映画『PERFECT DAYS』を観た さすがカンヌ最優秀男優賞 | 昼は会計、夜は「お会計!」

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封切り日の金曜日に待ってましたとばかり駆けつけた。ヴィム・ヴェンダース監督は小津安二郎監督に傾倒してたとは聴いていたが、開始から音も映像も淡々と進み、昨今の作品は音楽が必要以上に音が大きく、セリフも早口多弁型も多いのを観ていると比較すと、何しろ静かだしてに、映像が進んでいくが、中年の清掃員平山(役所広司)は、近くの老女の道路をはく音で目が目を覚まし、布団をたたみ、歯磨き、顔を洗い、出かける支度、玄関前でかぎとかフイルムカメラとか必要なものを順番にポッケに入れて、玄関ドアを開けて空を見上げてから外へ出る。出てそばの自販機で缶コーヒーを買い、軽トラに乗り込む。狭いい路地を抜けていく時にスカイツリーが近くに見えるので住んでるのは押上あたりか。そこから首都高にのって都心に向かう。そのあたりでカセットテープを押し込む。アメリカの70年代音楽が流れる。家がある下町の景色と首都高を抜けながら近代的な東京の対比を見せながら渋谷に着く。特別に新しくされたトイレグループの清掃を受け持つ。そのトイレに入り、ルーチン化された動作のもとに道具をかかえ、トイレに入る。そこで、一生懸命に清掃をする。仕事が終わると、うちに帰ると、銭湯の一番風呂に入り、その後、駅そばのいっぱい飲み屋で、酎ハイを呑んでうちへ帰る。スタンドの灯りを頼りに本を読みながら眠たくなると寝る。そして、また朝が来たら同じことの繰り返し。その毎日の中、同僚のアルバイトの青年(柄本時生)との会話も最低限のことしかない。そんな日々が繰り返される中、ある日突然、家の前に若い娘さんが待っていた。そこから少し揺れ動いていく。

 こんな作品を外国人監督が撮ったということが、まず驚きのと、役所広司という俳優と構想を完全に共有できたであろうことも驚きである。何気ない日常生活がこんなにも大事なのかということを教えられたような気もするし、役所広司演ずる平山のちょっとした表情の変化が何かを表すなど、確かに小津安二郎に代表する邦画の代表的な映画づくりの伝統が、こんなにも生きて、観るものを納得させる映画になることが証明されて嬉しい。

 ラストで長い平山のアップが続くが、その笑顔が作中にはなかったもので、その何気ない笑顔が表す未来の予感を感じさせ、静かにエンドロールが出てくる。

 なんとも言えないたいうか、途中で映し出される木の葉や陽の光の揺らぎのカットや平山が写すフイルムカメラの映像などが、間接的にこの映画の肉質(?)をつけていってる感じも、終わり頃に気がつく。カンヌで、優秀男優賞しか取れなかったことは少し不満である。世界の映画界に一石を投じる映画でもあったし、このような静かだけど訴求力のあるものが、もっと世界で広がらないかと思う。