エンタメジャンキー記録。映画、マンガ、小説など消費したソフトの感想。 -16ページ目

『アンヴィル』

かわいそすぎて爆笑してしまったり、ひたむきな姿に泣かされたり、ロッカーなのに妙に親しみやすい彼らに感情移入して、いろんな意味でハラハラしているうちにエンドロールを迎えていた。
メタルファンじゃなくても必見。ドキュメンタリー苦手でもまったくもって問題なし。堅苦しさはゼロだから。情熱大陸ではなく、黄金伝説「売れないバンドを30年間続けろ」みたいなノリで見られる。
といっても中味は、どんな娯楽大作にも劣らない、ドキュメントならではのリアルな感動が味わえる傑作。

80年代にスマッシュヒット曲「メタルオンメタル」をひっさげて、ボンジョヴィのツアーのヘッドライナーをつとめ一躍ブレイク…

しそうになったがなぜかブレイクできず。以来、鳴かず飛ばずのまま30年。

人知れず活動を続けていたカナダのヘヴィメタルバンド、アンヴィル。

かつてメタリカが影響を受けたアーティストとして名前を挙げ、ちょびっと聴いてみたりしたこともあったが、正直なところ

まだいたのか!

と驚いた。

でも、彼らはまだいた。
売れないバンドは掃いて捨てるほどいる。世界中から売れないバンドマンをかき集めたら、一国が出来てしまうくらいいる。

しかし30年も売れないバンドはほとんどいない。

みんな自分に見切りをつけて、別の生き方を探すから。

バンドのヴオーカル兼リーダーのリップスは、給食運搬の仕事で得たなけなしの給料を、生活費とバンド運営費にあてて、音楽活動を続けている。
感情的でおしゃべり。バンドメンバーにダメ出ししてるうちに感極まって泣いてしまったり、ギャラを払わない店主にブチ切れて口汚く罵ったり、手紙を送ったプロデューサーからの返事に浮かれて大はしゃぎしたり…感情がそのまま表情と行動に直結しちゃう、愛すべきヘヴィメタマン。この映画の面白さは、彼自身の魅力に依るところが大きい。
バンドのドラマーは幼なじみの親友ライナー。ヘヴィメタなのにトイレにトイレの絵画を飾っちゃう、微妙なゆるさが可笑しいナイスガイだ。

彼らは自分たちの可能性を信じているのか、あるいは見切りをつけられずにいるだけなのか。
ギリギリの暮らしの中で、ロックスターになるという夢にしがみついて生きている。

当然ながら生活力に乏しいから、妻や親兄弟が、彼らの夢を支えている。

家族が言う。

アンヴィルはとっくに終わってしまっている。
でも彼らの成功が自分の夢だから支えてあげたい、と。

それでも、彼らはまだいる。まだ終わっていないと闇雲に信じて、見えない希望にすがりつく。

元ガンズ・アンド・ローゼズのギタリスト、スラッシュの言葉がすべてだ。

30年もバンドを続けているのは、ローリングストーンズとアンヴィルだけだよ。

ストーンズと彼らの違いは、たったひとつだけ。
成功しているか、していないか。

アンヴィルはまだいる。
夢の終わりを決めるのは自分自身であり、逆に言えば、自分から終わらない限り夢は見続けらるのだ。

『母なる証明』

殺人事件の容疑者として警察に連行された息子。軽度の知的障害のため証言があやふやで、自供ともとれる発言をしてしまい、犯人と断定されてしまう。

母は、息子の冤罪を晴らすために自ら事件を調べるが、やがて常軌を逸した行動をとり…


ポン・ジュノ監督は場面ごとに、さりげなく異常を潜りこませていく。
ちょっとした違和感が残る程度のディテールを積み重ねていく。

こちらは監督の意のままに翻弄されてしまい、気がつけば物語に没頭していた。
ミステリーとしても、人間ドラマとしても、もちろん映画としても力強い傑作。

『ヘヴン』川上未映子

主人公は中学生の少年

斜視を馬鹿にされ、酷いいじめにあっている

やがて彼は、同じようにいじめられている女生徒と心を通わせていくのだが…

いじめに関与せず、傍観しているだけの少年が主人公に言う

僕は君がされていることに興味がないし

いじめられていることを君自身が選択しているにすぎない

この言葉がどんな暴力よりも主人公を深く傷つける


いじめられている少女は

私たちは他の人よりも強いから、理不尽な痛みも引き受けることができる

と言って主人公に微笑みかける


傷口がじわじわ疼くような物語だった