かめ新聞 -126ページ目

流行建築通信3/UFO


 ピンクレディ/UFO
 信じられないことばかりあるの
 もしかしたらもしかしたらそうなのかしら
 それでもいいわ近頃少し
 地球の男にあきたところよ

 薄い壁の実現には、断熱材技術の向上が欠かせない。
 断熱塗料が普及してきているが、これはもともとNASAの技術だ。
 思い出すのは、野口さんの乗ったディスカバリー号。断熱材が機体から剥離した。前回のコロンビア号落下の原因はこの断熱材の剥離だとされている。船外で作業する野口さんにも感心したが、断熱材もかなりの優れものだろう。飛行機やロケットの機内と外部との環境差異は建築環境の比ではない。(宇宙での剥離は人命に関わるが)
 実はこの宇宙断熱材の技術(JAXA参照)が民間企業に移転されることになった。建築分野への実用化も決まっている。これまでの断熱塗料をはるかに凌ぐ-100~+150度までに対応するという。もう断熱材は張るんじゃなくて塗るんだって。
 これでは、薄い壁の流行がますます加速してしまう。
 そのうち建物は新幹線やロケットみたいなかたちになる。
 当然、内部は完全な人工環境に間違いない。

 信じられないことでしょうけれど
 ウソじゃないのウソじゃないのほんとのことよ
 それでもいいわ近頃少し
 地球の男にあきたところよ

流行建築通信2/薄壁


雑誌を飾る建築写真には透明人間ばかりだ。右の写真にもいますよ。

このごろの建築、実に壁が薄い。
○妹島和世の「梅林の家」
壁は外壁も間仕切り壁もすべて16ミリの鉄板。たった16ミリの構造壁。柱はもういらないようだ。子どもが段ボールで家をつくるみたいに鉄板を組み立てる。ちなみに壁仕様は鉄板16ミリにウレタン吹付けが15ミリの上、石膏ボード張りで、壁厚は全部で50ミリ。これでいいらしい。
○ヨコミゾマコトの「富広美術館」
鉄板9ミリがやはり構造壁だ。こちらはリブが付いて少し壁厚は厚く、ウレタンも30ミリとってあるがそれでも全部で86ミリ。
○藤本壮介の「T-house」
木造の構造用合板12ミリが壁厚だ。柱と呼べるものは45ミリ角の間柱しか見当たらない。
○安藤忠雄の「hhstyle.com」
裏原宿では、安藤先生までもが鉄板16ミリの構造壁仕様になり、折り紙のような建築と仰る。
どうやら、明らかに柱は避けられ、嫌われている。

流行建築通信1/透明人間


 ピンクレディ「透明人間」
 透明人間、あらわるあらわる
 ウソを言ってはこまります
 あらわれないのが透明人間です

 という歌がむかし流行った。
 透明人間があらわるという言葉の矛盾を歌にして遊んでいる。
 現代建築の「透明なガラス」という響きはどこかこれと似たような矛盾をかかえている。
 別に、言葉としては何も間違っていないが、透明さと大きなガラス面を追い求めても、ガラスの存在感は増すばかりなのだ。

ニッポンイチの風景/新宿編


 かめ設計室から見える風景にいくつかの日本一がある。
 東向きの窓から見えるは新宿区。

 新宿駅の一日の乗降客数が日本一の320万人だという。JRだけでも150万人が乗降する。なんなんだこの数は。同じ新宿区の高田馬場駅では乗降客は1日約44万人なのだが、1ホーム当たりの乗降客数では日本一になるのだそうだ。あれ以上の混雑は無いのだと思えば、もう怖くはないか。よく大したトラブルも無く毎日それだけの人をさばけているもんだと関心さえする。

 話はガッタンと脱線するが、先日閉幕した愛知万博の入場者数が最終日でさえ24万人だと聞いた。新宿駅の比では無い。そういえば先日オープンした秋葉原のヨドバシカメラは初日から4日間で入場者が100万人を突破したらしい。まだ万博やりたいんならヨドバシカメラに任せた方がいいんじゃないか?

鮭の親子丼


 秋口になると、北海道ではどこのスーパーでも生筋子が並びます。生筋子の袋を破り、卵をひとつひとつバラバラにして味付けをしたものがいくらです。かめでも、生筋子からいくらの醤油漬けをつくりました。いくらの瓶詰めは量のわりに高くて手が出ませんが、生筋子から作ると量も値段もとてもお得です。あったかいごはんに、焼いてほぐした鮭と青じそをちらし、いくらをのせれば鮭の親子丼!旬な味でしょ。

ニッポンイチの風景/中野編


 かめ設計室から見える風景にいくつかの日本一がある。 
 20,067人/km2。これは、西向きの窓から見える中野区の人口密度。2,000以上ある市区町村の中で日本一高密度な町なんだそうだ。一人当たりに換算するとわずか50m2。道や川、公園などを差し引けば一人当たり10坪に満たない計算だ。その中で、飯を食い眠り風呂に入り仕事をしている。災害時には消防車は入れない、避難所は足りなそう、何より食料支援が追いつかないのでは、と心配になる。ところが驚くことに江戸の町人地では6万人/km2を超えていたらしい。中野区の3倍もあり、しかもほとんどが平屋か2階建てだったことを考えるとちょっと信じられない数字だ。
 そんな密集具合からか、古典落語の舞台にもなる江戸の貧乏長屋と騙し騙され、でも憎めない人付き合いの気風が、中野の商店街あたりに行くとたびたび感じられるような気もする。

かめうさぎ、現る!


 ひかり保育所のコメントより、いま話題の「かめうさぎ」。帯広・ひかり保育所より西新宿にやってきました!(帯広にいたとは、、)正式には「うさかめ」で、かめの仲間らしいのですが、今日は物思いに更けりながら新宿の夕日を眺めておりました。この後、突然思い立ったように、飛び跳ねていくんですが、残念ながらカメラに収めることはできませんでした。後ろ姿しかお見せ出来ず残念!こちらにお越しの際には是非。

アナログの生き様


 超大型ハリケーン「リタ」の如く、デジタルの無機的な波音が大きくなる。かなりでかい。青焼きの業者から連絡が入った。「10月1日から、感光紙の値段が3割程度上がる。今のうちに買っておいた方がいい。」・・・8月19日「アナログとデジタル」で触れたばかりだよ。感光紙の生産中止も時間の問題なのかな。需要のない商品からメーカーが撤退することは極めて明快な論理だし、こちらはそれを食い止めるすべも力も持ち合わせていない。

 写真はいまやっている住宅の設計図面。設計図はモノを作るための手段であり媒体であり、それそのものが目的ではない。そんなこと承知している。しかし小説家が万年筆と原稿用紙を取り上げられ、明日からパソコンで書いてくださいと言われるようなものだ。CADかぁ、と思うとただ憂鬱になるだけだ。

腰を掛ける椅子


 7月22日剣持勇と親父の椅子8月22日渡辺力と親父の椅子に続く記事。
 さりげないデザインにいつも憧れつつ、なかなかそれが出来ない。

 親父は自宅の小さな作業場で仕事をしていた。通りに面して引き戸がいつも開いていた。そこにひとつのスツールが置いてあった。手が仕事を覚えているので、話しながらでもどんどん仕事は進む。小さな釘を一気に口に入れ、一本ずつ上手に口から出してテンポよく釘を打つ。いつも近所のおやじ達が代わるがわるスツールに腰かけ、暇をつぶしていった。当時は近所にも自営業の人が多かった。子供心には、毎日のこのおやじ達への挨拶とその暇そうなウダツの上がらない雰囲気が嫌いだった。

 スツールとは背もたれも肘掛けもない椅子のこと。「腰を掛ける」という言葉はスツールのためにあるのかもしれない。仕事をする親父の横で、邪魔にならない程度に近所の人がちょっとの間ちょこっと「腰を掛け」、たわいもない話をする。こういうふうに生活をまちに開いてゆくさりげない行為をデザインしたいと思ってはいるんだけど、なかなか難しい。

デザインの効用


 こんな階段を公共施設で作ったら、税金の無駄だ!と叩かれるのか。公共事業の無駄が指摘される昨今、大阪ではフンデルトワッサーのゴミ処理施設が、過剰デザインの無駄と叩かれていた。化粧もリアクションも過剰な愛すべき大阪でさえそうなの?
 本屋に並ぶ雑誌には、モダン、の文字が踊る。いつからオシャレ=シンプル=モダンになったの?モダンな建築家はかたちに意味を求めたがり、あげくの果てには、説明を放棄するようにかたちを消し始める。それで?
 北新宿で見かけた外階段。まちを歩いていてこんなデザインに出会うとき、初心消えかかる思いをつなぎ止めてくれるようで、うれしくなる。