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「できるできないとか関係なく、まずいちばんの理想を考えなよ」

 

 

 

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松浦弥太郎氏が手がける

『仕事と生活ライブラリー』シリーズの

7冊目にあたる。

ゲストは写真家の蜷川実花さん。

 

 

 

「ラッキースター」というのは

彼女が立ち上げた

事務所の名前でもある。

 

 

 

写真を撮ることが好きで

そしてそれを仕事にして

エネルギッシュに活躍をしてきた彼女の、

写真への愛や熱意が語られている。

 

 

 

 

 

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蜷川実花さんにとって

写真を撮ることは

「好きなこと」であり、

「日常そのもの」だ。

 

 

 

私は、本当に撮っているのが好きみたい。例えば、もし3日空いたら、自分の作品を撮りにどこかに行ってしまうし、明日1空いて、天気がよさそうだったら、空いた時間に花の撮影に行ってしまう。だから、写真のことしか日々していないし、考えていないと思うんです。休日だって、写真を撮っていることには変わりないから、何をもって休みというのかが、分からない。休むのが本当にダメみたい(笑)。

 

 

 

 

プライベートだからとか

仕事だからと分けて考えるのではなく

全部が彼女の日常につながっている。

そして、写真に向き合うときの彼女は

好きなことだからこそ、こだわって、

誰よりも情熱的な姿勢を貫いている。

 

 

 

例えば、

一つ一つの作品を丁寧にやるということ。

 

 

 

写真を撮ることに慣れてしまうと、

癖だけである程度のクオリティを作れてしまう。

クライアントが期待しているような、

それなりの「蜷川実花」っぽい写真が撮れてしまう。

 

 

 

ちょっとでも気を緩めると

以前のアイディアを使いまわしただけの

自分のコピーをしてしまう危険があるから、

大切なのは、新鮮な気持ちで居続けること。

 

 

 

あえて緊張するような仕事を受けてみたり

やったことのない世界に挑戦する。

自分で自分を追い込みきれないなら、

追い込まれるようなところに身を置く。

 

 

 

到達点がどんなに遠くても、一個一個細かく、手前から順を追って一生懸命がんばって考えると、まず、目の前の石をどけようということが見えてきたりすると思うんですよ。(中略)大事なのは、到達点を思い描くことと、その道筋を自分の目の前から思い描けるかということなんです。

 

 

 

そんな彼女、子供の頃は神経質で

「地獄絵図」を眺めるのが好きで

わかりやすいくらい

死と直結したものに惹かれていた。

 

 

 

両親の影響で演劇に興味があったけど

親からは子役はやるなと止められていた。

中学生の頃に雑誌の『オリーブ』をみて

雑誌のようなコーデを真似して

友達と写真を撮り出した。

 

 

 

高校生の頃に一眼レフを手に入れるが

その時点では写真家を目指したわけではない。

途中で絵を描く面白さにはまり、

美術系の予備校に通い出す。

 

 

 

ところが予備校で習うのは

受験のための絵の描き方であって

絵はどんどん上手くなっていくけれど

「絵はこう描くべき」ということも

同時に身について行ってしまった。

 

 

 

一方で趣味にしていた写真は

誰からも習っていなかったので

人からああだこうだと言われないで済む

「自分だけの大事な聖域」でいられた。

 

 

 

大学時代に様々な公募展に出品し

「写真ひとつぼ展」に2度入選する。

作品が雑誌に載ったり、

初めての仕事の依頼が舞い込んだり。

 

 

 

しかし、

モノクロのセルフポートレートばかりを

今まで撮ってきた彼女は

同じような作品から脱却するために

どうしたらいいかと行き詰まる。

 

 

 

そんなときに思い立ったのが

モノクロではなく

カラー写真を撮ることだった。

 

 

 

 

 いままでやってきて無駄なことがないと初めて知ったのもこの時なんです。いまでも感じることはあるけれど、全てが手をつなぐ瞬間というのが、何年かにいっぺんある。当たり前すぎて恥ずかしいんだけど、ああ、私のしてきたことで無駄なことはひとつもないんだ、実感できる瞬間があります。

 

 

 

 

 

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巻末の松浦弥太郎さんと

蜷川実花さんの対談で。

 

 

 

 

「基本は、「こんなの撮ったよ。見て見てー」っていうことなんですよね(笑)、私。

 

 

 

自分が見つけたこと、

心を揺さぶられたものを、

みんなと分かち合いたいという

理屈抜きの純粋な気持ち。

 

 

 

それを伝える術が

蜷川さんの場合は写真で

松浦さんの場合は文章で。

 

 

 

「誰かがクリエイトして感動するものっていっぱいあると思うんですよ。だけど、寂しい気持ちにさせない作品っていうのは、そうはなくて。蜷川さんの作品は共通して、それこそ雑誌のファッションページにしても、楽しいよねってみんなで見てる感じがする。」

 

 

 

 

 

見る人を「寂しい気持ちにさせない」。

それってすごいことなんじゃないか。

 

 

 

鮮やかな色彩感覚や

その一瞬を切り取るという

刹那的な写真の特性に

「しなやかな強さ」があるのは

蜷川実花その人の生き様が写っているのかも。

 

 

 

 

目が眩むほどの極彩色の花や金魚、

若くて可愛くて妖艶なモデルたち、

ほんの少しの毒気を孕んだ、

どこにもないビビッドな写真。

 

 

 

写真の向こうから

「見て見てー!」っていう

純粋にキラキラとした

好きのパワーが溢れている。

 

 

 

 

 

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▽企画展があったとき。

極彩色の世界に呑まれる、

鮮明な衝撃。

 

 

 

 

 

 

▽最初に読んだ蜷川実花の本。

『オラオラ女子論』って題名が

彼女すぎてすき。

 

 

 

 

 

 

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