オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分(ネタバレ)

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分

オン・ザ・ハイウェイ

原題:Locke
2013/イギリス、アメリカ 上映時間86分
監督・脚本:スティーブン・ナイト
製作:ポール・ウェブスター、ガイ・ヒーリー
製作総指揮:スチュアート・フォード、スティーブ・スクイランテ、デビッド・ジュールダン、ジョー・ライト
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
衣装:ナイジェル・エガートン
編集:ジャスティン・ライト
音楽:ディコン・ハインクリフェ
音楽監修:ニック・エンジェル
出演:トム・ハーディ
声の出演:オリビア・コールマン、ルース・ウィルソン、アンドリュー・スコット、ベン・ダニエルズ、トム・ホランド、ビル・ミルナー
パンフレット:★★★(720円/コラムが2本入ってて、デザインも良い感じ)
(あらすじ)
超高層ビルの工事を手掛け、翌日に重要な作業に控えている大手建設会社のエリート社員アイヴァン(トム・ハーディ)。妻と息子たちの待つ家に帰ろうと愛車のBMWに乗り込むと、1本の電話がかかってくる。それを機に、彼は自宅ではなくロンドン方面の高速道路に車を走らせていく。電話で部下に翌日の作業を一方的に押し付け、妻に自宅に戻れなくなった原因を告げるアイヴァン。一刻でも早くロンドンに向かおうとする中、困惑する部下、解雇を宣告する上司、憤怒する妻からの電話を受け取る。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




75点


※今回の記事に関しては、私設刑務所さんのブログが素晴らしいので、そちらを読んで!
※今回の記事は、「新しき世界」の序盤の大切なシーンのネタバレをしているので、できれば「新しき世界」を観てから読んで!


確か「ゼロの未来」を鑑賞した時予告編を観まして。その時は「まぁ、面白そうだな~」程度の興味だったんですけど、何気に周囲の評判が良さげだったので、7月の中旬、恵比寿ガーデンシネマにて会員サービスデーを利用して観てきました。「胸が痛い!(´Д`;) イヤーン」と思ったり。今作は、衝撃のエンディング云々的な内容ではないものの、ネタバレを知らない方が楽しめることは間違いないので、できるなら映画を観てからこの駄文を読んでいただけると幸いです。


恵比寿ガーデンシネマ、オサレな雰囲気は少し苦手だけど、劇場がキレイなのは普通に良いよね。
恵比寿ガーデンシネマ

記事の切り抜きも“さりげなく飾ってある雰囲気”なのです (`Δ´;) オノレ...
記事の切り抜き


監督のスティーブン・ナイトと言えば、初監督作の「ハミングバード」がジェイソン・ステイサム主演の割には少し不思議な味わいの作品だったんですが、今作も「上映時間中、ずっと車を運転する主人公と車内が映るだけ」とかなり実験的。「全編、車載カメラ風映像で構成した作品」はポール・ウォーカー主演のカーアクション「逃走車」があったものの、こっちは会話劇がメインということで、「そんな映画、面白いの?」と思ってしまいがちなんですけれども。これが面白いからビックリなのです!m9`Д´) ビシッ


この映画はトム・ハーディ演じる主人公が車を運転しつつ、携帯電話でいろいろな人と話しながら、考え込んだり…。
考えるトム

いろいろと頭を悩ませたり…。
頭を悩ませるトム

“あの世にいる父親”に対して電波っぽく文句を言ってみたり…。
鏡に怒鳴るトム

夜のハイウェイがイメージっぽく流れたり…。
夜景

老婆のボケを優しく拾ったりする作品なのです…って、違う映画の画像が混ざっちゃった!∑(゚Д゚) ワザトラシイ
拾ってくれるマックス


乱暴に内容を書くと、「主人公が、1年前の浮気で妊娠した女性(まったく愛してない)が子どもを産もうとしている病院に車で向かう途中、全部電話で片付けようとしたら仕事も家庭も失った」というお話。主人公のアイヴァン・ロックは、“責任感がある風の男”ではあるものの、超自己中野郎でもあって。いくら突発的な事態だったとしても、責任者として準備を重ねてきた大規模なコンクリート工事の前日に「他の奴に任せる」とか、どの角度から考えても社会人としてダメすぎるのではないでしょうか(しかも電話で!)。工事の段取り自体は無事に終わってたけどさ、会社から他の人が派遣されて来たりとか、かなりバタバタするんじゃないの? せめて現場で話をまとめてから車に乗り込むべきでしたよね、この人。

奥さんへの態度も驚くほど酷い。「浮気相手が妊娠して、その子どもを認知する」なんて話を電話で済ませようとする上に、そんな話をしておいて仕事のための手助けをさせようとするし、何よりも短時間で許しを請おうとする姿勢が傲慢すぎじゃないですか。しかも、この男はそのくせ「オレは責任を取るんだ (`・ω・´) キリッ」みたいなことをブツブツ言うから、結構イライラするのですが、しかし! それは製作者の狙いなのです ( ̄ー ̄) ニヤッ

要は「(自分なりに)正しいことをする」と身勝手に決めた男が約2時間ですべてを失って、「その決断は正しかったのか?」と考えさせられる話なんじゃないかと。もうね、超キツいのがラストの“電話で泣いている息子と会話する場面”で、子を持つ親としては自分のせいで我が子を悲しませることほどツラいことはないワケですよ。このシーンは地獄のようで、僕も「なんで浮気なんかしてしまったのだろう… (ノДT)」「せめて避妊をしておけば… (ノДT)」と後悔の涙が流れたほど…って、僕はしてませんが!ヽ(`Д´)ノ キィィィィ!


「泣く息子との会話シーン」を観た時の僕の心境を代弁する愚地独歩の画像を貼っておきますね。
見るにたえねぇ


ただ、その後の「病院からの電話で赤子の声を聞いて映画が終わる」というオチは、多くを失った男に訪れた唯一の救いという感じがして、これもまたグッときたというか。人間、生きていれば誰かを裏切ったり、何かを失ったり、大きな間違いを犯したりすることはあるけど、「人生に向き合っていれば、光はある」ということなんじゃないかと思ったり思わなかったり! ヘ(゚∀゚*)ノ タリ!

もうね、ずーーーーーーーっとトム・ハーディが映りっぱなしで、携帯で他の人と話すだけなんですけど、彼の演技の見事さと工夫されたカメラアングル、考えられた脚本のおかげで、全然飽きなかったのがスゴいなぁと。「どういう着地になるの?(´Д`;)」という興味を持続させるだけでなく、例えば現場の部下に話す注意点が主人公の人生と重なったりする点も感心いたしました(「一つのミスで完璧なものがダメになる」とか「アルコールはダメ」とか)。ちなみに、邦題は上映時間に合わせて「86分」となっていますけど、たぶん劇中は完全にリアルタイムというワケでもなく。夜景が映ったりする場面では若干の時間経過があったっぽいムードでしたよ。それと、原題の「Locke」は主人公の名前なんですが、主人公が父親にこだわっていたり、新たに子どもを得るラストを考えると、原題でもアリな気がしました。


トム・ハーディ、マックスを演じた人と同じとは思えませんでしたよ。役者さんってスゴいね。
活躍するマックス


まぁ、身も蓋もないことを書くと、海外ドラマ「24-TWENTY FOUR」を観た時にもよく思うことなんですが、みんなのレスポンスが早いというか、「いろいろと起こりすぎじゃね?」感は強かったです。特に奥さんとか、電話であんなショッキングな浮気告白をされたら、数時間は電話に出なかったりするのが普通じゃないかしらん。あと、ふと思ったのが、「コンクリート工事ってあんな段取りで済むの?」という疑問。実際のところはわかりませんけど、もしかするとコンクリート工事に詳しい人からすれば、「公式サイトで絶賛されている人たちに実際の現場関係者がいますか?」「コンクリート考証の部分がかなり雑」「できれば『新しき世界』での上質なセメントゴクゴクを観てほしい」などと思うのでは…なんて文章を思いつきで書いてみたんだけど、君はどう思う?(唐突な問いかけ)


夢でうなされるほど怖かった「新しき世界」のセメントゴクゴクの刑を貼っておきますね。真似しちゃダメ絶対!ヽ(`Д´)ノ
セメントゴクゴクの刑


ううむ、例によってどうでもいい文章が多めになってしまいましたが、実験的で面白かった上に、「浮気しちゃダメだな… (`Δ´;) ヌゥ」と思わされて良かったです。最近、実は「カラフル」を見直した時もそう思う部分があったんですけど、僕の中の“浮気がダメな理由”の「奥さんを裏切るから」「相手の女性にも失礼だから」「人として最低だから」という品揃えに、新商品「子どもが悲しむから」が加わった感じ。何はともあれ、スティーブン・ナイト監督作は今後もチェックしようと思いました。おわり。




スティーブン・ナイトの初監督作。僕の感想はこんな感じ



なんとなく連想したポール・ウォーカー主演作。僕の感想はここの1つ目に書いてあります。



なんとなく連想したシドニー・ルメット監督作。7時58分に何が起きるのか!?



ジェームズ・マンゴールド監督作。3時10分に決断しなくちゃならないのです… (´・ω・`) ドウシヨウ



今は亡きTomato n' Pineの名曲。次のソリは7時58分!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン