友罪(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

友罪(ネタバレ)

友罪



2018/日本 上映時間101分
監督・脚本:瀬々敬久
原作:薬丸岳
撮影:鍋島淳裕
照明:かげつよし
美術:磯見俊裕
音楽:半野喜弘
出演:生田斗真、瑛太、佐藤浩市、夏帆、山本美月、富田靖子、奥野瑛太、飯田芳、小市慢太郎、矢島健一、青木崇高、忍成修吾、西田尚美、村上淳、片岡礼子、石田法嗣、北浦愛、坂井真紀、古舘寛治、宇野祥平、大西信満、渡辺真起子、光石研
パンフレット:★★★★☆(800円/コラムの人選が良い&5本も入っている上に、原作者や監督インタビューもあって、読み応えアリな一冊)
(あらすじ)
ジャーナリストの夢を諦めて町工場で働き始めた益田は、同じ時期に入社した鈴木と出会う。無口で影のある鈴木は周囲との交流を避けている様子だったが、同じ年の益田とは少しずつ打ち解けていく。しかしある出来事をきっかけに、益田は鈴木が17年前の連続児童殺傷事件の犯人なのではないかと疑いを抱くようになり……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




60点


今年は2月に「羊の木」「サニー/32」という「未成年の元犯罪者を扱う作品」が2連続で公開されましてね。その流れでなんとなく本作も観ておきたくなったので前売り券を購入。6月下旬某日、日本橋で1回目の「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」を観てから新宿に移動して、TOHOシネマズ新宿で観ました(その後、「ミッドナイト・サン タイヨウのうた」をハシゴ鑑賞)。「良い映画だけどさぁ… (`Δ´;) ヌゥ」と思ったり。


前売り特典は「特製スマホリング」でしたよ。


1番スクリーン、20人ぐらいはいたような。



意表を突かれたんですが、本作は群像劇でして。お話を乱暴かつ雑に書いておくと、鬱屈した元週刊誌記者の益田(生田斗真)が工場勤め(寮完備)を始めたら、14歳の時に連続児童殺傷事件を起こした“元少年A”の鈴木(瑛太)と知り合って友情を深める→“その過去”を知ってしまって葛藤したり、医療少年院で鈴木を担当したことで娘との関係が疎遠になってしまった白石(富田靖子)がグダグダと悩んだり、息子が交通事故で子どもを殺してしまい贖罪の日々を送る山内(佐藤浩市)が、事故を起こした当人が結婚することを知って激怒したりと、「吸った!(`ε´) チュー!」「揉んだ!ヘ(゚∀゚*)ノ ヤッタァ!」がありました(なんだこれ)。

鈴木ったら、恋仲になった美代子(夏帆)が暴力的な恋人にAV出演を強要されて未だに付きまとわれている→ハードコアな自傷行為で解決したり、工場の人たちとも良い関係になって…なんて、人生が上向きになってきたかと思いきや。益田の元恋人の週刊誌記者・清美(山本美月)が益田の携帯の写真を勝手に掲載したことで、鈴木の正体がバレてしまう→みんながドン引き(美代子含む)→寮を出て行っちゃいましてね。白石はボンヤリと娘と仲直りし、山内もなんとなく息子の結婚を許す中、益田は自分のブログ「三角絞めでもてなして」「いちばん小さな声を聴け」「いじめられている親友を見捨てたら自殺しちゃった… (ノω・、) ゴメンネ」という己の過去を告白。益田と鈴木の2人がお互いの”犯行現場”を訪れると、遠く離れた場所にいる2人の視線が合ったりして、映画は終わってた気がするんだけど、君はどう思う?(唐突な投げかけ)


最後の「遠く離れた場所にいる2人の視線が合う」描写は、この場面を連想した…って、どうでも良いですな(「バキ」より)。



パンフによると、原作者は過去のインタビューで『神戸連続児童殺傷事件』をモチーフにしたワケではない」みたいなことを語っているそうで。映画を観た勝手な印象では、ごめんなさい、「神戸連続児童殺傷事件」の尻馬に乗ったムードがムンムン漂っていただけに、「はーそうですかー (゚⊿゚) ヘー」と、スゲー冷めた気分になった…というのは置いとくとして。僕が鑑賞直後に連想したのは、瀬々敬久監督が2010年に発表した「ヘヴンズ ストーリー」でしてね。あちらに出てきたのは「光市母子殺害事件」を連想させる犯人でしたが、贖罪というテーマや群像劇という描き方も一緒だなぁと(「罪を犯した人は幸せになれないのか?」なんて台詞も出てくるし)。インタビューによると、原作とは少し内容を変えていて、ポール・ハギス監督の「クラッシュ」みたいな作品にするつもりだったみたいですな。


「ヘヴンズ ストーリー」の予告編を貼っておきますね↓




なんて言うんですかね、良い映画なのは間違いないんですよ。生田斗真さんや瑛太さん、佐藤浩市さん、夏帆さんといった役者さんたちの熱演は見事だったし(奥野瑛太さんの“チンピラな先輩”清水役も100点だった!)、骨太なテーマを確かな演出で真摯に描いていて、“犯罪者の更正”や“赦し”、“救い”について考えさせられるし…。ただ、僕の感想もまた「ヘヴンズ ストーリー」の時と同じというか。僕は加害者の贖罪云々を扱う作品なら「犯行の状況」や「無惨な死体」といった描写が重要だと思っていて。なぜ犯罪被害者が激怒するかって、親しい人の「尊厳を踏みにじられた姿」を見させられた部分も大きいじゃないですか。別にグロ描写が見たいということではなく(決して見たくないワケではありませんがー)、観客にしっかりとその行為のおぞましさを体感させた上で“更正”や“救い”を問うべきなんじゃないかなぁって。そりゃあ、本作に登場した“加害者たち”はどうしようもなく反省していて大変だから同情するけど、そういうおぞましさがないとフェアじゃないというかさ。「まぁ、瑛太さんだしな (´∀`) ユルス」的に本質とはズレたところで許しちゃう僕がいて、微妙に納得できなかった…って、伝わりますかね。僕的には「裁判で母親が息子の無惨な死に方を延々と聞かされるシーン」が超ヘビーな「女は二度決断する」のように、せめて言葉だけでも“鈴木”が犯した行為の非道さを伝えるべきだったと思ったり。


どことなくイラッとする範馬刃牙の画像を貼っておきますね(「グラップラー刃牙」)。
三角絞めでつかまえて-フェアじゃない


その他、思ったことを書くと、「山本美月さん演じる記者と週刊誌編集部は滅びてしまえと思いながらも、たぶん『女子高生コンクリート詰め殺人事件』のクソ加害者たちの現在の様子が写真付きで載っていたら、スムースに週刊誌を買って憎悪をボーボー燃やしちゃいそう… (´・ω・`)」とか「奥野瑛太さんが演じた清水の『良いところもあって悪いところもある人間』というキャラクター造形がリアル」とかとかとか。ハッキリ言って、納得いかないところはあれど、映画の出来は素晴らしいし、こういう作品を撮る瀬々敬久監督の真面目な姿勢は好きだし、ううむ、ファジーな気持ちで60点という着地。普段はあまり気にしない“犯罪者の更正”やら“赦し”やら“救い”やらについて考えさせられるのでね、気になる人は観ておくと良いザマス。




薬丸岳先生による原作小説。パンフの瀧井朝世さんのコラムを読んで、少し読みたくなりました。



瀬々敬久監督による4時間38分の大長編映画。僕の感想はこんな感じ



今年観た瀬々敬久監督作。僕の感想はこんな感じ



昔の少年犯罪の方がはるかに多かったし、凶悪だったというね。