次に愛媛県における感染症に対する危機管理広報、すなわち記者会見の在り方についてお伺いいたします。
生命を脅かすような危機的状況が発生した際にその事態を住民に知らせ、対外的にも発表していかなければならない場合の危機管理広報の役割は重大です。
住民がパニックになるのではないかと恐れ、過小評価して伝えてしまうことや
「そんなに恐れることはない」と住民に伝えることは、かえって混乱を生み対策が遅れ被害が拡大する恐れがあるため絶対に避けなければなりません。
これまでかつて経験をしたことがない緊急事態において世界各国のトップが国民にメッセージを出す姿が報じられ、国内においても政府や各都道府県知事が一斉に記者発表する場面を目にしてまいりました。
このような時トップが発信するメッセージや危機に立ち向かっていこうとする姿がどれほど重要であるかを思い知らされたように思います。
とくに危機管理の上で住民に向けての発表は、現場の状況を熟知している人間が現状を説明し最高責任者が方針を述べるといった広報が求められると思います。
今回、愛媛県では、知事が毎回記者会見していくことで県民の多くに注意喚起することができ、
ボードで発生状況を説明するなどわかりやすく伝えられていたと思いますが、
感染症のような医学的見解が必要な場合は専門家を交えて会見をしたり、
保健福祉担当者が状況を説明し、その上で知事が方針を打ち出していくことで、
より県民に対して信頼できる情報発信ができたのではないかと考えます。
また、愛媛県内における新型コロナウィルス感染症の発生についての記者発表の時期は感染が確認された翌日の午後に記者会見をするという場面が多くみられましたが、
報道機関や関係機関からの発表が先行したり、また県の情報よりも詳細な情報を報道において知る場面が多く、県の発表の遅さや不明瞭な情報に不信感を覚える住民も多くおりました。
このような場面を回避していくためにどのような危機管理広報がよいのかについて、
クライシスコミュニケーションのスペシャリストである蛯名玲子氏によると、
「感染症が発生した場合の情報発信はどこよりも先に正確な情報を出すこと、
他で情報を出すようになれば住民はそちらを当てにするようになり、信頼されなくなる」
と述べており、情報元である愛媛県の発表は
どこよりも早く詳細に情報提供していく姿勢が必要であると思います。
発表する内容に関して非公表のものが含まれることが多くなることも不安を与える原因となります。
蝦名氏は「人々がパニックに陥るのは、悪いニュースを聞かされたときではない。人々がパニックに陥るのは一部の情報が非公開にされ、真実が伝えられないと感じ、何を基準にして意思決定したらいいかわからない時である」と述べており、
個人のプライバシー保護を優先していくことを前提にしながら、住民への情報公開にはより透
明性のある内容が求められます。
さらに蛯名氏は住民の不安に共感することも重要だと指摘しています。
誰しも不安な気持ちになることや不満や怒りを持つことは当然であり、それを受け止め、共感していく姿勢を見せていくことで混乱も収まっていくと考えます。
また、記者会見で繰り返し述べられてきた誹謗中傷に関する注意喚起においては、どのような表現が誹謗中傷になるのか具体的な事例を挙げて注意喚起していく必要があったと思います。
住民がSNSで不安や不満を漏らす場面があれば、その不安な気持ちの表現を共感し受け止めていく姿勢をもって情報発信していくことが大切だと考えます。
危機管理広報アドバイザーの前田めぐる氏によると、誹謗中傷と、批判は別のものであり中には
愛着があるからこその健全な批判や、もっと良くなってほしいという気持ちからの批評もあると
提言されています。
愛媛県内では住民が自ら積極的にSNSで注意喚起したり差別をなくそうと呼びかけるSNS投稿も多くみられました。
このように住民が自主的に自己防衛していこうと行動している姿を後押ししていく姿勢も必要だと思います。
そこで、お伺いいたします。
新型コロナウィルス感染症対策における危機管理広報について、どのような考えで行い、今後どのような方針で行うのかお聞かせください。