工作 黒金星と呼ばれた男(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

工作 黒金星と呼ばれた男(ネタバレ)

工作 黒金星と呼ばれた男



原題:The Spy Gone North
2018/韓国 上映時間137分
監督・脚本:ユン・ジョンビン
製作:ハン・ジェドク、ソン・サンボム
プロデューサー:グク・スラン
脚本:クォン・ソンフィ
撮影:チェ・チャンミン
照明:ユ・ソクムン
編集:キム・サンボム、キム・ジェボム
美術:パク・イルヒョン
音楽:チョ・ヨンウク
アクション:ホ・ミョンヘン、チェ・ボンロク
衣裳:チェ・ギョンファ
ヘアメイク:キム・ヒョンジョン
出演:ファン・ジョンミン、イ・ソンミン、チョ・ジヌン、チュ・ジフン、パク・ソンウン、キ・ジュボン
パンフレット:★★★(700円/薄く見えますが、記事は結構充実。松江哲明監督の文章は相変わらず上手いけど、複雑な気持ち)
(あらすじ)
92年、北朝鮮の核開発により緊張状態が高まるなか、軍人だったパク・ソギョンは核開発の実態を探るため、「黒金星(ブラック・ヴィーナス)」というコードネームの工作員として、北朝鮮に潜入する。事業家に扮したパクは、慎重な工作活動によって北朝鮮の対外交渉を一手に握るリ所長の信頼を得ることに成功し、最高権力者である金正日と会うチャンスもつかむ。しかし97年、韓国の大統領選挙をめぐる祖国と北朝鮮の裏取引によって、自分が命を懸けた工作活動が無になることを知ったパクは、激しく苦悩する。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




80点


本作は、8月2日放送で回した「ムービーウォッチメン」のリスナーカプセルに選ばれた→今年もリスナーカプセルに入った作品を鑑賞しているので観ることにした…ということではなく(不要な書き出し)。ユン・ジョンビン監督作は「群盗」「悪いやつら」が最高だったし、主演のファン・ジョンミンも大好きだし、そんな2人がタッグを組んだスパイ映画となれば、そりゃあ観るのは義務レベルじゃないですか(微笑)。そんなワケで8月25日(水)、シネマート新宿にてシネマートデイの割引サービスを利用して鑑賞いたしました。「本当…なのかなぁ… (´Д`;) ドキドキ」と思ったり。


劇場はスクリーン2で、結構埋まっていた記憶。



最初に、あらすじを適当かつ大胆に省略して書いておくと、時代は1992年。韓国国軍情報司令部・少佐のパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は北朝鮮の核開発の実態を探るための工作員「黒金星(ブラック・ヴィーナス)」になりまして。アグレッシ部に自己破産してから、元軍人の事業家になりすまして派手に振る舞っていたら、対外経済委員会のリ・ミョンウン所長(イ・ソンミン)が接近→腹を探り合いつつのビジネス関係がスタートするのです。で、あーだこーだあってミュンウンと仲良くなったソギョンは、スパイ活動をしつつも南北の未来のために「共同事業」を軌道に乗せたい…と思っていたところ! なんと再選を狙う韓国大統領が自国民の不安を煽るために、北朝鮮に大金を支払ってミサイル発射を依頼してくるのです!Σ(゚д゚;) マッチポンプ!


ビジネスマンに扮したソギュンはミョンウン所長とともに共同事業を始めまして。


軍人のチョン・ムテクに疑われながらも、何とか金正日まで辿り着くというね。



「そんなことをやらせたら、せっかくの友好関係が… (´Д`;)(´Д`;) イヤン」と思ったソギョンとミュンウンは、北朝鮮で一番偉いおばさんパーマに命がけの直談判を実施すると(もし失敗したら「ロープを持つ手を弛めると肛門に棒がドンドン入ってしまう拷問」を実施されそうな行動)、最初は渋りながらも「じゃあ、やめる (・ε・)」ということになって、2人は大喜びだったんですが、しかし。計画と面目を潰された情報司令部のチェ・ハクソン室長(チョ・ジヌン)が「ソギョンがスパイ活動をしていたこと」をマスコミにリークしたため、一気にピンチに陥るものの、ミョンウン所長が助けてくれて、ソギョンは無事に北朝鮮を脱出。2006年、南北のモデルによるCM撮影がおこなわれる時、その現場にはソギョンとミョンウンがいて。お互いを見つけると、前に贈りあった時計とネクタイピンを見せ合うのでしたーー。


金正日への直訴を成功させるも、スパイだとバレて逃走→CM撮影が形になるのは10年後だったというね。



アクション要素はほぼゼロなんですが、スゲー面白いスパイ映画でした。つーか、リアル方向に描けばこんな感じになるよなぁと。とにかく出演者たちの演技が素晴らしくて、「“別人の演技をしているスパイ”を演じる」という難題を見事にこなすファン・ジョンミンはさすがすぎるし、イ・ソンミンも渋いし、この2人の静かな友情描写にはハートを掴まれまくりでした。軍人のチョン・ムテクを演じたチュ・ジフンもヒリヒリした感じがスゲー良かったですね〜。ところどころ知ってる顔が出てくるのもうれしくて、CMディレクター役のパク・ソンウンがラストの2006年にも出てきた時は「そんなに南北交流のCMが作りたかったんだな (´∀`) アラアラ」と微笑ましかったです。


スパイ映画であると同時に、この2人の友情物語でもあるのです。



あと、ラストのCM撮影シーンで韓国代表としてイ・ヒョリという歌手の人が出てくるんですが、2005年に本当にあった出来事だそうで。鑑賞中はまったく知りませんでしたが、韓国の人が観たら「おっ、面白い起用だな ( ̄ー ̄) ニヤッ」と感心するところなんでしょうな。その他、脚本も良く出来ていて、腹を探り合う会話バトルには手に汗握らされるし、北朝鮮の街並みを再現した美術もスゴいし(「おっ、北朝鮮ロケですか」と勝手に誤解して感心するレベル)、もう褒めるところだらけでしたよ。


ちなみに、イ・ヒョリが出演した2005年のCMはこんな感じ↓




そして、何よりも驚かされたのは「韓国政府が政権維持のために北朝鮮へ軍事行動を依頼していた」という展開。本作は実話ベースで、パク・チェソという人が実際に「黒金星」として工作活動→手記を出版→映画化された…という流れみたいなんですが(「尿道に小型レコーダーを隠していた」というエピソードがスゲェ。尿道だよ!?)、「本当にこんなことがあるの!? Σ(゚д゚;) マジ!?」と。パンフに載っていた秋月望教授による「時代背景解説」によると「韓国では、選挙の時期や政権危機が起きると、何かしら北朝鮮にかかわる事件が起きて国民世論の風向きが大きく変わることがあり、これを『北風』が吹くといってきた」そうですが、確かに「ない話」じゃないよなぁ…なんてね。日本でも「政権にスキャンダルが起きると、芸能人が逮捕されたりする」という「スピン報道」が話題になったりもして、それは単なる「認知バイアス」ってことなのかもしれませんけれども。ただ、こういうのってどんな国でも起こり得るというか、あながちウソとも言い切れないと思わなくもないような気がしないでもなかった次第。


まぁ、この文を読んだ多くの人が松尾象山気分かもしれませんな…(「餓狼伝」より)。



それ以外で気になったことを書いておくと、「『浩然の気』という言葉を始めて知りました」とか「キ・ジュボンが特殊メイクで演じた金正日がソックリすぎてビビッた」とか「北朝鮮の役人が韓国の協力者だとバレちゃうシーンが怖かった…」とか「死体の山がサラリと映るシーンがハード」とか「『最後に冒険しませんか?』の台詞がカッコイイ!」とか「ラストの贈り物を見せ合うシーンは、(どちらも違う内容だけど)なんとなく『賢者の贈り物』『ハナ 奇跡の46日間』を思い出してスゲー泣いた… (iДi) イイハナシダナー」とかとかとか。何はともあれ、スゲー面白いスパイ映画だったので、来年の1月7日にはソフトが発売されるみたいだし、未見の方はぜひ観てみてくださいな (°∀°)b オススメ!




ソフトは1月7日に発売されるのでした。



サントラでございます。輸入CD盤もあります。



超燃えるユン・ジョンビン監督作。僕の感想はこんな感じ



ユン・ジョンビン監督作はこれも好き。僕の感想はこんな感じ



ファン・ジョンミン主演作で一番好きなのはこれです。僕の感想はこんな感じ



なんとなく思い出したスポ根ムービー。僕の感想はこんな感じ