僕たちは希望という名の列車に乗った(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

僕たちは希望という名の列車に乗った(ネタバレ)

僕たちは希望という名の列車に乗った



原題:Das schweigende Klassenzimmer
2018/ドイツ 上映時間111分
監督・脚本:ラース・クラウメ
撮影:イェンス・ハラント
衣装:エスター・バルツ
編集:バーバラ・ギス
音楽:クルストフ・カイザー、ユリアン・マース
出演:レオナルド・シャイヒャー、トム・グラメンツ、レナ・クレンク、ヨナス・ダスラー、イザイア・ミカルスキ、ロナルト・ツェアフェルト、ブルクハルト・クラウスナー
パンフレット:★★★☆(720円/3本のコラムがどれもタメになる。特に深緑野分先生が良かった!)
(あらすじ)
1956年、東ドイツの高校に通うテオとクルトは、西ベルリンの映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を見る。自由を求めるハンガリー市民に共感した2人は純粋な哀悼の心から、クラスメイトに呼びかけて2分間の黙祷をするが、ソ連の影響下に置かれた東ドイツでは社会主義国家への反逆とみなされてしまう。人民教育相から1週間以内に首謀者を明らかにするよう宣告された生徒たちは、仲間を密告してエリートとしての道を歩むのか、信念を貫いて大学進学を諦めるのか、人生を左右する重大な選択を迫られる。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




70点


※今回の記事は、「いまを生きる」のネタバレに触れているので、気をつけて!

本日はすでに「ウトヤ島、7月22日」の感想を投下済みなんですが、なんとなく「本当にあった若者絡みの事件の映画化作品」つながりで本作の記事もアップしておきますよ。いろいろな賞を獲ったみたいだし、そりゃあ良い映画なんでしょうけど、基本的には「ジャン=クロード・ヴァン・ダムが愛する娘を救うため、危険な犯罪組織へ潜入する映画」を好む僕ですよ、こんな「未知という名の船に乗り」的な邦題の“ハートウォーミングな学園モノっぽい作品”なんてあまり興味が持てなかったんですが、しかし。5月24日5月31日放送の「ムービーウォッチメン」のリスナーカプセルに選ばれた→今年もリスナーカプセルに入った作品を鑑賞しているので、急遽観ることに決定。7月30日、アップリンク吉祥寺にて、「主戦場」「愛がなんだ」と連続鑑賞いたしました。「いい勉強をさせていただきました m(_ _)m」と思ったり。


スクリーン3、観客は10人ぐらいだったような。


鑑賞後の僕の気持ちを代弁する志門剛俊を貼っておきますね(「餓狼伝」より)。



最初に、本作のあらすじを適当に書いておくと、1956年、東ドイツの高校に通うテオ(レオナルド・シャイヒャー)とクルト(トム・グラメンツ)が「ハンガリー動乱」のニュースを観て“自由を求めて蜂起した民衆たち”に共感したので、クラスメイトたちを煽って歴史の授業前に「2分間の黙祷」を実行するんですが…。なんとソ連の影響下にある東ドイツではその行為が「社会主義国家への反逆」とみなされてしまって、クラスメイト全員が人生を棒に振るレベルの事態に発展するのだから、「えらいことになりましたな… (`Δ´;)」と。もうね、退学をちらつかせて仲間の密告を推奨したりとか、国家機関の弾圧が容赦ない上にいやらしくて、さすがは社会主義国家だなぁと感心ですよ(悪い意味で)。で、あーだこーだあって、最終的には19名の学生が西ドイツに亡命するんですが、この時点で「この映画、実話なのか!Σ(゚д゚ )」と初めて知って、結構ビックリしたというね。


鑑賞中の僕の気持ちを代弁する寂海王を貼っておきますね(「バキ」より)。



いや〜、とてもタメになりました。鑑賞前は「どうせ型破り教師がやってきて、生徒たちに自由を教えたら、保守的な学校や保護者の反発にあって転任する羽目になるも、生徒たちは机の上に立って先生を見送るといった内容なのだろうよ ┐(´ー`)┌ ヤレヤレ」と、すっかり「いまを生きる」気分で舐めていたんですが(どちらの作品にも失礼な文章)、まったく予想と違っていて。まず、舞台が1956年の東ドイツなんですけど、1990年に消滅しちゃったし、僕は人生で1ミリも気にしたことがない国でして(スパイ&サスペンスモノで舞台になる程度の印象)。でも、本作を観ることで東ドイツにも普通に暮らす人々がいたという、至極当たり前のことに今さらながら気付かされた…って、かなりバカっぽいですな (´∀`;) スミマセン つーか、恥ずかしながら「ベルリンの壁」ができる前とか考えたことがなかったので(汗)、そういう「知らなかったことを知れる」という点だけでも十分面白かったですね〜。


僕のドイツイメージはこの程度だったり(「キン肉マン」より)。



で、僕はもう46歳のオッサンなので、やっぱり親目線で観たところが多くて。感情移入したのはテオの父親ヘルマン(ロナルト・ツェアフェルト)で、彼の製鉄所での過酷な労働振りを見ると、「息子にはエリートになって良い暮らしをしてほしい」という気持ちは痛いほど分かるというか。そりゃあ世の中、理想をバンバン実現できればいいけどさ、相手はあまりにも強大なのだから、将来的なことを考えたら何も考えずに流されてほしいし、長い物にグルグルと巻かれてほしいと思っちゃいますよね…という志の低い親心。あと、同情したのがエリック(ヨナス・ダスラー)で、ちょっと「イヤな奴」的に描かれている「浮いているキャラ」なんですけど、クラスの中心人物であるテオとクルトの黙祷提案に反対していたのに多数決で負けて巻き込まれちゃう上に、彼だけ「誇りに思っていた父親がナチスに寝返っていた」という衝撃的な事実を知って暴走→傷害罪で逮捕というバッドエンドを迎えるから、マジで可哀相。自分の学生時代を省みると、テオとクルトみたいな奴のせいで迷惑を被ったことが少なくないので、かなり同情いたしました (´・ω・`) ションボリ


なんとなく長い物に巻かれたアニキを貼っておきますね(「大熱言」より)。



その他、思ったことを書いておくと、「ナチスを倒して新たな政府を作った人たちが同じような弾圧をしちゃうという地獄… ('A`)」とか「連帯責任はマジでバカバカしいな」とか「子どもたちが亡命した後の家族たちはどうなったのか…」とか「原題の日本語訳である『沈黙の教室』という邦題にしなかったのはスティーブン・セガール主演作と勘違いされたくなかったから!? Σ(゚д゚) マサカ!」とかとかとか。何はともあれ、東ドイツについてボンヤリと勉強になったし、あらためて社会主義国のクソっぷりや「迂闊な行動で取り返しのつかない事態を招くこともある」という大切なことを確認できたので、「いい勉強をさせていただきました m(_ _)m」という強い気持ち、強い愛。とは言え、僕は「ジャン=クロード・ヴァン・ダムが娘を救うべく闇の世界へ足を踏み入れる映画」などを好む男なので評価的には70点ですけど(台無しな文章)、興味がある方はぜひ観てみてくださいな。




デジタル盤のサントラがありました。ジャケットがいいね。



本作のベースとなったノンフィクション。買おうかと思いきや、訳がダメっぽいのね… (´・ω・`)



ラース・クラウメ監督作。これは興味あります。



12月4日にソフトが販売される予定でございます。