よこがお(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

よこがお(ネタバレ)

よこがお



2019/日本、フランス 上映時間111分
監督・脚本:深田晃司
原案・企画・プロデューサー:Kaz
エグゼクティブプロデューサー:井上伸一郎
製作:堀内大示、三宅容介
プロデューサー:二宮直彦、二木大介、椋樹弘尚
フレンチプロデューサー:澤田正道
撮影:根岸憲一
照明:尾下栄治
録音:木原広滋
美術:原田恭明
装飾:寺尾淳
衣装:馬場恭子
ヘアメイク:豊川京子
音楽:小野川浩幸
助監督:久保朝洋
製作担当:斉藤大和
出演:筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、須藤蓮、小川未祐、吹越満、大方斐紗子、川隅奈保子
パンフレット:★★★★★(880円/映画の補完に役立つ一冊。シナリオが載っているのがうれしい!)
(あらすじ)
周囲からの信頼も厚い訪問看護師の市子(筒井真理子)は、1年ほど前から看護に通っている大石家の長女・基子(市川実日子)に、介護福祉士になるための勉強を見てやっていた。ニートだった基子は気の許せる唯一無二の存在として市子を密かに慕っていたが、基子から市子への思いは憧れ以上の感情へと変化していった。ある日、基子の妹・サキ(小川未祐)が失踪する。1週間後にサキは無事に保護されるが、誘拐犯として逮捕されたのは意外な人物だった。この誘拐事件への関与を疑われたことを契機に市子の日常は一変。これまで築きあげてきた生活が崩壊した市子は、理不尽な状況へと追い込まれていく。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




80点


※本作については、すでに宇多丸師匠の見事な時評がアップされているので、そっちを読めば十分でございます。
※今回の記事は、映画と小説版のネタバレに触れているんですが、どちらも知らないで観たり読んだりした方が絶対面白いので、未見&未読の人は読まない方が良いザンス。
※今回の記事は、少し「ゲーム・オブ・スローンズ」のネタバレに触れているんですが、ネタバレを知らないで観た方が絶対面白いので、観てから読んで! というか、「ゲーム・オブ・スローンズ」はマジで観て!


最初に、心底どうでも良い前書きを書きますね。本当は「ムービーウォッチメン」が放送される8月16日までにはアップしたかったものの、僕もいろいろと忙しくてね…(遠い目)。鑑賞後、つい小説版を購入→読破したのもあって、全然間に合わなくて。結局、そのまま宇多丸師匠の見事な時評を聴いちゃうと、あまりに素晴らしすぎるから、「もう僕が感想を書かなくてもいいな (・∀・) アッサリ」気分になって、なかなか書く気になれなかった…って、おわかりいただけただろうか(突然、「ほん呪」口調で)。


劇場で買った小説版。一気に読んだものの、放送前に感想を書く時間は失われたのだった(偉そうに)。



で、どうせ書くなら、深田晃司監督がパンフで挙げてきた&放送で宇多丸師匠も触れていた、本作の元ネタと言われる小説「冗談」も読んでから書こうと思って購入してみたものの、忙しくてまったく読む暇がないため、それ故にまた感想を書くのが遅れていた…という悪循環。ただ、ハッキリ言って、仕事の忙しさは加速する一方だし(限りなく広大な宇宙が光の速度でさらに膨張を続けるようにだ!)、さらに10月からはTRPGに復帰しようと思っていたりするので、「もう読む時間はないな (・∀・) アッサリ」と断念。本日、やっと感想を更新することにした次第でございます。


断念した「冗談 」。宇多丸師匠、忙しいのにマジでスゴいと思いますよ。


なんとなくゲリー・ストライダムの画像を貼っておきますね(「グラップラー刃牙」より)。



さて、深田晃司監督作については、「歓待」「淵に立つ」の2本だけしか観てませんが、そりゃあスゴい作品を撮る人だと認識してまして。で、本作については何かのタイミングで予告編を観た時、これは相当な「厭な映画」だと思いましてね。スゲー気になるから絶対観ようとは思いつつも、とは言え、かなりヘビーそうなので二の足を踏んでいたところ、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の今週の課題作品になったということで! 8月14日(水)、出勤前にいそいそと角川シネマ有楽町で鑑賞いたしました。地獄だった… ('A`)


朝イチの回ながら、劇場には20人ぐらいはいた記憶。


ポップコーンを2つ買うと非売品B2ポスターがもらえるそうな。


ロビーには記事の切り抜きがあったり、小説版が売られてたりしましたよ。


なんとなく、Sirとゲリー・ストライダムを貼っておきますね(「グラップラー刃牙」より)。



最初にあらすじを身もフタもなく雑に、そして少量のウソをスパイスとして混ぜながら書いておきますよ(なんだこれ)。映画は、“何らかの思惑”を持った白川市子(筒井真理子)が「リサ」と名乗ってイケメン美容師・米田(池松壮亮)に近づいていく“現在のパート”と、訪問看護師としてささやかながらも幸せに生きていた白川市子がなぜそんなことをする羽目になったかを描く“過去のパート”交錯する構成になってましてね。実は、過去に「市子の甥っ子の達男(須藤蓮)が訪問先の次女・サキ(小川未祐)を誘拐してしまった→でも市子と長女の基子(市川実日子)以外は誰もそのことに気付いていない→市子にLOVEずっきゅんな基子は『バレないさ、バレないさ 川`∀´)』と黙っていることを推奨するも、婚約者がいることを知った瞬間、『加害者のくせに幸せになるなんて許せない!川`Д´)ノ キィィィッ!』とマスコミにすべてリーク→市子は職場にいられなくなった上に婚約破棄することになった」という超ヘビーな経緯があり、市子は現在、基子への報復として彼女の恋人・米田を寝取ろうとしていたのです。


米田に近づいてきた謎の女「リサ」ですが…。


本名は白川市子。以前は訪問看護師として働いていたのです。


ところがある日、自分の甥っ子が訪問先の次女を誘拐しちゃったから、さぁ大変!Σ(゚д゚;しタイヘーン!


事情を知る長女の基子は「黙っていた方がいい!」と説得してくるから、つい黙っていたものの…。


市子の結婚に嫉妬した基子がマスコミにリーク→加害者家族としてハードにバッシングされまして。


市子はすっかりドン・フライっぽいレスラー気分だったというね(「餓狼伝」より)。



そして、市子がビーストモードを発動して犬化したりと、あーだこーだあって、米田と念願のベッドイン→その証拠写真を基子にメールで送りつけて「我復讐セリ!ヘ(゚∀゚*し セリ!」気分だったんですけれども。基子はとっくに米田と別れていた上に、さらに米田は市子と知りつつ付き合っていたことが発覚するから(本当に好きになったっぽい)、わたしまけましたわ (ノω・、し グスン 4年後、蕎麦屋で働きながら細々と暮らしていたら、出所した達男が「サキに謝りたい」と言い出すので、車で家に行ってみれば、すっかり引き払って売り家状態でして。ヤレヤレムードで帰ろうとしたら、目の前の横断歩道には“介護士になったムードの基子”が現れたから、市子は轢き殺そうかと悩みつつも断念。人生は続くのでしたーー (´・ω・`し


米田と寝てみても、復讐にも何にもならなくて。


結局、甥っ子と暮らすことになり、市子の人生は続くのでした。



ううむ、いろいろな意味で面白かったです。僕的に本作の好きなところは3つあって、1つ目は「誰もが“加害者の立場”になり得る世界」を描いていたこと。市子は基子の“告発”によって、窮地に追い込まれるんですが、そのどれもが「確かに市子が言った&やったことではある」ので、すべてが裏目になっていくあたりが(例えば「『甥に性的虐待をしていた』疑惑→連れ子を抱えた婚約者は市子を見捨てざるを得なくなる」とか)、スゲー意地悪かつ厭な展開ながらもスゲーよくできていて、ちくしょう、スゲー面白かった。最近、すっかり「ゲーム・オブ・スローンズ」にハマッているんですけど(汗)、シーズン4のエピソード6「裁判」でのティリオン・ラニスターの追い込まれ方に近い…って、伝わりにくいですかね (´∀`;) スミマセン しかも、こういうのって「追い込まれる方」に自分を重ね合わせがちだけど、無自覚のままに「追い込む方」になっている可能性もあるワケで…。「深田晃司監督、相変わらず恐ろしい話を考えるなぁ (・ω・;) ウーム」と感心しましたよ。


動物園でサイの勃起を観た時に話した“打ち明け話”が首を絞めることになるとか、最悪でしたな(誉め言葉)。



2つ目は、さまざまな演出が面白かったです。所詮、それほど“映画を観る目”を持ち合わせていない僕ですけど(苦笑)、灰皿がアップになって煙が漂うところにタイトルが出る「オープニングの不穏感」とか、吹越満さん演じる婚約者の「君のせいだよ」の台詞のような「違う意味が感じられて居心地が悪くなる会話」とか、そういう地味にヒリヒリする雰囲気作りが超上手い。その逆で、筒井真理子さん演じる市子が夢の中でいきなり犬化したりとか(「哭声/コクソン」での國村隼さんのビーストモードを思い出した!)、筒井真理子さんのビンタをかわした市川実日子さんのカウンタービンタとか、そういったケレン味あふれる演出もあったりするから、観ていて本当に飽きないのです。あと、「黙っていることを勧める時の基子の顔が見えない→真意がわからない演出」とか「洗車とともに決意をあらたにする演出」とか「市子が新生活を始めている蕎麦屋にキジバトの鳴き声が聞こえる→都会ではないことを示す演出」といったあたりも好きでしたね。


一応、「哭声/コクソン」のビースト隼を貼っておきますね。


「淵に立つ」のスナッピーなビンタといい、深田監督はビンタ演出が上手い印象(「淵に立つ」より)。
ナイスすぎるビンタ

基子が黙っていることを勧めるシーン。「悪魔の誘い」的な意味合いもあるんでしょうな。



そして3つ目は、ラストの受け取り方は人によって違ってくると思いますが、意外と希望が持てる終わり方に感じられたこと。なんか、ラストの筒井真理子さんが見せる貌には、そこはかとないながらもたくましさが感じられて。確かに市子の人生は地獄のような状況に陥ったけれども、とは言え、彼女は生きていくし、生きていけるのではないかと。なんて言うんでしょうね、上手く書けないんですけど(汗)、人間には「理不尽な目に遭っても生きていく強さ」があって、その「生きていくこと」こそが理不尽な状況に対する何よりの抵抗なのではないかと。だから、本作は全編ほぼ「スゲー厭な話」にもかかわらず、後味だけは意外とさわやかに感じたという不思議。まぁ、とは言っても、やっぱり全編ほぼ「スゲー厭な話」であり、鑑賞中は地獄のようだったので、二度と観る気はしないんですけどね (ノ∀`) ダイナシ


ラストの市子を観た僕はオリバ気分であり、ふと「いいおかお」を読みたくなった次第(「範馬刃牙」より)。



その他、役者さんたちは全員素晴らしかったし、母親役の川隅奈保子さんの「自分の腿を叩く演技」が最高だったし、市子の職場が最初は擁護するっぽいバランスなのもリアルだったし、「ストーカー心理を可視化した話」としても面白かったし、「基子の復讐の稚拙さ」も逆に善良な彼女の限界に思えて良かったし、小説版は復讐パートがなくて「市子と基子の関係性」に絞った話だったのも考えさせられたしと、もう褒めるところまみれですよ(微笑)。ただ、最後に出てきた基子が介護士になっているっぽい&憔悴した顔なのは「許されない過ちを犯しつつも、彼女も彼女なりに生きていくしかない」ということなんだろうし(あのまま生きていくのは「罰」でもあるし)、本作の着地としてはまったく正しいものの、ああいう奴は苦しんで死んでほしいので80点という心の狭い評価基準。つーか、もし好きな人に想いが伝わらなかったとしても、本当に愛しているのなら、嫌がらせみたいなことはしないでクールに去りましょうね(ロバート・E・O・スピードワゴンのようにーー)。


ジョナサンをエリナに譲るスピードワゴンを貼っておきますね(「JOJO第一部」より)。



おしまい (゚⊿゚) ナニコノオチ




深田晃司監督自身による小説版。映画を観た人は読むと良いです。



筒井真理子さんが出演している深田晃司監督作。僕の感想はこんな感じ



深田晃司監督が影響を受けたというフランス文学小説。買ったけど、読むことはなさそうだ(他人事のように)。



なんとなく思い出した、國村隼さんがビーストモードを発動する映画。僕の感想はこんな感じ