる「キレた弱者」は「女性が乗った車のフロントガラスを割りまくった男」といった程度で1ミリも感情移入できないワケだし、なんかね、いろいろと考えれば考えるほど切ない気持ちになった…って、伝わりますかね。


つーか、本作のジョーカーは「悪のカリスマ」にはなりようもないような…。



その他、「ジョーカーというキャラクターの元ネタになった1928年の映画『笑う男』も観てみたいなー」とか「本作に通じるところが多いというホアキン・フェニックス主演の『容疑者、ホアキン・フェニックス』も観ておけば良かったなー」とか「トーマス・ウェインはあんなに『殺す殺すデモ』が実施されているんだから、もっと警戒して生きろよ」とかとかとか。まぁ、何はともあれ、フフフ、いろいろと適当なことを書いてみましたが、このブログもあくまでフィクション。本作が本当に傑作なのかどうかを判断するのはあなただし、ついでにあの鐘を鳴らすのもあなた…といったよくわからない文章を唐突に残して、この感想を終えたいと思います ( ゚д゚) ジョーカー!




デジタル盤のサントラ。輸入CD盤もあります。



本作のベースとなっているアメコミ。味わい深く、面白いです。



パンフで町山智浩さんが共通点を挙げていたトッド・フィリップス監督作。未見なのです。



モロに影響を与えている作品、その1。まぁ、観ておくと良いです。



モロに影響を与えている作品、その2。「特別編集版」は未見なんですよね〜。



トッド・フィリップス監督作。スゲー面白いですぞ。