女は二度決断する(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

女は二度決断する(ネタバレ)

女は二度決断する



原題:Aus dem Nichts
2017/ドイツ 上映時間106分
監督・脚本:ファティ・アキン
製作:ヌアハン・シェケルチ=ポルスト、ファティ・アキン、ヘルマン・バイゲル
脚本:ハーク・ボーム
撮影:ライナー・クラウスマン
美術:タモ・クンツ
衣装:カトリーン・アッシェンドルフ
編集:アンドリュー・バード
音楽:ジョシュア・ホーミ
出演:ダイアン・クルーガー、デニス・モシット、ヨハネス・クリシュ、サミア・シャンクラン、ヌーマン・アチャル、ヘニング・ペカー、ウルリッヒ・トゥクール、ラファエル・サンタナ、ハンナ・ヒルスドルフ、ウルリッヒ・ブラントホフ、ハルトムート・ロート、ヤニス・エコノミデス、カリン・ノイハウザー、ウーベ・ローデ、アシム・デミレル、アイセル・イシジャン
パンフレット:★★★☆(700円/監督と中村文則先生の対談がスゲー良かった!)
(あらすじ)
ドイツ、ハンブルグ。トルコ移民のヌーリと結婚したカティヤ(ダイアン・クルーガー)は幸せな家庭を築いていたが、ある日、白昼に起こった爆発事件に巻き込まれ、ヌーリ(ヌーマン・アチャル)と息子のロッコ(ラファエル・サンタナ)が犠牲になってしまう。警察は当初、トルコ人同士の抗争を疑っていたが、やがて人種差別主義者のドイツ人によるテロであることが判明。愛する家族を奪われたカティヤは、憎しみと絶望を抱えてさまようが……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




85点


何かで予告編をチラッと観た時は「キツそうな話だな… (´Д`;)」と思って、それほど観る気が起きなかったんですけれども。「4月14日公開なのに、1ヵ月以上公開されている→良い映画なのかも!?」と思うとともに、「主人公はどんな決断をしたのか?」が気になってしまって、脳内BGMはすっかり「気になるアイツ」状態に。結局、6月上旬、ヒューマントラストシネマ有楽町で観てきました(その後、「ザ・スクエア 思いやりの聖域」を鑑賞)。「ナイス、決断!m9`Д´) ビシッ」と思ったり。いや、なかなかストレスが溜まる映画ではあるのですが、僕的には非常に面白かったので、未見の人はできればこんなネタバレ感想文は読まないで、ご自身の目で「彼女は何を二度決断するのか?」を確かめてほしいほどなのです(まだ上映している劇場もあるし)。


劇場で販売されていた「決断のアイスラテ」を購入。冷たくて甘いぜ!(ひねりゼロ)


2番シアター、5分の1ぐらいは入ってたような。



お話を最初にザッと書いておくと、舞台はドイツのハンブルク。主人公のカティヤは、トルコ系移民ヌーリと結婚→息子のロッコも生まれて、そこそこ幸せな生活を送っていたんですが、ある日、爆破テロでヌーリとロッコが死亡!Σ(°д°;し ナンデスト! カティヤは犯行現場でちょうど怪しい女を目撃していたので、「ネオナチの仕業よ!m9`Д´し ビシッ」と訴えるも、ヌーリが過去に大麻で逮捕されていた&家族を失った悲しみを紛らわすためにカティヤが違法薬物を使用したことから、警察からは「ご主人は裏社会の仕事をしてましたか?」と「被害者にも非があったのでは?」的な取り調べを受けましてね。「あー、やんなっちゃった ('A`し」とすっかり牧伸二さん気分になったカティヤは両手首を切って風呂に浸かり、自殺しようとするんですが…(1度目の「決断」)。弁護士で友人のダニーロから「犯人が捕まった」との報を受け、一旦中止。裁判に臨むのです。


映画は、出所したばかりのヌーリとカティヤが結婚するところからスタート。更正して幸せに暮らしていたのに…。


爆破テロによって、夫と息子が奪われてしまうのです (iДi) アンマリダー



ところが、裁判では「息子の死の詳細(眼球が溶けたとか)」を知らされて予想以上のダメージを受けるわ、容疑者のネオナチ夫婦の弁護士から容赦ない口撃をされるわ、モロにグルなムードを漂わせるギリシャの宿屋の親父が容疑者たちのアリバイを証言するわ、違法薬物を使ったせいでカティヤの証言の信憑性を疑われるわと、踏んだり蹴ったりな目にあった挙げ句、判決は無罪! 絶望と怒りに囚われたカティヤは、ネオナチ夫婦が滞在しているギリシャに行って、彼らのキャンピングカーを発見すると、家族が殺されたものと同じ爆弾を作る&仕掛けて爆殺しようとするも、ちょっと冷静になって中止しまして。翌朝、彼女はキャンピングカーに乗り込んで、自爆して復讐を達成するのでしたーー(2度目の「決断」)。


カティヤは超信憑性の高い目撃証言をしたんですが、しかし。


悲しみを紛らわすための薬物使用がバレたせいで、なんと無罪になるから、納得できーん!ヽ(`Д´)ノ キィィィッ!


ということで、クズどもを爆殺!(「科学戦隊ダイナマン」のサビ風に) ネオナチ夫婦は地獄に堕ちて、カティヤは天国に行った…と信じたい。



僕的には「こういうことってあるかもな」的な話として、非常に考えさせられるリベンジムービーだったというか。パンフの監督との対談で中村文則先生が指摘されていて、「我が意を得たり!Σ(°д° ) クワッ!」と思ったんですが、本作のユニークなところは、夫が元犯罪者&主人公も違法薬物を摂取していたりと、被害者サイドが品行方正なタイプではないんですよね。要は、何か事件があった時、「でも、被害者にも問題があったのでは? (`・ω・´) キリッ」なんて言われがちな人たちなんですよ。でも、映画を観ればわかるように、そんなの関係ないワケで。人間は誰だって1つや2つは「すねに傷を持つ」ものでさ、ワイドショーで事件の報道を観ると、つい「これって、被害者も悪人なんじゃねーの? (`∀´)」なんて半笑いになりがちな自分が恥ずかしくなりましたよ…。

つーか、監督が本作を撮る上で「復讐」についてリサーチしたところ、現実世界で実際に復讐をする人は「0.1%以下=何千人に1人」の割合だそうで。心理学の教授曰く、「心の病を患っている人」や境界性パーソナリティ障害の人」が多いそうで、母親がクソ親っぽかったりとか、カティヤのキャラクター造形にはそういった要素が反映されているとか。「トルコに埋葬したい」という夫の母親の申し出を断るシーンでの「ドラッグの力を借りる弱さ」とか、あくまで“普通の女性”というのも良くて。ダイアン・クルーガーの見事な熱演もあって、かなり感情移入して観ちゃいました。


本作のダイアン・クルーガーは見事でしたな。


後半の爆弾作りに説得力を持たせるための“メカに強い描写”、少し強引に感じつつも好きよ (´ε`) ウッフン



で、何よりもラストの自爆が最高でしてね…(しみじみ)。最初にキャンピングカーを爆破しようとするくだりは、僕も「止めた方が良いんじゃないかな (´・ω・`) ウーン」感があったんですよ。というのは、本作はネオナチが実際に起こした「NSU連続殺人事件」がモデルになっているそうですが、結構脚色されているっぽくて。ごめんなさい、いくら「疑わしきは罰せず」にしたって、あまりにも状況証拠が揃いすぎている→さすがに有罪になると思っていただけに、本作の“無罪”はフィクションのために作った展開に見えてリアリティを感じなかった…というのは置いとくとしても。こんな事件が無罪になったらさすがに世論も炎上するだろうし、上告できるのなら次こそは勝てるだろうから、自分まで犯罪者になる必要はないんじゃないかと。ただ、自殺も兼ねるとなれば、仕方ないのかなぁと。いや、もちろん決して良くはないんですけど、復讐として相手の命を奪うだけでなくちゃんと自分の命も捨てる“2度目の決断”には筋が通った清々しさを感じて、「ナイス、決断!m9`Д´) ビシッ」と褒め称えたくなったというね。


畑幸吉のように、誰かを爆殺するなら爆殺される覚悟があるべきじゃないですか(「餓狼伝」より)。


爆破シーン直後の僕は寂海王のような清々しい気分に…って、これはこれでアウトな気もします(「バキ」より)。
勝ち誇る寂海王


その他、「ユーリとロッコとの仲良し家族描写が素敵すぎるだけに… (ノω・、) グスン」とか「加害者の父親をヒステリックに責めない姿勢がヨーロッパっぽい」とか「ネオナチ女がキャンピングカーに入る直前の表情を見て、『この人は夫に引きずられて犯行に手を染めたのでは?→自立しているカティヤとは対照的な存在?』と思った…というパンフ掲載の中村文則先生の発言のPA-KU-RI!m9・∀・) ビシッ」とかとか、思うところはあるんですけど、割愛! 唯一の不満は「他のクズどもが野放し」という点で、僕的にはニセのアリバイを証言したギリシャの宿屋のネオナチ野郎や、仕事とは言えクソみたいな法廷戦術で被害者を愚弄したクソ弁護士も爆殺してほしかったなぁ。それと、葬儀の時にカティヤに向かって「あんたのせいでロッコは死んだ」みたいなことを言った姑については「死ね」とまでは思いませんけど(苦笑)、せめて「なに言ってんだ、ババア 川 ゚д゚)シ☆))Д´) グェッ」とスナッピーなビンタを炸裂させて、一方的になじって憂さを晴らそうとした愚かな老婆が予想外の反撃を食らってブルブルと震えながらへたり込む的な描写が観たかった…という寛容さがゼロな文章 (´・ω・`) ダメネ


このクズや弁護士も死んでほしかったというのは、乱暴でしょうか(間違いなく乱暴な意見)。



エンドクレジットで流れるリッキ・リーの「I Know Places」を貼っておきますね↓




そんなワケで、ダラッと駄文を垂れ流しちゃいましたが(汗)、今どきの社会派リベンジムービーって感じで、スゲー観て良かったです (・∀・) ヨカッタ! 最後に知った風なことを書くと、残念ながら僕も無自覚に何かを差別していたりするとは思うんですけど、人種や出自にまつわる差別発言ほど酷いものはないのでね、当ブログの読者にそういう人はいないと思いますが、気をつけましょうね (´・ω・)(・ω・`) ネー




ファティ・アキン監督の前作。評判が良いので、興味はあります。



なんとなく思い出した映画を貼っておきますね。



まぁ、僕的にはこういうリベンジムービーの方が好みではあります。