あやしい彼女(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

あやしい彼女(ネタバレ)

あやしい彼女

あやしい彼女

2016/日本 上映時間125分
監督:水田伸生
脚本:吉澤智子
製作:中山良夫
ゼネラルプロデューサー:奥田誠治
エグゼクティブプロデューサー:門屋大輔
プロデューサー:畠山直人、八尾香澄
共同プロデューサー:伊藤卓哉、里吉優也
ラインプロデューサー:毛利達也
撮影:中山光一
照明:松本憲人
録音:鶴巻仁
美術:磯見俊裕
装飾:佐原敦史、大庭信正
衣装:篠塚奈美
ヘアメイク:酒井夢月
編集:平澤政吾
音楽:三宅一徳
主題歌:anderlust
劇中歌監修:小林武史
音響効果:松浦大樹
VFXスーパーバイザー:小田一生
スクリプター:阿保知香子
キャスティング:杉野剛
監督補:相沢淳
助監督:蔵方政俊
制作:担当近藤博
出演:多部未華子、倍賞美津子、要潤、北村匠海、金井克子、志賀廣太郎、小林聡美、三鴨絵里子、越野アンナ、久保佑太、Kilt、田村健太郎、温水洋一、野村周平
パンフレット:★★★★(720円/情報がいろいろと載ってるし、作りもしっかりしてるし、良いパンフ)
(あらすじ)
女手ひとつで娘を育てあげ、自分の望む人生を送ることができなかった73歳の瀬山カツ(倍賞美津子)は、ある日、娘(小林聡)とケンカして家を飛び出すい。吸い寄せられるように1軒の写真館にたどり着いたカツは、そこで写真を撮り、店を出ると20歳の姿に戻っていた。かつての美しい姿を取り戻したカツ(多部未華子)は、髪型や洋服、さらに名前も節子と変え、新しい人生を楽しみはじめる。やがて商店街ののど自慢大会に出場し、昭和歌謡を熱唱して会場中を魅了した彼女に、夢見ていた歌手になるチャンスが舞い込む。(以上、Movie Walkerより)

予告編はこんな感じ↓




90点


※本作については自分なりに高い点数を付けましたが、当ブログ主は韓国版が大好きなゆえにかなりキツイ文句も書いているので、この映画が好きな人は気をつけて!
※今回の記事は、村上もとか先生のボクシング漫画の名作「ヘヴィ」のネタバレにも触れているので、気をつけて!


「オリジナルの韓国映画がスゲー好き」「多部未華子さんの大ファンというワケではないものの、『ヤスコとケンジ』は毎週観て、好感を持っていた」ということで、「2016年に絶対観たい新作映画10本」の1本に挙げるほど楽しみにしてまして。4月1日の公開日、仕事の打ち合わせの帰り道、TOHOシネマズ日本橋で観て来ました。「頑張ったねぇ… (iДi) ウェェェェ」と思ったり。


公開までオリジナル版のサントラを聴いて、テンションを上げましてね。
オリジナル版のサントラ

公開初日にTOHOシネマズ日本橋へ。1番スクリーン、ほぼ満席でした。
1番スクリーン

食事がまだだったので、チキンピタサンドを買っちゃいました。普通に美味いよね。
チキンピタサンド


最初にお話について触れておくと、多少の変更はありながらも、基本的なストーリーはオリジナル版とほぼ一緒でして(まぁ、いろいろな国でリメイクされるほどの話ですからな)。箇条書きにすると、こんな感じ↓


① いろいろあってションボリした主人公(老婆)が写真館に入って撮影
20歳のころに若返る
③ 素性を隠して、自分に気がある幼なじみ(ジジイ)の家に下宿する
④ カラオケで昔の歌謡曲を歌っているところをプロデューサーと自分の孫に見初められる
⑤ 孫とバンドを組むことになる(主人公はボーカルを担当)
⑥ 不意のケガから、血を抜くと老婆に戻ることが判明する
⑦ フェスの出場が決まって、プロデューサーと恋仲になる
⑧ ライバルだった老婆が死亡→通夜で好きだった飲み物を供えてあげる
フェス当日に孫が交通事故に遭う
⑩ とりあえず孫が作った新曲を歌う
⑪ 病院に駆けつけると輸血しようとするも、自分の子どもに「あなたの人生を生きて」と言われる
⑫ でも、やっぱり孫に輸血して、元の老婆に戻る
⑬ 映画冒頭の問題は解決したムードの中、写真館の力で若返った幼なじみのバイクに2ケツして終了



もうね、最初に不満を書いておくと、オリジナル版よりコメディ色が強くなってまして。ごめんなさい、全体的に大仰で安っぽいというか。僕と同年代(1972年生まれ)の方は高確率で月曜ドラマランドを思い出すムード…って伝わりますかね (´・ω・`) ウーン 劇中の曲や演出の「面白いコメディですよ~」って雰囲気がちょっとキツかったなぁと。オリジナル版から細かいところを改変してるんですが、序盤はあまり良くなくて。倍賞美津子さん演じる老婆カツが商店街でわざとらしく嫌われる行動を取りまくる場面とか、かなり苦手でしたよ。それと、カツの「長生き」の絵馬の伏線のためとは言え(この絵馬が娘のためだってわかった時はワンワン泣いた)、「女児が母の浮気を嘆く絵馬を書くシーン」はあざとすぎてイラッとしましたね。


冒頭の倍賞美津子さんのパートは、キツかったです。
73歳のカツ


幼なじみのジジイ・次郎(志賀廣太郎)の職場を銭湯に変えたのは別に良いとしても、そこにライバルの相原みどり(金井克子)がバリバリ着飾ってくるのはいくら何でもバカバカしいし、若返ってからひったくりを捕まえる流れもそんなに上手くないしさぁ…。あと、「若返り」も喜ぶだけですぐ受け入れてたけど、異常事態なんだからまずは写真館に戻ろうとするんじゃないの?(というか、あの写真館は行きつけの神社の近く→昔からあった設定?) 交通事故のシーンも「バンドの元ボーカルが声を掛ける→事故」って、明らかにダメな改変じゃないでしょうか(「あとでバンドに戻るためのキッカケ」だとしても気分が悪い)。ラスト、「プロデューサーが節子と一緒に撮った写真を確認しようとする→姿が消えてる」ってのも、オリジナル版のさりげなく切ない別れが良かっただけに、超蛇足に感じました。


ひったくりを捕まえる場面、いくらコメディでも、展開も描写も不自然すぎて萎えちゃったなぁ。
ひったくりを捕まえた!

あと、オリジナルで良かった龍虎乱舞シーンがなくて残念だった…というどうでも良い文章。
龍虎乱舞


で、一番どうかと思ったのは、歌。多部未華子さんの歌声自体は魅力的であり、思わず映画鑑賞後にサントラを購入するほどだったし、昭和歌謡の選曲の数々はオリジナル版よりグッときた…というのは、僕が日本人だからというのもあるとは思いますがー。「見上げてごらん夜の星を」は、母娘モノ繋がりで「八日目の蝉」を思い出して嗚咽を漏らしながら聞いたし、テレビ出演シーンで歌う「悲しくてやりきれない」は回想シーンの素晴らしさもあって「この映画、100点!m9TДT) ビシッ」と心から思わされるほどだったんですけれども! クライマックスのフェスで歌った「帰り道」はまったく乗れなかったのです…。


サントラ、新宿のタワレコで買ってしまったのでした。
サントラを購入した!


なんだかんだ言って、フェスのシーンまでの僕は、胸を掴まれまくって泣きながら観てましてね。それ故に、多少は好きじゃない雰囲気の曲だろうとも、スムースに受け入れようと思ってた。なんならズボンとパンツを下ろしてたぐらいの万全の態勢だったんですが…(残念な文章)。これは僕がオリジナル版の「もう一度」が発狂するほど好きというのもありますけど、「帰り道」は根本的なところがダメだと思って。「もう一度」は歌う祖母だけでなく、作った孫の気持ちも反映されている歌詞なんですよ(孫はバンドが一度失敗した上に曲作りでもダメ出しをされる→「ONCE AGAIN!ヽ(`Д´)ノ」という状況だった)。それが「帰り道」は祖母の気持ちしか入ってないから、浅く感じちゃったんですよね…。

それに、「もう一度」はアップテンポのアイドルポップスっぽいのも良かったんです。というのは、「若返ってからの回想シーンが流れる」という演出と相まって、「誰だって輝いてた時期があるんだよ」ということを音楽で感じさせる意図があったのではないか(駆け抜けるような感じも含めて)。それが「帰り道」はなんというか…。あの歌いにくさ、音楽に疎い僕が「なんかMy Little Loverとかが歌ってそう」とか思ったら、エンドクレジットで小林武史さんの名前を確認したから、なるほどなぁと。なんかこの曲、売り出し中のanderlustの曲だったりするそうですが、「変な色気を漂わせずに、この映画の“あの場面のためだけの曲”を作れよ」って心から思いました。この点だけは今も超ガッカリしております。


フェスで「セーイ!」とか「カモーン!」とか言い出すのも好みじゃなかったです…。
フェスのシーン


ただ、こんな不満を帳消しにする要素がかなりありまして。まず、多部未華子さんが良かった! この映画を見終わった後、映画駄話会でお会いしたはちごろうさんが「オリジナル版と比べると、多部未華子が可愛すぎる」「井上真央あたりが良かったのでは?」なんておっしゃっていて、言いたいことはスゲーわかるというか(微妙に井上真央さんに失礼な文章)。オリジナル版の良さは主人公を演じたシム・ウンギョンが美人じゃないことで「誰だって輝いてた時期があるんだよ」というメッセージがより伝わってくるわけでさ。だから、確かに多部未華子さんが可愛すぎるのは問題だと思ったものの、「それはそれで可愛いからいいや (´∀`) ウフフ」という着地(台無しな文章)。歌も上手かったし、オリジナル版という強敵を前によく頑張ったのではないでしょうか。


多部未華子さんはとにかく可愛い…可愛いのです… (´Д`;) ハァハァ
可愛い多部未華子さん

主題歌には文句をつけたけど、他の曲はノー問題。「悲しくてやりきれない」の場面は100点でしたよ。
ナイス、歌唱!

風呂でのぼせて白目を剥くシーンも! 「ちはやふる」といいアンダーテイカーといい、白目の時代、ですな(知った風な口調で)。
多部未華子さんの白目


他のキャスティングも非常に良かったです。カツ役の倍賞千恵子さん、プロデューサー役の要潤さん、幼なじみのジジイ・次郎役の志賀廣太郎さんに、その娘役の三鴨絵里子さん、死んでしまうライバル役の金井克子さんなどなど、「オリジナル版の韓国人キャストを日本人に改造したんじゃないか!? Σ(゚д゚;) マサカ!?」と思うほどに違和感なくハマッてた印象。孫役の北村匠海さんも良い感じで、ちゃんとギターを弾ける人を配役したのは偉いなぁと。そして、後述しますけど、カツの一人娘・幸恵役の小林聡美さんも最高でしたねぇ…(しみじみ)。


「仮面ライダーG3」が好きだったので、要潤さんが出てくるとうれしいし、頑張ってほしいのです。
プロデューサー役の要潤

北村匠海さん、これから売れそうな予感がしました。
孫役は北村匠海

次郎と娘の2人も良いキャスティングでしたね~。
銭湯に下宿

ちなみに野村周平さんは若返った次郎としてオチに登場してましたよ。
最後に出てくる野村周平


でね、僕がこの映画が「オリジナル版を超えた!∑(゚Д゚)」とすこぶる感心した部分があって。それは主人公の子どもの設定を“奥さんがいる息子”から“シングルマザーの娘”に変えたこと。オリジナル版が大好きな僕ですが、どうにも飲み込めなかったのは、嫁姑問題でしてね。オリジナル版の息子は、自分の奥さんが心臓を病むほどにイヤミを言われたりしてるのに、韓国の儒教精神だか何だか知らないけどさ、母親を優先して奥さんを全然フォローしないからムカつくんですよ。「お互い軽口を叩けるぐらいがいい」という最後の着地も、なんかご都合的に見えてイラッとするし。

それゆえ、オリジナル版のクライマックスで息子が母親に「自分の人生を生きて」みたいなことを言うシーンはそこそこ感動しながらもマザコンがすぎて違和感も感じたのですが…。今作の主人公の子どもは「バツイチのシングルマザー」なので嫁に対するイヤミ描写がない→オリジナルにあった居心地の悪さを排除しているのです。


オリジナル版のラスト、感動しつつも“奥さんをないがしろにしてた感”が少し雑音になったんですよね…。
親思いの息子


そして、母と娘の立場が同じシングルマザーということを利用して、「娘が母親を探す過程で自分を育てるために苦労したことを知る→同じシングルマザーとして共感する」という要素を入れたのも素晴らしくて。だからこそラスト、対面時の娘からの感謝がスゲー泣けるのです。韓国版では「お世話になったドジョウ鍋屋の秘伝の味を盗んで、同じ市場内に店を開いたため、恨みを買っている」というハードな設定だったのを「怪しい健康食品を売ってた」ぐらいにスケールダウンすることで気まずさを消したのも良かったですな。


韓国版は相手の店が潰れたりしてるから、少し心にしこりが残るんですよね。
よくも秘伝の味を盗んで!


さらに超感動したのは、シングルマザーへの優しい目線が追加されていたこと。少し前の話、川崎リンチ殺人の被害者の母に対して偉そうな口を叩いた林真理子と江原啓之に関しては、足のつま先からじわじわと腐って激痛で発狂寸前まで追い込まれる奇病に罹りながらも長生きしろと心から思っているワケですが、もちろん中には能力がワンダーウーマン並みに高くてドゥームズデイの攻撃もサラリと防げる級の母親もいますけれども、基本的にシングルマザーは大変じゃないですか。僕が母と2人で暮らし始めたのは中学3年からですけど、僕を養うのは相当苦労してましたし(そんな時、僕は親の金をちょろまかして焼肉を食べていたーー ('A`) ゴメンナサイ)。僕の奥さんのママ友のシングルマザーのアユミさん(仮名)の例を話すと、急に残業することになったりして、託児所に預けるのも手間だからウチの奥さんが彼女の子どもを預かったりしてさ、とにかく大変なんですよ(そんな時、僕は六本木で「ボーダーライン」を観ていたーー ('A`) スミマセン


RHYMESTERの名曲「Hands」を貼っておきますね↓




でもね、この映画は優しいのです。「虐待…? 川´д)ヒソヒソ (´д`しヤダワァ」なんて白い目で見られる“疲れたお母さん”に対して、節子が「頑張ったねぇ」と声をかけてお母さんがワンワンと泣く場面はね、ちょっとわざとらしいと思いながらもスゲー泣けたんですけれども。さらに、その「頑張ったねぇ」を“母の苦労をあらためて噛み締めた幸恵”が“若返った節子”に言ってあげるラストはね、多部未華子さんと小林聡美さんの素晴らしい演技もあって、凄まじい破壊力を生み出していて。村上もとか先生の名作漫画「ヘヴィ」で例えるなら、オリジナル版が通常のトルネードアッパー並みの威力だったとするならば、日本版はダブルトルネードと言っても過言ではない…って、何が何やらですな (´∀`;) エヘヘ


韓国版のラストは、通常のトルネードアッパーであり、これはこれでスゴい威力なのですが。
トルネードアッパー

この2人のシングルマザーが生み出した感動は…。
娘・幸恵役の小林聡美

もはやダブルトルネードだったのです! …ううむ、誰もこのブログについてきてくれてない気がしてなりません。
ダブルトルネード!


そんなワケでね、韓国版より文句はかなりあるものの、韓国版よりメッセージが伝わりやすくなって良かったというか、母娘の物語にやられたというか。TOHOシネマズ日本橋の観客がよく笑ってよく泣くおばさんまみれだったおかげで、実に温かい雰囲気で鑑賞できたのもプラスでしたね~。オリジナル版を未見の方がどう思うかはわかりませんが(汗)、スゲー好きな映画になりましたよ。すっかり影響を受けた僕は、来月の母の日に実家に帰ったら母さんに「頑張ったねぇ」とあらためて感謝しようと思ってるし、パートで働きながらも娘の育児や家事を頑張るウチの奥さんも「頑張ったねぇ」と褒めてあげたい…って、「こんな駄文を書く暇があったら、お前も家事と育児をやれよ ( ゚д゚)、ペッという、読んでいる方のごもっともな声が聞こえたところで、この駄文を終えることにしますね… ('A`) スミマセン




ファン・ドンヒョク監督×シム・ウンギョン主演によるオリジナル。僕の感想はこんな感じ



サントラ、買っちゃいましたよ。



映画のノベライズでございます。



老人が若返って無茶をする楳図かずお先生の名作漫画。最後が寂しかった記憶。



水田伸生監督の映画って1本も観たことないんですが、これだけテレビでちょっとだけ観た記憶。



韓国映画の日本版リメイクで微妙だった映画。僕の感想はこんな感じ