エンタメジャンキー記録。映画、マンガ、小説など消費したソフトの感想。 -25ページ目

『重力ピエロ』

原作は伊坂作品の中でも、とくに叙情的かつ文学的であるから

映像化によって、あの独特の語感・リズム・詩情が失われてしまうんじゃないかと懸念していたが

まったく杞憂だった

とにかく俳優、脚本、音楽が素晴らしくて

地味な話なんだけど、ラストシーンまで緊張感を失わせず、引き込まれる


ストーリーは原作そのまま

ある家族のパーソナルな物語

兄・泉水と弟・春、そして父

数年前に交通事故で母を亡くし、いまは3人家族

街の壁の落書きと、連続放火事件の関係性に気付いた春は、泉水とともに犯行を防ごうとする

しかし一連の事件が、自分たち家族の過去とつながりがあると分かり…


原作同様、ミステリー色は薄めだが

登場人物の心情と家族の絆に焦点を絞って、ドラマを丁寧に見せていく


森淳一監督の演出は、叙情的かつエモーショナル、まさに緩急自在で

こっちは感情をぐらぐら揺さぶられて、気がつけば泣かされてしまっていた

『Laundry』はあまり好きじゃなかったけど、本作は好き

そして

宣伝担当作品で一度ご一緒して以来、個人的に大好きな加瀬亮さんが、ホントに素晴らしかった

彼は演じた役の印象を強烈に残していく

しかもその印象は作品ごとにまったく違う

演じるために存在しているような稀有な俳優さんだ

『ターミネーター4』

大興奮の2時間!

やっぱりターミネーターはこうでなくちゃ!

1と2に見劣りしない最高傑作だ

役作りの鬼、クリスチャン・ベール演じるジョン・コナーがとにかくかっこよくてたまらない

機械が支配する近未来というキテレツな物語設定にもかかわらず、迫真の演技で作品にリアリティをもたせている

ほんとにすごい役者だ


監督は『チャーリーズエンジェル』のマックG

サービス精神旺盛な演出で次から次に、手を変え品を変え、あれもこれもと楽しませてくれる

この人、きっとすげえターミネーター好きなんだろうなあ

シリーズへのオマージュが至るところにちりばめられており、サービスカットてんこ盛り

ターミネーターファンも大喜びだろう

ガンズ・アンド・ローゼズの「Youcouldbemine」が流れた時は興奮のあまり、立ち上がりそうになった

3のジョナサン・モストウ監督はエンタメ職人としては超有能だが、オタク感性がゼロだから、ターミネーターを撮るべき人材ではなかった

だから3はメカもキャラもダメダメすぎて哀しかった
でも今回はちょっと凄い

かっこいいビジュアルの新メカが多数登場して視覚的にも楽しませてくれる

バイク型ターミネーターのモトターミネーター

AKIRAの金田バイクがターミネーターになったような感じ

流線型フォルムにギーガーっぽいトゲトゲディテールが最高にクールだ

追いかけまわされないのなら、ぜひ欲しいところだ

巨大ロボットターミネーターは、出来損ないのトランスフォーマーみたいだけど、雑な感じが逆に魅力

この時代、まだスカイネットも試行錯誤して、色んなタイプのターミネーターを実験的に作ってたんだなぁ…と読み取れて、感慨深い

そして!なんといっても!
T1000だ!

量産前試作機(なのかな)
シュワ超かっちょええ!

ジョン・コナーとT1000の邂逅は、4のストーリーの根幹を担う重要なシーンであると同時に、これまでのシリーズで描かれてきた宿命的な因縁の始まりでもある


ターミネーター4は、アクション・メカ・ドラマ三拍子揃った、最高にハイクオリティな娯楽大作

5があるなら同じチームで作って欲しい

『テンペスト』

琉球王国を舞台に描く大河ロマン

本屋大賞を接戦で逃したが、なかなかの力作だ

個人的には『告白』なんかより全然面白かった

前作『シャングリ・ラ』も、近未来エコ社会の森林化した東京、という物語・舞台設定が面白かったが、本作も負けていない


時は幕末

舞台は王政によって統治されている琉球王国

沖縄県として日本に属する直前、激動する王国の終焉までを描く


諸外国が覇権を争い、激動する国際情勢のもと

琉球はアジアの要所として各国から狙われていた

大国・清と日本・薩摩藩に挟まれた非武装小国である琉球が、他国の支配から逃れて存続するには

清と日本との中立外交によって政治バランスを保つという、極めて困難な道を行くしかない

琉球政府は、外国との交渉能力に長けた優秀な人材を求めていた

そこにひとりの天才少年が現れた

史上最年少で超難関の国家試験に合格した、孫寧温(そんねいおん)

…物語の主人公である

寧温は天賦の才能をフル活用し、数々の難局を乗り越えていく

しかし彼は誰にも言えないある秘密を抱えていた

実は寧温の正体とは、没落した王家の血を継ぐ天才少女・真鶴である

真鶴は、男性社会で自らの能力を試すため、宦官(男性器カット)のふりをして寧温を名乗り、女人禁制の王府に入閣したのだった


女の子が男のふりをして男子校に入る『花ざかりの男子たち』と

バイトの郵便物配達員が重役のふりをして会社の危機を救う『摩天楼はバラ色に』を足して

幕末時代劇ロマンスで味付けした感じ


正体がバレないように四苦八苦する、なりすまし=プリテンダーものの醍醐味が堪能できる

国の存亡を賭けた政治交渉のシーンでは、スリル満点の心理戦にヒヤヒヤ

中立政策を立案する場面では、登場人物と一緒に知力テストを受けているかのような臨場感にハラハラ

内外から仕組まれる数々の謀略をいかに切り抜けていくのか、サスペンス感にドキドキ

…と、色んな楽しみが味わえて大変お得な小説である

しかし琉球王国って、日本とは別の国だったのか

身近なのに全然知らなかった

劇中で描かれる独特の生活様式や宗教観がいちいち興味深く

なにより、琉球国民の視点で語られる幕末には、新鮮な印象を受ける


『シャングリ・ラ』に続いて厚めの上下巻だが、用語や人名に慣れてしまえばあっという間に読みすすめられる


下巻中盤の黒船のペリーとの交渉バトルが最大の山場
それ以降の展開が、ちょっとセンチメンタルに傾きすぎて失速してしまったようにも思う

最後にもうひとヤマあれば、本屋大賞も獲れたんじゃないかな