ラブレス(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

ラブレス(ネタバレ)

ラブレス



原題:Nelyubov
2017/ロシア、フランス、ドイツ、ベルギー 上映時間127分
監督・脚本:アンドレイ・ズビャギンツェフ
製作:アレクサンドル・ロドニャンスキー、セルゲイ・メルクモフ、グレブ・フェティソフ
製作総指揮:エカテリーナ・マラクーリナ、バンサン・マラバル、パスカル・コーシュトゥー、グレゴワール・ソルワ
脚本:オレグ・ネギン
撮影:ミハイル・クリチマン
美術:アンドレイ・ポンクラトフ
衣装:アンナ・バルトゥリ
編集:アンナ・マス
音楽:エフゲニー・ガルペリン、サーシャ・ガルペリン
出演:マルヤーナ・スピバク、アレクセイ・ロズィン、マトベイ・ノビコフ、マリーナ・バシリエバ、アンドリス・ケイシス、アレクセイ・ファティフ
パンフレット:★★★(720円/オーソドックスな小規模公開映画のパンフといった印象。コラムは2本)
(あらすじ)
一流企業で働くボリス(アレクセイ・ロズィン)と美容院を経営するジェーニヤ(マルヤーナ・スピバク)の夫婦。離婚協議中の2人にはすでにそれぞれ別々のパートナーがおり、新たな生活のため一刻も早く縁を切りたいと考えていた。2人には12歳の息子アレクセイ(マトベイ・ノビコフ)がいたが、どちらも新生活に息子を必要としておらず、ある日激しい罵り合いの中で息子を押し付け合ってしまう。その翌朝、学校に行ったはずの息子がそのまま行方不明になり、彼らは必死でその行方を捜すが……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




90点


※この映画に関しては、尊敬する映画評論家の町山智浩さんの「映画ムダ話」(216円)を聴けば十分なので、そちらをどうぞ!

何かの際に予告編を見たらあまりに辛気くさいので、一応、「観たい映画の覚え書き」では「△」を付けたものの、決して観ることはないと思っていたんですが、しかし。愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」のリスナーカプセルに入りましてね。昨年までは課題作品だけ足を運んでいたんですけど、今年からはリスナーカプセルに選ばれた映画も観ることにしたので、5月1日=ファーストデー割引を使用して、“劇場と一体化する試練”バルト9の1本目として、ホットドッグと水を摂取しながら鑑賞いたしました。「非道いけどスゲー面白い!Σ(゚д゚;)」と思ったり。


シアター7、10人ぐらいはいたような(うろ覚え)。



あらすじを適当に書くと、すでに離婚が決まった&他の相手と新生活を始める気マンマンのボリスとジェーニャの夫婦がお互いを罵りながら、「子どもは母親が引き取るもんだろ!( ゚д゚) クソガ!」「アタシはもうウンザリなのYO!(`Д´し シルカ!」と息子のアレクセイをチェストパスで押しつけ合っていたら、アレクセイが失踪。警察のお役所対応振りがハンパなかったので、捜索救助団体ヴェラを頼ってみれば、なかなかしっかり探してくれるんですが…。自分たちの新生活の方が気になるボリスとジェーニャは、どこか「付き合わされてやっている」感があるというか、真剣に捜索する気はナッシング 川o^-')b(o^-')b グー で、ジェーニャの母親の家に行ってみれば「アタシは堕ろせと言ったのに!川 ゚д゚) アホカ!」とクリティカルに罵られるわ、息子が隠れ家にしていた廃墟に行っても見つからないわと、てんやわんやしていたら、“損傷が酷い少年の遺体”が見つかりまして。ジェーニャは泣きわめき、ボリスもゲンナリすると、場面は2年後に。お互い新しいパートナーと生活を始めているも、気もそぞろなムードで終わってましたよ、たぶん。


あんまりな両親に失望したアレクセイは失踪しまして。


あーだこーだあって、父親ボリスはこんな顔で…。


母親ジェーニャはこんな顔で終わるというね。



本作については、尊敬する映画評論家の町山智浩さんの「映画ムダ話」(216円)がスゲーわかりやすいというか。ロシア情勢を絡めるアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の作風とか、「父親はキリスト教を盲信する社長の顔色をうかがって堕胎しなかった→アレクセイが生まれたのでは?」という考察とか、ラストにジェーニャが「ロシア」と書かれたジャージを着て走る意味とか、まさに「かゆいところに手が届く状態」なので是非チェックしてほしいし、それを聴けば十分なんですけれども。まぁ、僕なりに何の役にも立たない感想を垂れ流しておくと、こんなに非道い内容なのに面白くて目が離せない映画はなかなか観たことがないなぁと。序盤、「ボリスとジェーニャが自分を押し付け合うのをアレクセイが聞いていた!」というシーンがあんまりすぎるんですが、その見せ方が無惨ながらもスゲー上手くて。主人公夫婦の二面性が興味深いし(今の家族には冷淡でも、新しいパートナーには優しい)、消えたアレクセイの行方も気になるし、一気に映画に没入してしまったのです。


新しい彼女(妊娠済み)とリスタートしたいので、息子とは暮らしたくないボリス。


同じく新しい彼氏と人生をやり直すつもりなので、拒否するジェーニャ。


それを陰ですべて聞いていたアレクレイ…。


僕は開始10分程度でエシディシ状態に追い込まれたのでした(ジョジョ第二部より)。
三角絞めでつかまえて-あんまりだー!


つーか、テメエらの子どもの気持ちを一切考えない主人公夫婦は誰が見てもクズ認定できるレベルに達しており、監督的にはわかりやすいよう極端に描いたそうなんですが、よくよく考えれば「仕事を理由にして家庭をないがしろにする」とか「自分LOVEすぎてスマホばかり見てる」とか「すべてを捨ててやり直したい」とか、どこか少しずつ私たちすべての現代人に当てはまりませんか?(唐突に他の人も巻き込んだ文章) 母親が典型的な毒親で、ジェーニャは虐待されて育ったゆえに「愛し愛されて生きるのさ ┐(´ー`)┌」ということがわからない“負の連鎖”も可哀相ではあるし…。だから、両者の態度にムカつきながらも、どこか「自分にも起こり得ること」にも見えて、無下に突き放せなかった…という不思議な鑑賞体験でしたよ。


ボリスはクズ野郎だとしても、離婚を許さない会社も相当クソですよね。


強烈な毒親でしたが、どこか「愛し方をわかっていない」ムードだったのは超良かったです。



映画を9本観た後、偶然、相互フォローしている下手の縦好きさんとお会いしたので、近くの「珈琲貴族エジンバラ」で適当に映画話をしていたら、「ラストの解釈が人によって分かれる」みたいな話になりましてね。それこそ町山さんの音源を聴いてほしいんですが、それはそれとして。一応、僕なりの解釈を書いておくと、まず、あのアレクセイと思しき死体を見た時の2人の反応ですが、基本的に普通の人は死体を見慣れていないので、その分、ショックを受けただけであり(損傷が酷いものは特に)、「本当にアレクセイじゃなかった」可能性もあるのではと。息子がいないまま新生活を始めたので今もモヤモヤしている上に、人生を何度やり直そうとも自分が変わらない限りは「人生なんてどこか物足りないものYO!m9`Д´し ビシッ」ということを描いたラストであって。アレクセイ自身は、放浪の末にスイスの孤児院で保護されて「シモン」と名乗るようになったのではないか。もしくは、彷徨ううちに他の家出少年たちと知り合って戦いを繰り広げて成長し、今もロシアでたくましく生きているーー。そんな風に思っております。


号泣した母親がこんなことを言いだすシーン。


僕は意地悪なので、藤子・F・不二雄先生の短編「じじぬき」のこの場面を連想しましたよ。


僕がイメージする“その後のアレクセイ”を貼っておきますね(「男坂」より)。



その他、「寒々とした風景描写が良かった」とか「主人公夫婦と対照的に“無償の愛”で行動する捜索救助ボランティア描写が面白かった(「リーザ・アラート」という実在の団体を参考にしたそうな)」とか「監督曰く、イングマール・ベルイマン監督の『ある結婚の風景』と対をなす作品だそうだが、観てないのでサッパリだぜ…」とか思うところはあるんですが、長くなるので割愛! 非常に考えさせられる厭な映画でしたよ… (`Δ´;) ウーム 僕は「結婚して良かった派」だし、今だって妻子を思えば「しあわせカーニバル」がヘビーローテーションなんですけど、当然ながら平和な家庭を維持するためには不断の努力が大事ということでね、少し気が引き締まった次第。あと、鑑賞後に映画を8本観たんですが、本作のおかげで「人々が仲良くしている描写」を観るだけで心がホッコリするというブースター効果があった…なんて文章を書き残して、この駄文を終えるとしましょう (・ε・) オシマイ




なんと国内盤のサントラがありましたよ。曲のタイトルがいちいちキツい。



評判の良いアンドレイ・ズビャギンツェフ監督作。僕は悪人が裁かれてほしいなぁ (・ε・) コナミ



同名なので貼ってみたキャスリン・ビグロー監督の長編デビュー作。ちょっと観たい。



なんとなく貼ってみた“違う角度”からの地獄夫婦映画。僕の感想はこんな感じ