ブラック・クランズマン(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

ブラック・クランズマン(ネタバレ)

ブラック・クランズマン



原題:BlacKkKlansman
2018/アメリカ 上映時間116分
監督・脚本:スパイク・リー
製作:ジョーダン・ピール
脚本:チャーリー・ワクテル、デビッド・ラビノウィッツ、ケビン・ウィルモット
撮影:チェイス・アービン
美術:カート・ビーチ
編集:バリー・アレクサンダー・ブラウン
音楽:テレンス・ブランチャード
出演:ジョン・デビッド・ワシントン、アダム・ドライバー、ローラ・ハリアー、トファー・グレイス、ヤスペル・ペーコネン、コーリー・ホーキンズ、ライアン・エッゴールド、マイケル・ジョセフ・ブシェーミ、ポール・ウォルター・ハウザー、アシュリー・アトキンソン
パンフレット:★★★(800円/町山智浩さんと大森さわこさんの解説がわかりやすくて良かった!)
(あらすじ)
1979年、コロラド州コロラドスプリングスの警察署で、初の黒人刑事として採用されたロン・ストールワース(ジョン・デビッド・ワシントン)。署内の白人刑事たちから冷遇されながらも捜査に燃えるロンは、新聞広告に掲載されていたKKKのメンバー募集に勢いで電話をかけ、黒人差別発言を繰り返して入団の面接にまで漕ぎ着けてしまう。しかし黒人であるロンはKKKと対面できないため、同僚の白人刑事フリップ(アダム・ドライバー)に協力してもらうことに。電話はロン、対面はフリップが担当して2人で1人の人物を演じながら、KKKの潜入捜査を進めていくが……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




90点


※本作については、映画評論家の町山智浩さんの映画ムダ話の解説(216円)が非常にわかりやすいので、聴いてみて!
※今回の記事は「チョコレートドーナツ」のネタバレに触れているので、気をつけて!
※本作は「カミヤマ 春の“マン”祭り」対象作品です。


別に「スパイク・リー監督作は絶対観る!ヽ(`Д´)ノ」といった主義ではないんですが(観てない作品も多いし)、「黒人刑事が白人刑事と組んでKKKに潜入捜査した」という設定がユニークだし(しかも実話!)、アカデミー作品賞を逃したスパイク・リー監督の恨み節も気になったので、観ることに決定。ちょうど愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の今週の課題作品になったということで、今週火曜日にTOHOシネマズシャンテで観てきました(その後、新宿で「イップ・マン外伝 マスターZ」を鑑賞)。「お見事!m9`Д´) ビシッ」と感心しましたよ。


スクリーン1は7割ぐらい埋まってたような。



劇場の入り口でTBSアナウンサーのクマスが誰かと待ち合わせをしていてビックリした…というのは置いとくとして(なんか悪い気がして、声を掛けられなかった)。ストーリーを雑かつ適当に書いておくと、1970年代半ば、コロラド州コロラドスプリングス警察署の初の黒人刑事となったロン・ストールワースが、ふと白人至上主義団体「KKK」への潜入捜査を思い立つ→ユダヤ人刑事フリップ・ジマーマンと実行することになりましてね。ロンが大学生の女性活動家パトリスと男女の仲になったり、KKKに入団しようとしたフリップがユダヤ人だとバレそうになったりしつつも、捜査はそこそこ順調に進んで、パトリスを爆殺しようとするKKKの企みを見事阻止するのです。

で、事件のファイルは破棄することになったものの、電話だけでロンを白人だと信じていたKKKの最高幹部デービッド・デュークをバカにしたり、警察署にいた差別警官をハメてクビにしたりして留飲を下げまして。ラスト、自宅でロンとパトリスが別れ話をしていたところ、誰かがドアをノックしたので開けてみれば、叩いたのは「現実」。窓の外に見える「十字架を燃やす白装束軍団」の中にフリップっぽい人がいた…というだけでなく。2017年に起きた「ヘイトデモに反対する人たちに車が突っ込んで女性が1人死亡した事件」の映像が流れましてね。現場に置かれた「憎しみからは何も生まれない」というメッセージが映ると、エンドクレジットに突入して、プリンスが歌う「Mary Don't You Weep」が流れて終わってたんじゃないかしらん。


公式動画があったので、貼っておきますね↓




正直なところ、「あの時代のブラックパンサー党クワメ・トゥーレはいなかった!」といった事実関係はよく知りませんが(汗)、「捜査の端緒」が微妙だし、捜査方法もあまりにリスキーだしと、鑑賞中に「本当に実話なの?」と疑問に感じたところは多くて。で、尊敬する映画評論家の町山智浩さんの映画ムダ話の解説(216円)によると、コロラドスプリングスではKKKによる爆破事件どころか逮捕者も出てなかったそうでしてね。まぁ、別に「実話をベースにしたフィクション」なんだし、「週刊実話」なんてタイトルなのにあまり実話が載ってない週刊誌もあるみたいだし(失礼な文章)、そのぐらいのことは気にしなくて良いんでしょうけれども。とは言え、宣伝では「まさかの実話」と“実話を売りにしている”だけに、やっぱり少しモヤモヤしちゃう男心。なんて言うんですかね、実話ベースと聞いていた「チョコレートドーナツ」を観て「こんな酷い話があるか!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン!」と怒ったり泣いたりしつつ調べてみたら、「元になった話では少年が死んでいない」ことを知った時の気分…って、伝わりますかね (・ε・) ウーン


ちょっとモヤッとしたのです…。



ただ、その部分以外はスゲー好きでしたよ。いわゆる「ブラックスプロイテーション」的なエンタメ展開で観客を楽しませてから(劇中に出てきたクズどもが全員ちゃんと酷い目に遭うのが最高!)、最後の最後に「現実は今でも酷いんだYO!m9`Д´) ビシッ」と超ヘビーなメッセージをガツンと食らわせてくる構成見事のひと言。僕は常々「娯楽作の皮を被っている方がより多くの人に届く」と思っているので、ユニークな設定で客を惹きつけといて、最終的には骨太なテーマをお土産にする本作は、とても良い映画だと感心いたしました。一応、数日後に「グリーンブック」も観て、そちらもフライドチキンや折り畳んだピザを食らうほどに好きな映画でしたが、僕的には本作にアカデミー賞をあげたい気分だったり。


こんな愉快な設定で好奇心を刺激しといて、最後はヘビーなパンチを打ってくるのです。


本作を観た直後の僕の気持ちを代弁する範馬刃牙を貼っておきますね(「範馬刃牙」より)。



その他、思ったことを書くと、「クワメ・トゥーレを演じたコーリー・ホーキンズの演説に燃えた!」とか「黒人同士の見解の相違を描いているのがクレバー」とか「KKKのボンクラ、『「アイ、トーニャ」に出てきた人に似てるなぁ』と思っていたら、演じているのが同じポール・ウォルター・ハウザーでビックリした!」とかとかとか。何はともあれ、今まで観たスパイク・リー監督作の中で一番好きな作品になりましたよ(って、観てない作品が多いけど)。もちろん当ブログの読者にはそんな方はいないと思いますが、人種差別とかマジで最悪なのでね、日本年金機構の世田谷年金事務所所長のように、差別的な発言とか垂れ流しちゃダメだよ!(o^-')b ダメゼッタイ




ロン・ストールワースによる原作の自叙伝。ちょっと興味あります。



デジタル盤のサントラ。輸入CD盤もあります。



非常に感動したスパイク・リー監督作を貼っておきますね。



なんとなく連想した「実話から生まれた」映画。僕の感想はこんな感じ